第38話


 俺たちはガイツのところに来ていた。

「いいのが出来てるぞ!これだ!」

 剣をカウンターに置くガイツ。

「ちょっとデカくないか?」

 使っていたミスリルソードより一回り大きい。

「ん?あぁ、これはアダマンタイトで打った剣の上にミスリルをコーティングしてある。これで魔力の通りも良くなってるぞ?使えないか?」

「いや、使えるが腰に付けるのはやめておこう」

「そうだな。そう思ってちゃんとソードベルトも用意してある!」

 と背中に取り付けるためのソードベルトまで用意してくれていた。


「ガイツさん!私のは出来てます?」

「おう!嬢ちゃんのもちゃんとある!」

 カウンターに出したのは少し大振りのダガーが二つ。

「凄いですね!」

「当たり前だ!アダマンタイト製だからな!」

 紫がかった銀色の刃がヌラリと鈍い光を放つ。よく切れそうだな。


 俺もソードベルトをつけると剣を抜いてみる。

「おぉー」

 リミが少し後退りするが、青みがかった銀色に美しい模様を浮かび上がり、魔力を通してみると薄く光を放つ。

「綺麗…」

「凄いですね」

「ガイツ?この剣の名は?」


「『クラルス』」


「…輝く星か」

「良い名だろ?」

「そうだな」

 俺はクラルスを戻す。

「あぁ、もうちょっと見たかったな!」

「凄い…」

 リミ達も見惚れるほど綺麗な剣だ。

「あぁ、また今度な。ガイツ、最高の剣だ。ありがとう」

 俺は白金貨を5枚カウンターに出す。

「おう!ありがたくもらっておく!」

 ガイツは一枚だけ取ると、

「これでいい。この剣は誰に作ったと思ってんだ?お前以外には売れない剣だ」

「分かった…ありがとう」

 この剣と刀、両方とも十全に使いこなしてガイツへの対価としよう。


「おっと、嬢ちゃんのはキチンともらうぜ?」

「そんなー、酷いなぁ」

 ネイルは笑い、ガイツも笑う。

 金を支払って店を後にする。


「ガイツも凄いけど、そのガイツに認められるのも凄いね」

「いや、まだこの剣を持たされただけだ。これからだ」

 そう、これからはこの剣も使いこなす為に鍛錬しないといけない。

「私もそうですね」

「ネイルはもっと頑張れ」

「あ!酷いですよぉ!」

 アイラが笑ってネイルに言う。

 そう、まだまだ未熟な俺たちだから、もっと強くならないとな。



 次の日は自主練だ。

 早朝から訓練所に行き、この剣を操ってみる。

「ふっ!はっ!はぁっ!!」

 しっかりとした重さのクラルスを振り、身体に馴染ませていく。


「おう!精が出るな!大剣に変更したのか?」

「すまん、使わせてもらってる。あと、大剣じゃないだろ?」

 グラムが来て俺の横に立つと、

「まぁ、小さいな。両手剣には違いないだろ」 

 と言って自分の剣を抜く。

「まぁいい!手合わせだ!真剣だから気を抜くなよ?」

「分かった。よろしく頼む」

 剣を合わせて構える。


「行くぞ!」

 いつもの上段からの振り下ろし、

「『パリィ』」

 弾く、が躱されて水平に大剣が滑ってくるのを後方に飛んで避ける。

「まだまだ!!」

 突きが来るのをエッジで軌道をずらし、そのまま、

「『円月切り』」

“ガィンッ!!”

 とこれも受け止められる。

「くっ!」

「やるじゃないか!ギアを上げるぞ!」

 手合わせと言うより死合いに近い剣を交える。



「っ!はぁ、はぁ、はぁ」

「や、やるなぁ!はぁ、はぁ」

 なんとか喰らいつき軽い傷で済んだ。


「グラム、弱くなったんじゃないか?」

 シザーレが見ていた様だが気付かなかった。

「うるせぇよ、はぁぁ。…ルシエが強くなっているだけだ」

「まぁ、見てても分かったけどね!ルシエは本当に成長してるよ!」

 シザーレが言うので間違いないが、こっちはなんとかついて行ってたのでまだ息が上がっている。

「暇があればいつでも来い!俺も鍛錬になるからな!」

「あ、僕も交ぜてくれよ?」

 グラムもシザーレも楽しそうにそう言う。

「はぁ、クソッ、はぁ、はぁ」

 これはいい鍛錬になるが、悔しいからこの2人を倒すまで続けてやる!


 その日からダンジョンに入ってない日は訓練所に来る様になった。


 そんな日々を続けていると、

「もう!ルシエのバカッ!!」

 リミ達には不評だが、これはしょうがない。

「悪かった…が、続けていくぞ?」

「んもう!分かったけど私達の時間も作ってよね!」

「そこ大事」

「そうですね。お願いします」

「…分かったから機嫌なおせよ」

 まぁ、午後は機嫌をとるしかないな。

 なんとか機嫌を取って宿に帰る。


 しかし、

「なんで俺を誘わないんだよ!!」

 なぜラビオンの機嫌までとらなきゃならないんだ?

「…はぁ」

「はぁ?ルシエ!お前と俺の仲じゃねーかよ!」

「お前はルシエの母親か!!」

 その通りだ!ウリン!

「ガハハ!カァちゃんか?ガハハ!」

「うっ!うっせぇ!ダチが訓練してるんだから俺が行くのがスジだろ!」

 どのスジなんだか…どんな嫉妬だ?


「アンタは次のダンジョンのこと考えて動け!ったく!」

 アビーの言う通り…と言うか俺もだな。

 いや、だが俺は次のダンジョンの事も考えての訓練だからラビオンとは違う!

「ルシエ?ラビオンと違う事はないからね?」

「え?」

「同じよ、同じ!訓練も大事だけど、リーダーなんだからちゃんとしてよね!」

「…分かった」

 リミに言われちゃしょうがない。


「ガハハ!2人ともバカだ!」

「「お前に言われたくない!」」

「ガハハ!ハモるなよ」


 脳筋バカに言われてしまった。


 

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