第31話


 スキルツリーを見る。


 ワルツの義手を作るために費やしたポイントは錬金術を伸ばし、今の俺は歴史の教科書にしか載っていない様なエリクサーに手が届きそうだ。

 作るか?と思うが材料の調達が困難だ。


 それに錬金術師になる予定は今のところない。


 まぁ、錬金術を伸ばした事を後悔はしてないのでいいのだが。


 そして武士も少し伸ばした。

 『刀技』や他のパッシブスキルを取得して、濡烏を十全に使える様にして行くために必要だからだ。


 剣聖はあれから伸ばしていない。

 武器が変わったこともあるが、剣聖より刀を使っていると今の俺に合っている様に思える。なので今は剣聖より武士のスキルツリーを伸ばすのにポイントを使っている。


 ワルツを見てから、ルシェールでは無く、今はルシエなのだから新しい道があると思い始めた。

 

 ただそう思ってスキルツリーを見て決めた。


 これで良いのかはまだ分からないが、自分で決めた事だ。


 後悔はしない。



「敵3来ます!」

「抜刀・飛燕」

 カナブンの様なモンスターが3体とも真っ二つになる。

 手に馴染む様になってきたこの濡烏も良き相棒になっている。


 いまはダンジョンの16階層だ。

 あれから10階層から20階層までを繰り返している。


 俺たち『リベル』は焦らずに成長していく。


「今回も大量だね!」

「そうだな、そろそろ30階層にも挑戦しても良いかもな」

 20階層から出てきた俺たちはギルドに向かう。


「あっ!お帰りなさい」

「ただいま!サーシャさん!」

 受付嬢のサーシャが出迎えてくれる。

「これが20階層までのドロップだ」

「毎回ありがとうございます!『収納持ってる冒険者は少ないのでギルマスも喜んでますよ』」

 サーシャはちゃんと収納なんかの他人に教えたく無い情報の時は小声で喋ってくれる。

 普通のことだがそれができない受付嬢を見てきたからな。


「お、『リベル』の4人じゃないか」

「ギルマス、お疲れ様」

 ポートと言うギルドマスターはハイエルフだ。リミと一緒で擬態のイヤーカフでヒューマンに化けている。

「ラビオンがまだ帰って来てないのかと心配していたぞ?」

「は?まだダンジョンに潜って4日しか経ってないぞ」

「まぁ、それだけ心配なのだろうな」

「分かった」

 過保護かよ?


 宿屋に戻ると、

「ラビオンはいるか?」

「おう!遅かったじゃねーか!」

 カウンターにはラビオンがいて、昼間っから飲んでいた。

「遅くないだろ?どちらかと言うと早い方だぞ?」

「ん?そうか?お前ならもっと早く帰って来れるだろ?」

「そんな俺だけじゃないだろ?パーティーで動いてるんだ」

 ペースの調整もリーダーの仕事だからな。

「まぁ、いいや!飲もうぜ!」

「はぁ、まったく。女将さん!エールを」

「あいよ!」

 ラビオンは『ストロミー』のリーダーだ。大剣使いでおちゃらけているが漢気があって人気もある。メンバーは魔法使いのアビー、斥候のウリンに片腕が義手で盾士のワルツ。


「ラビオン達はダンジョンにはいかなかったのか?」

「行ったぞ?30階層から40階層までな」

「にしては早くないか?」

「年季が違うからな!さっさとやって来たさ」

 さすがBランクにもなると違うなぁ。

「ワルツが凄い活躍でな…」

 と話しは盛り上がる。


 その内、『ストロミー』のメンバーも集まってきて宴会に変わる。

「ガハハ、いつから保護者になったんだ?」

「うっるせーな!こいつが戻ってこないと酒が美味くねーんだよ!」

 ワルツにラビオンは俺の保護者問題を話している。

 俺は別に保護者はいらん!と言うか実年齢は18でもお前らより人生経験はあるぞ!

「ほらほら、酒の飲み過ぎだよ!」

 女将には逆らえないラビオン達もようやく落ち着いてきたのでお開きだ。


「じゃーなー!」

「ガハハハハハ」

 と自分らの部屋に戻るラビオン達と別れて俺たちも自分の部屋に戻る。


「っあー、疲れた…」

 ベッドに横になればすぐにでも眠れそうだ。


「あー!もう寝ようとしてる!」

「ん?あ、鍵忘れてたな」

 リミ達が入ってくると途端に狭くなる。なんせ1人部屋だししょうがないか。


「で?なんだ?」

「えーっとですね…そのぉ」

 ん?言いにくいことか?

「3人で愛されに来た」

「ゴホッ!ゴホッゴホ!」

「ほらアイラは直球すぎるよ!もっと遠回しにエロく言わないと!」

「ごめん」

 と言うかこの部屋で?三人も?

「きょ、今日は断る!」

「ほらねぇ」

「リミ、ほらねじゃない。この部屋は狭すぎるだろ!」

「あぁ、じゃあ私達の部屋で!」

 と手を引っ張っていこうとするので、

「待て!…はぁ、また今度な?」

「えー!せっかく来たのに」

「ごめん」

「そ、それはそうですよね?私もそう思います」

 リミが提案してアイラが乗って、ネイルが無理矢理連れて来られたな?


「またそう言う時が来るのはわかるが、1人ずつだ!俺はまだ慣れてない!」

 そう、俺は童貞卒業からまだ数回しか…それなのに複数とか無理だろ!


「わかったよ、んじゃまた明日ね?」

「リベンジ!」

「え、え?え!?また明日?」

「違うだろ?明日は1人だけきてくれよ?」

「了解!んじゃ帰ってじゃんけんね?」

「負けない」

「ふぅ、また明日もかと思いましたよ。もうみんなでってことはもっと…」

 三人はあれやこれと言いながら部屋から出て行った。



「ふぅ、なんとかなったな。…酔いも覚めてしまった」

 それにしてもあのままなし崩し的に…いや、考えるのはやめておこう。


 いや、覚悟だけはしておこう。


 俺は鍵をかけ、ベッドに横になる。

「はぁ、俺には勿体無いなぁ…なんてな」


 リミは情熱的で、少し抜けていて。

 アイラは直球で愛を語る。

 ネイルは丁寧で奥ゆかしい。


 三人ともとても魅力的で可愛いのだ。

 

 俺もリーダーとして、パートナーとして、三人を守れる様にならないとな。

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