第29話
こちらの世界の契約書はそれなりの効力があり、これは命のやり取りを誓う契約書だ。
一番効力の高い物になるな。
「なぜだ?」
「死体で帰ってきた者は全員がAもしくはBランクの冒険者で、ダンジョンの50階層以降に潜っていった者達だ」
だからポイントがあんなに大量だったのか。
「私はギルマスとしてどうしても皆んなの最後を知っておかねばならない!何故5階層なんかにボス部屋があり、揃ってグラトニースライムに捕食されてしまったのかを聞きたい」
俺は契約書を破くと、とりあえず話す事にした。
「これから話すことは貴方を信じて話す」
「分かった、他言はしない」
自分のスキルの事、グラトニースライムは取り込んだ生物の力で強くなる事など、出来るだけ教えるとポートは黙り込んでしまった。
「…ルシエ、君のスキルはスキルツリーと言ったが外れスキルだぞ?本当にそんなことができるのか?」
「俺は収納を持っているのは知ってるな?後、鑑定も持っている。そして剣技、錬金術も使える」
「…では、俺を鑑定してみてくれ」
俺はポートを鑑定する。
「本当の名前は伏せておくよ。貴方はハイエルフだ。歳は1279歳」
リミやアイラ達、言われたポートもビックリしていた。
「分かった…本当にスキルツリーと言う外れスキルを使いこなしているのだな」
「俺は外れスキルなんて思ってないがな」
俺にはチートにしか思えない。
「そうだな、素晴らしいスキルだな」
ようやく分かってくれた様だ。
「他人のポイント?を取れるみたいだが生きてる人間からもか?」
「そこは想像に任せるよ」
「分かった、それでグラトニースライムを倒せたんだな。そしてそんなスキルを持たないアイツらは捕食されるしかなかったのか…転移罠が50階層以降にあるはずだな。さっそく調査してみよう」
と立ち上がると、
「ルシエ、君を評価している。絶対に裏切らないでくれ」
とても真剣な目つきだ。
「あぁ、善処する」
「ハハッ!ここで裏切らないと答えたらそいつは嘘つきだからな!安心したよ」
と言って部屋を出て行った。
下に降りるとサーシャに10階層までのドロップを売り、ギルドを後にする。
「喋ってよかったの?後悔してない?」
リミが心配そうに聞いてくる。
「別に言われても困らないかな?証明のしようがないからね」
「んー。そっか。ならいいや!」
「私も聞いちゃいましたけど?大丈夫です?」
「えー、昨日あんなに愛されたのに?」
「ゴホッゲホッ!!」
いきなりそんなこと言うなよな!
「ほら!リミがそんなこと言うからですよ!」
「リミはデリカシーがない」
ネイルとアイラに背中をさすられながらリミを見ると涙目だ。
「よしよし、でも人前ではそんなこと言うなよ?」
「…うん」
と一区切りついたとこで、前に見覚えのある背中を見つけた。
「おーい、ラビオン!」
ラビオン達の背中だ。
「ん…おぅ」
振り向いたラビオンは酷い怪我だった。
「アイラ!」
「ん、ヒール!」
ラビオンは倒れかかったがなんとか俺が抱き止める。
ラビオンだけじゃなくアビーやウリンも傷だらけだ。ワルツに関しては片腕になっていた。
「ヒール!ヒール!」
「わっ!わっ!早く!これ!」
アイラは回復魔法をしてネイルは慌てながらポーションをワルツに飲ませている。
4人を宿に連れて行き、寝かせてやる。
「いったいどこまで潜ったんだ?」
「危ない事はしないと思ってたのに…」
リミが言う通りだ。
ラビオン達はちゃんと計画通りに動くはず…まさか罠にかかったとか?
「…ウッ…こ、ここは?」
「宿屋だ。ラビオン?俺がわかるか?」
ラビオンはヘラっと笑い。
「あぁ、俺のキーマンだろ?…みんなは無事か?」
「命はある」
「そうか…なら良かった」
それからラビオンに続いてアビーやウリンも起きた。ワルツが一番酷いからまだ起きてない。
「俺たちは多分、蠍の化け物にやられた…あいつは人の形の様だったが、化け物だ。喋るモンスターだったよ」
人の形?喋るモンスター?聞いたことがないな。
「そうね、確かに最初は人だと思ったもの。…52階層よ。『暴食』が死んだとか言ってたわ」
「ゴミ箱がどうとか言ってたな…ワルツが盾になってなんとか転移罠を踏めたから助かった見たいだけど」
『暴食』に『ゴミ箱』、転移罠か…馬鹿じゃなくても分かるな。
「そうか、転移したのは5階層だろ?」
「そうよ?なんでわかったの?」
俺たちはグラトニースライムの事を喋る。
「そうか、アイツはそこに人間を送ってたのか」
「多分な…犠牲者は多い」
「お前たちが倒してくれてたから助かったみたいだな」
力無く笑うラビオンはワルツの方を見ていた。
3人は自分達だけにしてくれと言ったので俺たちは部屋から出て下の酒場に行く。
「ラビオン達は大丈夫だったかい?」
「あぁ、なんとかね」
「そうかい!命があって良かったよ!」
と宿屋の女将が言うと奥の旦那さんに報告しに行った。
俺たちはまだ弱い…だから強くならないとな。
「私達にもできる事あるかな?」
「私達にしか出来ない」
「そうです!もっと強くなりましょうよ!」
「だな、目標が出来たな」
まだ起きてないワルツの腕は錬金術で義手を作ればいい。
こちらにはない技術でも地球にはあったし、錬金術を使えばそれ以上のものが出来上がる。
『暴食』『七体』で想像がつくのは『大罪』だ。
残り六体だが、蠍ってなんだ?
『色欲』『傲慢』『怠惰』『強欲』『嫉妬』『憤怒』。
俺の知識で知ってるのはこれだけだな。
地球の俺がもうちょっと厨二であればよかったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます