第19話
秋のようなこの気候はとても過ごしやすくて絶好のダンジョン日和だな。
ようやくこの街ブランドーのダンジョンの前にやって来れた。
ダンジョンに入る為にはこの長蛇の列を進んでいくしかないようだ。
ダンジョンに入る冒険者を狙って出店が並んでいる。
「らっしゃい!この地図で10階層まで楽々いけるよ!」
「こっちに水があるよ!ダンジョンに入るなら買った買った!!」
と誰もが呼び込みをしている。
「準備しといて良かったね!」
「そうだな、それに10階層の地図なんてギルドにあったしな」
「知らない人は買う」
「危ないですね!」
俺たちはラビオン達に聞いて知っているから良かったが、何人かは出店で買っている。
遠くからでもわかるダンジョンの入り口はピラミッドの様だな。
「ルシエの収納があればこそだね!」
「まぁ、大量に買ったからすぐに撤退にならない様にしたいな」
その為に訓練も受け、経験を積んできたんだしな。
「大丈夫!」
「そうですよ!斥候の私がいますから!」
ネイルもアイラも気合いが入っているな!
「分かったよ」
と返事をしておく、この気合いの入ったままダンジョン攻略をしたいからな!
ダンジョンの入り口に立つ。
「よし、いくぞ!」
「「「はい」」」
一歩踏み出し、黒いモヤの中に入っていく。
ひんやりしている様で外より若干涼しいようだ。
このダンジョンは石造りで、迷路の様に入り組んでいる。
入り口で止まっているのもまずいので、先に進む。地図は持っているし、1階層の進み方は頭に入れてあるので迷わない。
下の階に行くにつれてダンジョンは広がって行く。
10階層までは罠はない。
なので斥候のネイルの出番はまだ後になるが、今のうちから先頭を任せる。
「敵、ブルースライム3」
「任せて『ファイアーボール』」
アイラが魔法で瞬殺する。
この調子でどんどん進んでいき、9階層へと足を踏み入れる。
「敵、スケルトン5」
「おらっ!」
「ファイアボール!」
「せあっ!」
この辺はまだ楽勝だ。
ダンジョンのモンスターは倒すとドロップを残して消える。そのドロップを売って、この迷宮街の冒険者は稼いでいるわけだ。
まぁ、10階層ならたかが知れてるが、拾って収納していく。
ここらで腹が減っていることに気が付き食事にする。時間の感覚が緊張でわからなくなっているな。
道から少し離れ、そこで収納から出した肉串とパン、水を飲み腹を満たす。
ここで少し休憩にする。交代で見張りながらの休憩だ。
「ふぅ、さすがに疲れるわね?」
「まだ慣れてないから緊張してるんだよ」
「それはしょうがない」
「ですね、でもこの緊張感はだいぶ疲れますね」
このままだといつかミスをしてしまうので今日は10階層のボスを倒したら、転移陣で外に出ることにする。
十分に休憩を取った後、10階層へと足を踏み入れる。
すると大扉があり、中に入るとボスとの戦いになる。
10階層はゴブリンウォーリアが5体のはずだ。
「よし行こう!」
「「「はい」」」
扉を開き中に入ると勝手に扉は閉まる。
これは注意しておかないと分断されるな。
「ゴブリンウォーリア5!」
「よし!『来て、シルフ!』」
『ジャジャーン!行くよリミ!』
と精霊召喚をするリミ、シルフはウインドカッターを繰り出す。初めて見た時よりも威力が高い様だ。
『へっへーん!どんなもんだい!』
シルフの魔法で3体を撃破していたが、俺とネイルで1体づつ倒している。
まぁゴブリンウォーリアは楽勝だったな。
「ありがとうシルフ」
『お安いご用だ!』
と言ってシルフは風になって消える。
「少し過剰だけど、威力が上がってたな?」
「私だって成長してるんだから!」
と胸を張るリミ。
「あ、宝箱出てますよ?」
「ネイル、罠はあるか?」
ネイルが確認すると、
「ありませんね、開けます」
「おう」
ネイルが開けるとそこには指輪が入っていた。
「なんの指輪でしょうね?」
鑑定してみると『素早さの指輪+3』と出たので、
「それはネイルが着けてくれ」
「え?」
「素早さの指輪だ。俊敏に動ける様になるだろうな」
「な、なんでわかるんですか?」
「あぁ、俺は鑑定を持ってるからな」
さすがに鑑定前の物を身につけろとは言わない。
「わ、わかりました!じゃあ」
指輪を着けるネイル。
「んー?若干身体が軽い様な?」
「まぁ、そんなもんだろ?」
「そうですね!そんな劇的に変化したら私ついていけませんよ」
ゲームなんかでは劇的だが、本来ならこんなもんだろ。
「ぶー、ネイルはいいなぁ」
「ん?斥候だからいいかと思ったんだが?」
「それはわかる。ただ初めての宝だったからね。もう大丈夫!わがまま言ってごめんね」
リミやアイラも分かってるようだ。
「まぁ、宝の振り分けは平等にしていくつもりだからさ」
「うん!よろしくね」
「分かってる」
「はい!今回はありがとうございます」
そして転移陣に登録するには、転移陣の中の水晶に触れると手の甲に紋章や数字の様な模様が浮かび上がり消える。
もう一度触れると模様が浮かび上がり、少しの浮遊感の後、外に出ることができた。
ここは入り口から横に入った少し広い場所だった。転移陣に乗ってるメンバーが一緒に転移できる様だ。
「ここに出るのか、これなら分かりやすくていいな」
「そうね!この水晶にまた触れればいいんでしょ?」
「上書きしていくから気をつけないと」
アイラの言う通り、登録は上書きなのでちゃんと考えないといけないな。安易に登録すれば詰んでしまってまた1からになってしまうからな。
まぁ一人が登録すれば転移陣の中の人間はついて行くので四人いるから4回登録ができるな!
外に出るとすっかり夜になっていた。
「しまったな、帰りの時間も考えないとな」
「そうね、宿なら開いてるから帰りましょ!」
「時計が必要」
「だな、少し高いが買っとこう」
あまり正確じゃないのだが、ある程度時間が分かればそれでいい。
俺たちは初ダンジョンを終えて宿に戻った。
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