第5話


「じゃあこの馬と馬車で、メンテナンスと改良はしっかり頼むな!」

「へい!毎度あり!」

 俺たちは馬車で移動する事にしたので茶色の人懐っこい馬を選び、荷馬車を少し改造してもらう。


「私もお金出すよ?」

「いや、大丈夫だ。それより他にいるものはあるか?」

 旅なんてした事ないからな。

「水袋は買った?あとは馬車だし馬の餌なんかも必要ね」

「そうか、買ってないな」

「もう!旅は準備が命よ!買いに行くわよ!」

 またリミに手を引かれて買い物に行く。


「えっ!それ本当?!」

「あぁ、だから量は気にせず多めに買っていこう」

 俺は収納があることをリミに話すと相当驚いたらしく口を開けている。


「な、なら!私の荷物も預けていい?」

「ん?あぁ、いいぞ」

「あ、でも中身ってわかる感じ?」

「いや、バッグに入れてあればバッグとしかわからないが?」

 リミはホッとしたようで俺に荷物を預けるからと言って次の買い物に出かける。

 俺の手を引っ張って。


 次々と買い物して行くリミの後について周り、収納して行く。


 収納に限界はないようだな。


「よし!これだけあれば旅には十分でしょ!」

「そうだな、勉強になったよ」

「あとは王都でしか買えないものを買って終わりね」

 王都でしか買えない?何かあったか?


 着いて行くと服屋だった。

「服なんてどこでも」

「王都が一番品数が多いでしょ?だから買い溜めしとかないと!」

 俺は服には無頓着だからな…


「ほら、ルシエも買うわよ!さっきだってあんなに儲けたんだから!」

「あ、あぁ」

 やはり女の子は服やアクセが好きなようで結局1日潰れたな。


 宿屋は別だったので荷物を持ってくると言ってリミが宿に荷物を取りに行く。


 まぁ、別れて正解だったな。


「テメェよくもやってくれたな!」

「は?お前らが誰かわからんのだが?」

 まぁ、さっきギルドで痛めつけた奴らだろうがな。

「クソッ!お前のせいで金がなくなったんだ!」

「タダで帰れると思うなよ!」


 どいつもこいつも群れなきゃ何もできないのか?

「やれやれ、今度はタダじゃ済まないぞ?」

「う、うるせぇ!やっちまえ!」


 剣を抜くと体が覚えているのか、勝手に動くし、こいつらの剣が遅いこと。

「グアッ!」

「アグッ!」

 できるだけ怪我のないように動くが、まぁ、こいつらもタダで帰れるとは思ってないだろう。


 しかし剣聖の技を使う程でもないな。

 

「まだやるのか?」

「く、や、やめてください」

 まぁ、刃物で斬られればそりゃそうなるよな。

「大人しく帰れ」

「ぐ、くそ!」

 男達は庇い合いながら帰っていった。


「はぁ、日本なら捕まるとこだな」

「ん?どこなら?」

「おわっ!」

 知らないうちに後ろにリミが立っていた。

「やっぱり強いねぇ」

「はぁ、いつから見てたんだ?」

「俺のリミに手を出すな!から」

「そんな事はいっていない」

 舌を出して戯けているリミだが、リミがいなくて良かったな。


「あはは、ついさっきだよ。で?どこだと捕まるの?」

「ん?門兵の前ならな」

「なーんだ」

 日本なんてこの世界にはないし、言う必要もない。


「んじゃ宿に行こう!」

「そうだな」

 二人で宿に行きリミは部屋を取る。

 俺は最初から2泊の予定だしな。


「カンパーイ」

「いや、昼間にそれはやっただろ?」

「そんなの関係ないよ!」

 宿の食堂は賑わっている。

 エールで乾杯し、出てきた食い物を食べながら行く場所を決める。

「で?どこ行くか決めた?」

「王都から南に下って迷宮街に行こうと思うのだが」

「迷宮街かぁ、いいね!」

 

 色々とルシェールが勉強したことが頭の中にあるので地図なんかも記憶している。


「迷宮街といえばやっぱりダンジョン産のお宝目当て?」

「いや、俺らのレベルアップが目的だ」

「レベルアップ?」

 レベルと言う概念がないから、

「いや、経験を積むと言う話だ」

「あー!そう言うことね!でもお宝も気になるよね!」

「まぁな」

 ダンジョン産の宝は不思議なもので、俺の持ってる財布もダンジョン産の物だ。


 飯を食い終わり自室に帰っていく。


“コンコン”

「開いてるぞ?」

「えへへ、なかなか寝付けなくてさ」

 とリミが入ってくる。

「まぁ、初めての旅の前だし、気持ちはわかるがな」

「でしょ?んで、色々話に来たの!」

「ん?なにを?」

「んー、ルシエって良いとこの坊ちゃん?」

 あまり隠すのも良くないか…

「まぁ、そんなとこだった。今は普通のルシエだ」


「へぇ、隠すと思ってたよ。喋ってくれてありがとう」

「もう関係ない話だしな」

「そっか、私は…んー…」

「言いたくなかったら言わなくていいぞ?」

 誰にでも秘密はあるからな。


「ん!私ってエルフなの!」

「は?耳は?」

 リミはイヤーカフを外し、俺に耳を見せてくる。

「こ、これで分かった?」

「へぇ、だから精霊使いなのか」

「まぁね、あと弓も使えるから後衛は任せて!」

 イヤーカフを着けるとまた普通の耳に戻った

「そっか、言ってくれてありがとうな」

「はぁ、緊張した…」

 胸を抑えるリミは立ち上がると、

「パーティー組んでくれてありがとう!じゃーおやすみ!」

「ん、あぁ、おやすみ」


 エルフは数が少ない種族だ。

 子孫を残せる確率が低いらしいが、その分長寿だ。


 そして違法に奴隷にされるのも多い。

 普通は森に集落を作りそこでひっそりと暮らしてるイメージだが、リミは外に出たんだな。


 秘密を打ち明けてくれたんだ。俺もそれに応えられるように頑張らないとな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る