阿吽の呼吸

@hanakayuta

第1話

 母に贈り物をした。いつも頭の片隅には残り続けていたが遂に決心して送ってみた。直接渡すのは恥ずかしかったのでテーブルの上に置いておいた。分かりやすいように手紙を付けておいたが読んでくれるかどうか分からない。プレゼントがなくなっていた。そこには置き手紙があり、ありがとうとだけ書かれていた。置き手紙をそのままにして家を出た。用事を済ませて家に帰ってくるとリビングの扉の向こうに人影が見える。声をかけるかどうか迷ったがそのまま自室に入った。なんとなく天井を見ていると突然笑えてきた。いつまで経っても笑いが収まらずに怖くなって階段を降りてリビングに飛び込んだ。誰もいない。ただ換気扇だけが暗い部屋の中で騒々しく動き続けている。テーブルの上に手紙が置いてあった。見上げるな、その手紙の言葉を見下ろしながら浅い呼吸の中でいつのまにか笑いは止まっていた。

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