第7話 体の損傷により、スキル『再生』を発動しますっ
«体の損傷により、スキル『再生』を発動します»
そんな通知が衝撃と共に出てきた。僕は背中に痛みを感じながら『突風』でその場から少し離れる。見ると、最初の頃に出会った魔物のクマが僕を睨みつけていた。
『威圧耐性』があるに関わらず僕の中にそのクマはトラウマとして残っていた。
低いうめき声で僕を睨んでいる。僕はすぐに逃げた。
「は、はやくっ」
『突風』で逃げている僕はあの時のキツネを思い出す。あの時は怖くて動けなかったが今は動ける。油断するな。周りをよく見ろ。冷静になれ。
ふと思った。僕は強い。魔力もあって『怪力』や『脚力』もある。今逃げたらあのクマを食べられなくなる。僕はすぐさま元の場所に戻った。
しかし、そこにはクマの存在はなく同じ大きさくらいの狼がクマをガツガツと食べていた。
血の匂いが。魔力の溢れる匂いが。僕を誘惑する。美味そう。ご馳走だ。よこせ。僕によこせ。そして、お前も喰わせろ。
僕は食事に夢中になっている狼に喰らいつく。
そうだよね。食事中は周りが見えなくなるよね。わかるよ。だって美味しいもんね。美味しいんだろ?それ美味しいだろ?お前も美味そう。食べたい。食べたい。食べたい。食べたい。喰べたい。喰べたい。喰べたい。喰べたい。
─────喰わせろ。
気づけば狼もクマの食べかけも僕は貪り続けていた。
毛皮なんてブチりと食いちぎって頭なんてそのままでゴリッ。
中には立派な脳みそ♡びちゃびちゃと血液が僕の口の中に入りきらず零れる♡僕は目をハートにしてそれを啜る♡うまい♡うまい♡おいしい♡おいしい♡美味美味美味美味美味美味♡
幸せだ。この狼多分今までの魔物より随分と強いのだろう。だからこんなに美味しい。最後の一口まで残さず食べる。
「───っ♡───♡」
食事の後の余韻に浸る。快感が弱い電気のようにビビりと体中を襲う。その都度僕はビクッビクッとなる。座り込んでその場から動かずただただ快楽に溺れていく。
「────────────────────────────────────っ!」
今までにない大きな断末魔が聞こえた。僕はまだ正気に戻れずのんびりと空を見上げる。すると、そこには蒼色に輝くドラゴンがいた。ドラゴンがゆっくり口を開き僕に向けて蒼いブレスを放つ。
「へ?………………………………………………………………………………あっぶなっ!」
僕は途中で無理矢理覚醒されそのブレスから逃げた。
なんだ!?こんな大きいドラゴンいたか!?こんなのいたら誰でも気づくぞ!?もしかしてさっき動物や魔物が逃げてたのってこのドラゴン!?
『突風』で危機一髪。だが、目の前のドラゴンは僕を確実に攻撃しようとしてくる。僕何かしたか!?
食事の邪魔をされ僕は少し苛立っていた。
「だったらお前も喰ってやるっ!」
僕は10%の『脚力』で攻撃し様子を見た。ドラゴンがまた叫ぶ。鼓膜が破けそうだ。それなりにダメージを受けているようだが。傷ひとつない。なら風刃で攻撃してみた。弾かれる。
「マジか。手強いな」
すると、ドラゴンの腕が僕に襲いかかる。咄嗟に避けるが風圧でよろける。
「くそっ」
僕はすぐに『突風』で空に逃げた。ドラゴンは僕を捕まえきれなかったせいで勢い余って倒れている。しかし、僕から目を離さずブレスをまた撃ってきた。
あの体制から撃ってくるのかよ!僕はすぐに避ける。なれない動きから少し酔いはじめた。口に手を当てて体制を整えるとバサァッと大きな音がした。見るとドラゴンが大きな翼を広げていた。
やっぱ飛ぶのか!!
「────っ!」
ドラゴンは雄叫びをあげ、その立派な翼がはばたく。
僕は複数の風刃を作りあげドラゴンに撃つ。すると、同じところを寝たったおかげか綺麗にパックリと切れた。そこから充満する匂い。一瞬にして僕の周りに甘い香りが漂う。今までに嗅いだことのない強烈な香り。僕は口からこれでもかと言うほどヨダレをドバドバとたらした。酔いそうなほどの甘い誘惑。風刃の痛みで声をあげるドラゴンを気にせず僕は傷口から見える血肉を見つめた。今の狼と比べ物にならない味を知ることが出来る。腹を満たせる。
食べたい。喰らいたい。早く。早く。はやく。タベタイ。
理性がプツンッと切れた音がした。
慌ただしく白銀の少女は蒼龍が向かった場所へ急いだ。魔族が産まれこの森の魔物がいっそう活発化した。魔族として産まれた蒼龍は立派な鱗、翼、爪、魔力を持っていて誰にも太刀打ちできない程強大な力を持っている。魔族としては知能が低く未完成だが人間を滅ぼすにはちょうどいい。そう考えた魔族たちは実験途中の魔族の卵を火風水土の精霊が守護する森に置いた。その卵のせいで動物たちは活性化し魔物化。4つの森を守護する精霊は困った。そこで数の多い人間の冒険者や勇者たちが続々と魔物の倒していった。しかし、卵には誰も近寄れず近寄るだけで生態はバタバタと倒れていった。呪いか魔法か。精霊にもわからなかった。仕方なく何重にも結界や封印を繰り返し魔物の活性化を弱めたけれど魔物は減らない。以前よりスピードは下がったが。魔物は出てきた。それを冒険者や勇者、魔道士などが少しずつ倒していった。だが、一向に数は減らない。そんな状態で、ある森に大きなイレギュラーの存在が現れた。それは続々と魔物達を喰らい魔力を蓄えていった。しかもそれが存在するだけで魔物たちの魔力は消えていく。それにいち早く気づいたのが魔族だった。魔族たちは焦り異常事態に計画より早く卵を孵らせることを考えた。まだしっかりと成長していない卵を遠隔操作で結界、封印を解き、なおかつ魔物で直接イレギュラーを襲わせる。そして、やっと卵が孵った。それが蒼龍。まだ未熟とは言え力は大きく簡単に結界や封印を壊した。精霊はイレギュラーの存在に気づいていたが遠隔操作で行われた蒼龍の存在は気づくのが遅かった。そして、精霊にとってまだおかしな事が起こる。まず最初に森を守護している精霊に襲いかかると覚悟していた。しかし、思惑とは反対にイレギュラーの存在に蒼龍は危機感を覚え早急に抹殺することを選んだ。精霊は急いで蒼龍の所へ向かった。
4つの森は世界ウィリアム国を中立に保つ役割を持っている。それぞれ火、風、水、土の属性を持っており精霊もその4つの属性によって森を守護していた。その反対に魔界は狭くジメジメしており魔族の数が増えたことで人間たちがいる世界を自分の物にするために卵を置いた。嫌がらせのようにそれぞれに属性にあった卵を。それが成功し最初に卵を置いた〖火の森〗は火龍の魔族に奪われた。〖火の森〗を奪われたことによってバランスが崩れ以前より魔物が活性化。しかし、何とかバランスを整え人間たちや動物は生き延びた。
その状態が数年続き、今〖水の森〗で蒼龍が暴れ出すことで〖水の森〗の精霊は慌てた。この森はほかより広大なため人間の街に被害はすぐには回らないが放っておいたら大変だ。それにイレギュラーの存在も保護して起きたい。魔族が慌てて排除しようとした事で魔族側ではないのだろうがあの存在は危険だ。危険だとしてもこの世界を救うチャンス。〖水の森〗の精霊はそう考えた。
しかし、精霊が辿り着いた時は既に蒼龍もイレギュラーな存在もいなかった。
目が覚める。僕は木に背を預けている状態だった。目の前には体の半分近く損傷して倒れているドラゴンが倒れていた。僕は気づく。気を失っている間どうやらドラゴンを倒したようだ。あの硬い鱗をどうやって砕いたかわからないがこれであのドラゴンを喰えると喜び体が震えた。早く。早く。早く。はやくはやくはやくはやく。
起き上がろうとするとガクンッと体がズレ落ちた。
「え」
体の右半分の感覚がない。
«体の損傷により、スキル『再生』を発動します»
そんなステータス通知が無機質に僕の目の前に現れる。
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