ときには息抜きも必要でしょ
エランノールはセリニア国の北部に位置する、美しい都市である。
面積こそ決して大きくはないが、その豊かな自然と繁栄した街並みが魅力的な都市だ。
エランノールの市街地は、緑豊かな森と透き通る川が交錯し、四季折々の美しい風景を楽しむことができる。
この都市の中心には、白い石畳の道と花々が咲き誇る噴水広場が特徴的だ。
その周辺には、賑やかな市場が立ち並び、昼夜を問わず活気に溢れている。
エランノールの住民たちは親しみやすく、訪れる旅人たちを温かく迎え入れる。
職人たちはその技術を誇りに思い、工芸品や美術品は他の都市からも高く評価されている。
かつてエランノールは、恐ろしいドラゴンの襲撃を受けたことがある。
その時、都市は大きな被害を受け、多くの人々が犠牲になった。
勇敢な兵団もドラゴンに立ち向かったが、あえなく敗北を喫した。
しかし、一人の男が現れ、単独でドラゴンを討伐した。
この英雄的な行為により、その男は後に兵士長に任命され、都市の守護者となった。この出来事は今でも語り継がれ、都市の団結力と不屈の精神を象徴するものとなっている。
都市の統治者は公正で知恵ある人物であり、その指導の下、エランノールは長きにわたり平和を保っている。
統治者を補佐するのが、優れた兵士団と忠誠心に満ちた家臣たちである。
彼らの守護により、市民は安全で安心な生活を送っている。
エランノールの夜空には、星々が瞬き、月の光が都市を優しく包む。
特に収穫祭の夜には、街中が幻想的な灯りで照らされ、踊りや音楽が絶え間なく続く。
人々の笑顔と喜びが、エランノールの繁栄を象徴している。
小さくとも栄え、平和と美しさに満ちた都市、エランノール。
訪れる者すべてに、忘れられない思い出を与える場所である。
そんなエランノール兵士団の根城であるコンフィ城では盛大に酒盛りが行われていた。
「宴じゃああああ!!」
一際大きな声を上げ、エールジョッキを天に掲げているのは、
兵士長に仕える双子メイドの働かない方。シーナだ。
それにつられ豪快に酒を飲み干し、兵士たちの陽気な笑い声と歓声が城内に響き渡る。
木製のテーブルには、焼きたての肉や新鮮なパンが山積みにされ、甘く香ばしい匂いが漂っていた。
酒樽は次々に空になり、兵士たちの顔は紅潮し、目は輝きを増していた。
彼らは互いに肩を組み、古い歌を歌い始めた。
その歌声は力強く、兵士たちの絆を感じさせるものであった。
「いいぞいいぞぉー!」
歌のリズムに合わせるように首を左右に揺らすシーナ。
「おい、お前たち!」
その時、ふと周囲の喧騒が一瞬の静寂に包まれた。
誰かが声の主の方を指差し、口元に微笑を浮かべた。「兵士長だ!」と囁く声が広がる。
長身で堂々たる姿の兵士長が現れた。
彼は甲冑をまとい、その鋭い眼光はまるで戦場にいるかのように鋭く輝いていた。
彼の姿は、まさに英雄そのものであり、彼がかつてドラゴンを単独で討伐したという伝説が一瞬にして思い起こされる。
兵士長アダムはゆっくりと歩を進めた。
彼の足元の石畳が静かに鳴るたびに、兵士たちの視線が彼に集中する。
宴の喧騒は一時的に止まり、皆が彼の一挙手一投足に注目していた。
「楽しんでいるようだな」と、アダムは穏やかに言った。
その声は低く、落ち着いており、彼の存在感を一層際立たせた。
兵士たちは一斉に敬礼し、再びジョッキを掲げた。
「乾杯、兵長!」と、一人が叫ぶと、全員が続いた。
彼の前に差し出されたエールジョッキを受け取り、アダムは微笑んでそれを掲げた。彼の微笑みは厳しさの中にも温かさを感じさせ、兵士たちの士気をさらに高め、宴は再び活気を取り戻した。
「アダム様ぁ、隣空いてますよー」
完全に出来上がっているシーナは甘えた声で主であるアダムを隣の席に座るよう手招きしている。
「またお前が始めたんだろ」
呆れながらもシーナの隣に腰掛けるアダム。
「違いますよぉ。みんなが飲みたそうにしてるから、我慢する事ないんじゃない?って言ったらみんな飲み始めちゃってぇ。」
「お前が唆してるじゃないか...」
ご機嫌そうに微笑みながら酒を飲むシーナの顔を見てアダムはそれ以上咎める事をやめた。
「まぁ、兵団の団結力はお前のお陰で築いてきたところもあるからな。感謝してるよ」
満更でもない表情を浮かべるシーナ
「えへへーもっと褒めてくれてもいいんですよ?」
アダムは間髪入れずに言い放つ
「だからといって、仕事をしなくていいとは言ってないからな?」
その言葉シーナの「ぐぬぬ」と苦笑いする表情は、
まるで子猫が自分のしっぽを追いかけているような無邪気さを感じさせた。
「ニーナばかり負担がかかっている。役割分担は決めただろ?最低限の仕事はするんだ」
アダムはまるで子供を諭すように冷静で優しい口調だった。
「むぅー。ときには息抜きも必要ですよぉ。ニーナが真面目過ぎるんです...」
シーナはグラスを両手でしっかりと握りしめ、酒で赤らんだ頬を膨らましていた。
「息抜きしかしてないだろ...」
呆れた口調で主として苦言を呈し、酒を一口含んだ。
「でもぉ、私の役割はこっちですよ...?」
そう言いながら彼女の手はアダムの太ももを擦り、ゆっくりと鼠径部を通過して股間に到達した。
股間のあたりは甲冑の面積が薄く、下に着用している黒装束の部分に手を伸ばすシーナ。
「シーナ、酔いすぎだ」
アダムは心の中で興奮を抑えきれないものの、表情にはそれを一切見せずにいた。
「二人きりの時はあんなに盛るクセにぃ。みんながいるからってかっこつけないでくださいよぉ」
シーナはとろけた目と声色でアダムの耳元で囁いたあとに、軽くアダムの耳を舌で舐めた。
アダムは悶え、理性は限界を迎えた。
シーナの腕を掴み自室へ連れて行こうとした。
その時、城門を警備していた兵士が足早にやってきた。
礼儀正しく敬礼し、「ミケ様が戻られました!」と声を張り上げた。
アダムはシーナを掴んでいたいた腕を離し、姿勢を正し頷く。
「んー!もう濡れてるのに...」
唇を少し尖らせ、肩を小さく落とし、小さなため息を漏らしながら、しょんぼりとした表情を浮かべた。
すると、少し間を置いて足音が近づき、ミケが姿を現す。
「戻りましたにゃ」
その姿勢には緊張感が漂い、表情には何か重要な報告がある事がうかがえた。
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