マッカーサー
丸膝玲吾
第1話
マッカーサーが日本を植民地化していれば英語を喋れたかもしれない。そう思うとなぜ植民地化してくれなかったのだと怒りが湧いてくる。植民地化してくれれば今頃私はバイリンガルであり第三の言語として韓国語だとか中国語に着手できていただろうに。
近所の大江さんは「そりゃないよ純ちゃん」という。
「植民地化されていたらもっと大変なことが起きてたと思うよ」
私がどんなこと?と聞くと
「いろんなことだよ」
と言ってはぐらかす。前々から思っていたことなのだけど、どうも近所に住む人たちは学がない。小学生の頃に何故宿題をやらなければいけないのか、と放課後は兄の遊びについてまわっていて、それを咎められ反抗すると「しなくてはいけない」の一点張りだった。なぜしなくてはいけないのか、という土台を伝えないからこういう私のように捻くれ者が生まれるのだ。
私は将来アメリカの大統領になるつもりである。近所の人は日本人、それも女の私が言っているのがおかしいのかいつも笑っていた。こんな時代に、と思うが日本の田舎はこんなもので、だからこそ嫌なのだ。しかし、この故郷を嫌がる気持ちももしかすると自虐文化のある日本の血からわくものなのかもしれないと思う。もしそうなのだったら私は特に日本人だということになり一層悲しい気持ちになるのだ。
とにかく私はでかい人間になりたいのだ。世界に影響を与えるようなでかい人間に。そのためにアメリカに行かなければいけないのだ。そのために最近勉強を始めたのだが勉強すればするほど中国だとかインドだとかに惹かれるようになった。もしかするとアメリカではなくこっちに行った方がいいのかもしれない。学べば学ぶほど別の道が見えてしまって自分にとって本当に良い道がどこなのかわからなくなる。
そしてついに考えるのも嫌になって、私は日本の留まることにした。日本の主将で我慢しよう、とそう思った。
日本は衰退していくのかもしれないが私が止めれば良い。現代人は運がいい。なにせ私がいるのだから。しかし彼らも頑張ってもらわなければいけない。SNSが世間だと勘違いし、全ての鬱憤を政治家にぶつけ、金持ちを非難し、現実から逃げ享楽に溺れる彼らにも自ら動くことを要求しなければならない。私はそのために動くのだ。
マッカーサー 丸膝玲吾 @najuna
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