僕は蝉である

青甘(あおあま)

第1話

 今日も日差しが強い。誰もがやる気をそがれ、クーラーのきいた部屋で涼みたいと思うだろう。けれど僕は違う。この暑さに感謝をするくらいだ。



 なぜなら僕の仕事は雨ではできないから。僕の仕事は鳴くことだ。泣くでも哭くでもなく、鳴く。



 僕の朝は早い。日が昇る前にはお気に入りの木に移動し、そこに留まることで準備が完了する。お気に入りの木は公園の中にある大きな木でそこには僕以外にも何匹かの蝉もすでに留まっている。



そろそろだろう。僕は呼吸をし、いつでも鳴ける状態になった。

 静寂に包まれる中、合図があるわけでもなく沈黙は突如破られる。


ミーンミーンミーンミーン

ツクツクツクツクツクツク

シャーシャーシャーシャー


 蝉の大合唱だ。僕はこの音に癒されながら、あの子が来るのを待つ。


 少しすると徐々に小さな子がカードを片手にぞろぞろと集まってきた。大人はほとんどおらず子供の中に老人もたまにいるくらいだ。



一人の男性が機会に手をかける。すると途端に音が出始めた。


 今日も始まったか。僕はこの時間が好きだった。この音も好きだしそれに合わせて子供たちが体を動かし始めるのを見るとなぜか落ち着く。


 さて、あの子はいるかな。お気に入りのあの子を探す。それはすぐに見つかった。まだ幼くほかの子と比べて目立つわけでもない子だが、なぜか僕はその少女から目が離せない。


それはその子一人だけがあまり楽しそうではないからかもしれない。



 僕はその表情をどうにかしたいが出来ることは鳴くことしかない。少女が元気になるようにその日も甲高く鳴き続けた。


 音が止まり、子供たちが帰り始める。どうやら終わったようだ。僕も一休憩する。

ふう。なんだか最近疲れやすいな。一呼吸置きほかの場所へと移動する。



 今日はあそこにするか。飛ぶ最中に目に入った一本の木に留まる。どうやら先客がいたらしく僕が留まるとすぐに鳴き始めた。







 日が暮れ始め、ほかの鳴き声がなくなっていく。僕も今日は早めに切り上げており、周囲には穏やかな時間が流れる。



 今日も一日がんばったな。

自分をねぎらいつつ僕は眠りにつくのだった。

 

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