第7話 協力関係


「俺はまだお前を信用したわけじゃない。9割、お前がカノンの体を奪った犯人と思っているぞ」

「あー、はいはい。今はそれで良いですよ!疑ってようが、私は本当のことしか言ってないし。アンタの力を貸してもらえるならそれで」


 私とテンは、ガヤガヤとネオンと煙が覆うストリートを歩いている。なぜか?それは日用品が必要だからだ!まずはこの体を綺麗にしたい。顔を洗いたい。ご飯が食べたい!女の子なんだから当たり前だ!!


「しかし、ほんとこの世界は未来なんだなって実感するわ。映画とかゲームで見たことあるもの。こういうバキバキなネオンとかお店とか。身体のパーツあります!なんて謳い文句にはビビったけど」

 私の生きていた時代には、義体化パーツなんて売ってなかった。もしかしたら、ほんの少し未来になってたらあったのかも知れないけど。でもこんなに普及してるってことは、技術が進化した先の未来ってことということも受け入れなければいけないかもしれない。

「興味が出たところで悪いが、その体にメスなんて一切入れさせないからな」

「でたよ、カノンちゃん第一主義」

「その体はカノンのだからな」

「あー、もう聞き飽きた!分かってるって!ちゃんと返しますよっ。まぁ、どうやればいいのか今の所見当も付かないけどさ」

「お前の組織の名前は?そこを目指せば何かあるはずだ」

「ですから、私はなんにも知りません。組織なんて大それたものになんか所属してないの。ただの女子高生なの!」

「……とりあえず今日はお前の言う日用品を揃えよう。カノンの体はキッチリと綺麗にしておきたいしな」

「……イケメン君ってけっこうムッツリ?」

 ちょっとどころか、かなりキモいなって感じてしまった。え。もしかして、ストーカーじゃないよね?だとしたら、イケメンなのに勿体無い。カノンちゃん、南無。


「協力しようと言ったのはお前だ。俺はカノンの体が無事に戻ればそれでいいんだ。軽口を叩くならさっきの俺のアジトに戻ってろ」

「ハイハイハイ。わかりました、わーかーりーまーしーた!黙って着いて行きますよ」

「……」

 テンはジトリとした目で私を見る。心開いてない目だ。私だって信用してないし、こんな私を毛嫌いしている男に心なんて開いたりしない。ちょっとイケメンだからって何でも許されると思うなよ。

「……服がダサい……」

 そう。この世界のファッションが壊滅的にダサいのだ!そして異常に露出度が高いか、顔を布で覆う忍者みたいな服が多過ぎる。ギラギラとしたものから、法事で来る和尚様みたいな服、胸元がガラリと開いていてタイトなスカート。男なんて革ジャン多すぎない?

「服に文句言える立場か?お前、金がないんだろうが。誰の金で買うと思ってるんだ」

「はい。すみません……」

 しゅん、とした態度を見せるとテンはフンとした感じで前を歩き始める。私はイーっと歯を出して細やかな抵抗をするのを忘れない。

「安心しろ。カノンに露出が高い服なんて着させない。今のボロボロの布よりはマシなのを選んでやる」


 結局はこの男、カノンしか頭にないのだ。

 ちょっと悔しい。

 私は、なんなの。

 だって突然この世界で目が覚めてさ。

 体を返せって。

 誰も私のことなんて知らない世界に落とされて、ちょっとは優しくしてくれても良いじゃん。

 カノン、カノンうるさい。


 私はサキなんだから。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る