第2話 イケメン登場

カラカラと音がする。

続いてカツカツ。

意識がハッキリした時には鼻にコーヒーの匂いが漂っていた。


「…んー。もう朝?ママ、今日休みだっけ?」


私はムニャムニャと目を擦り伸びをした。


「なんか変な夢見たー。隕石が」

「起きたか」


―ん?

―ママの声じゃない…

―低い男の声


「起きたのか、と聞いている」

「……どちら様でしょうか?」


そこにいたのは…


「い、イケメン!!」


少し蒼みがかった銀髪の男性がいた!


いやいやいや!

日本人じゃないよね?!

日本人に見えそうで見えない。

ハーフ?

整ってい過ぎでもはや人形のようだ。ドール!


「起きてるならこっちへ来い。腹が減ったろう…」


イケメンは私に飯を食えと言う。

え?どういうシチュエーション?

あと、ここどこ?


ちょっと冷静になってあたりを見回すと、なんともまあ汚い。

鉄と錆に覆われたコンクリートの家、みたいな。

なんか地下の実験室のような、隠れ家のような。そんな感じ。

明かりはちいさい電球が何個かあって、それくらいの光源だ。暗いなあ。


「…あの、もしかして私誘拐、されちゃった?」

「………」

「え?当たり?」

「な訳ないだろう。とりあえず飯を食え。この後少し歩く」

「えー…」


なんか言うこと聞かないと後が怖いと本能が言ってる。

車椅子みたいなものに座っていたらしく、ちょっと関節が固まっていた。

何度か足を動かして血を巡らす。

そうするとようやく楽になる。


よいしょ、と声を出し立ち上がる。


「?」


違和感。

何かが変だ。


まず高さ。

私こんなに身長低かった?

スポーツ女子で175はあったはずだ。

でも今はそれよりも低く感じた。


そして何よりも


「え?こんな髪色だった?」


顔の前にかかる前髪から見える色は栗色。

わたしって結構ブリーチとかしたりして、アッシュ系に近い色だったはず。

こんなフワフワ女子のような栗色ではない。

そう、髪はふわふわとウェーブがかっていて腰まであった。


「いや、私ショートだし!」

「早く来い!」


イケメンが私の1人問答に痺れを切らして叫び始めた。

いやしかし良い声。

低いけど心地よい。

どっかの声優でもやってるかのような声質。

もしかして劇団員?

だってこんなイケメン、テレビじゃ一度も見なかった。

もし芸能人ならママが放っておかない。

アイドル大好きママのことだ。

私にすぐにでも報告してくる。


「…あの」


とイケメンに声をかけた瞬間、私はさらに絶句した。


立ち上がった先にあるボロボロの姿見に写る自分の姿に、声も出なかった。


「ど、」



「どちら様でしょうか?」


そこに写っていたのは、私ではなかったのである!!

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