私は恋を着る

藤いろ

第1話・古布新 (ふるぬの あらた)

勇気を出してみた。

勇気を出して下北沢の古着へ!

前から興味はあったけど中々行けなかった。だって怖いし、素人が興味本位で行って良い感じしない玄人の世界という感じがして。

一つの良い感じの古着屋さんへ入る。

そこまで混んでないけど中には沢山の古着!

ハァ〜凄い!最高!

あ、コレとかかなり良い!好き!だけど私なんかが来て良いのかなぁ似合うかなぁ?

やっぱりやめとこう。と服を戻そうとした時。

「あ、戻しちゃうの?」

「!?」

ボーイッシュな髪型に服装、左耳と下唇にはピアス、タレ目で少し隈があるお姉さんが後ろから声をかけてきた。

怖い!!

「あ、あのっ」

「あーごめん。似合うのにって思って」

「え!あのいやっに、似合うなんて!」

「ホントホント♪」

似合う!?ホント!?いやでも!えっとえっと!

「あー私ここの店員なんだけどー」

「コレ!か、買います!」

「無理に売りつけようとかじゃないよ?」

「いえ!買います!袋は入りません!」

「ありがとございます・・・」

買った古着をカバンに詰め込み走り去る私。

私は正直この時の記憶があまりない。

ビックリしたから。人生でおおよそ関わらないだろうタイプの人との会話。初めての古着屋さんで初めて言われた似合うと言われた。

初めて尽くしの大切な日だったのに。

その日は覚えてないくせに寝れなかった。

次の日は寝てないから朝からダルくていつもより猫背になり学校に向かう。

カバンがいつもより重く感じる。

学校に着き机に突っ伏して寝る。

けどといつもより学校が皆んなの声がうるさく感じて寝れない。

何か騒いでる?声を聞いてみる。

「古布先輩来てるってー!」

「マジー!?アタシ見る初めて!」

「見に行こう!今校門にいるよ!」

「キャーかっこいい!」

「古布先輩ー!!」

学園の王子様でもいるの?アニメの世界でもないのにこの騒ぎなんなの?

古布先輩って誰??

廊下には窓の外の古布先輩を見ようと女子生徒で埋め尽くされてた。

私は私の安眠を邪魔する先輩の顔を見てやろうと生徒たちの隙間から外を見る。

そこにいたのは、昨日の古着屋の店員さん!!

え!?何で!?

少し前のめりになる。

パチッ!

目が合う。

私は後ろに飛び跳ねる!

ヤバい!変にドキドキする!このドキドキはアレだ!

私は昨日あの人の店で古着を買ってしまった!バカにされる!陰で実は似合ってないとか悪口を言われる!

そんな不確定要素な不安が頭の中を支配する。

先輩のお店に行っちゃったとか人気者の先輩とお話出来たとかポジティブな思考は一切なかった。

私は出来るだけ関わらないと誓う。

幸い人気者先輩だ、騒ぎが多い所に行かなければ会わないだろう。そもそも先輩となんてそんな会わないし、知り合いいないし。

これで私の生活は今まで通り変わらない。

でも、こういう時って会っちゃうんだよなぁ何でかなぁ。

移動教室の途中廊下の角を曲がると先輩!

「ん?」

「あ」

あ、とか言っちゃった!

「あ、あの時のお客様。この間は〜お買い上げありがとございます〜」

ガッツリ覚えてやがる!近づいてくるし!

足が竦む!一歩下がる事しか出来ない!

「古布、誰?」

「オイ後輩に絡むな。怖がってんぞ」

おお!お友達先輩2人頑張ってください!怖がってます!私怖がってます!

「・・・・」

「古布??」

そして古布先輩は無言で私のワイシャツを勢いよく捲った。

「!!?」

「あ〜今日は着てないのか」

人のワイシャツの中のインナー「見てこの一言!

私は突然の出来事に思わず、先輩の顎めがけて渾身のアッパー!

「ガッ!!?」

大の字で倒れる先輩。

「すみません!」

とりあえず謝る!そしてダッシュで逃げる!

そのあと聞いた話だとかなり大事になったらしく、先輩はあのあとすぐ早退したらしい。

そして3日後私は先輩のファン数名に校舎裏に呼び出される。

わー令和にこんな事あるんだー。

「オイ1年!何やったか分かってんのかよ!」

「先輩の綺麗な顔に傷つけやがってよ!」

「話すだけでも重罪なのに!」

「お前の顎も割ってやっからな!」

怖い!いやいや普通にヤンキーじゃん!不良じゃん!

「い、あえ、あの、アは・・・」

声が出ない。怖い怖い怖い!

「オラァ顎出せや!」

〜〜〜〜〜!!

混乱した私は近づいてきたヤンキーの腹に一発!

「ごはっ!?」

「コイツ!やる気かよ!」

「やっちまえ!」

わわっ私今何した!?おお!?

「オイ、やめろ」

先生!?(にしては言葉遣いが強いような)助かった!

そこにいたのは先生じゃなかった。

「何やってんの?」

古布先輩!!

「あ、いや・・・・」

「これは・・・!」

「こ、コイツ、この子が先輩に怪我させたから」

「代わりに仕返ししてくれた訳?」

「・・・いやその」

先輩ファン達は俯き黙ってしまった。

それくらい先輩の圧は凄かった。

ファンが黙ると先輩は私の所に来て私の頬を触れてるかどうかくらいで撫でた。

「大丈夫?怪我してない?」

「あ!あの・・・はい」

「良かった。おい!君達聞きな!この子は私の彼女だぞ!」

「「えーーーーーーーー!!!??」」

えーーーーーーー!!?

いつから!?私の話だよね!?ねぇいつから!?

「そんな!そんなのどこが良いんですか!?」

そうだよ!私も聞きたい!

「え、可愛いじゃん」

「「嘘だーーーーーー!!!」」

嘘だーーーー!!

「でもそいつ先輩に怪我させて!」

「これはご褒美だよ。私ドMだから♪ハァ・・・今日はどこをいじめてくれるの?」

「「え!!!?」」

え!!?

「分かったらもうこの子にちょっかい出すなよ」

ファン達はショック受け放心状態の中に新しい何かを目覚めたような顔をして帰っていった。

「あ、あの・・・・」

「んー落ち着く所で話そうか」

そういわれて先輩の働く古着屋に行く事になる。

初めて早退というものをした。

先輩は理由を話してくれる。

「ほとぼり冷めるまで付き合うフリをする。そうすれば君がさっきみたいな目に遭うことはないよ」

「いやでも!・・・・いえ、ありがとうございます。あと顎すみませんでした」

「いえいえ〜」

確かにこうすればもうさっきみたいに怖い目には会わないだろう、けど。

「あの・・・先輩は何でここまでしてくれるんですか?」

「この前ここで服買ってくれたから」

「・・・それだけ?」

「私には結構な理由」

本気?本当にそれだけの理由で?

「それに私女の子の方が好きだし」

聞いてない。

良いのか?この提案に甘えて。というか本当にそれ以上の理由はないのかな?

どうしたら良いの分からない。

「ハァ〜先輩趣味悪いって噂になりますよ」

「どこが??」

こうして私は学校一番の人気で一番生活態度が悪くて一番古着が好きな先輩と付き合う事になった。

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