第57話 セブンスドラゴン

「二人とも、何を見ているんだい」

 昼食を終えたフレデリカがラウンジにやってくると、ノート型端末の前に大きな銀髪と小さな茶髪が身を寄せ合っていた。

「ミサキ達が恐竜を食べてるぞ」

 ロロが振り返って、白い歯を見せて笑った。屈託のない笑顔に、フレデリカの顔も自然と綻ぶ。

「シュニッツェルにして食べているようだ。中々美味そうだな……」

 食い入るように画面を見ているゲルトルーデの脇から、フレデリカもその様子をひょいと覗き込んだ。

「へぇ、これはカラアゲだな。ロンディニウムにも専門店があるぞ」

「そうなのか。一口サイズで食べやすそうだ」

 ゲルトルーデとロロは、笑顔で唐揚げを頬張っている三人の姿にごくりと喉を鳴らした。

「なんなら、次の災害時に少し取ってきて食べてみるかい?こっちにはこっちの調理の仕方があるだろうし」

「カラアゲが作れるのか?」

 やや食い気味に乗ってきたゲルトルーデに、フレデリカが笑って手を振った。

「僕が作るんじゃないよ。全部シェフにお任せさ。カラアゲじゃなくても、美味い調理法のひとつやふたつ、持っているだろうさ」

 彼女達は基本的に身の回りの事を自分でする事は無い。

 元々フレデリカはそういった人を使う家庭の生まれであるし、不器用なゲルトルーデと大雑把なロロが何かをしようとすると、逆に物が壊れたり散らかったりしてしまう。

 綺麗に整えられた宮殿内は全て、この基地内にいる清掃業者や内装業者の手によるものだ。食事に関しても、彼女達専門の料理人を何人も基地の中に住まわせている。

「そうか、そうだな。では、次に連中を始末した時に、どこかの肉を取ってくる事にしよう」

「ロロは尻尾の肉がいいぞ」

「いや、やはり腹肉だろう」

 譲らない二人が口論を始めると、どこの肉にするかというだけで、決めるのに一昼夜はかかりそうである。フレデリカは呆れてラウンジの入口の方へと目をやった。整った顔立ちのFDCO職員が、平たい階段を降りて彼女達の方へと向かってくる。

「やあ、ブレンドン。丁度良かったよ。次回の災害時に、少し竜の肉を持って帰りたいんだ」

 近寄ってきた短い金髪の男は、それはそれは、と片方の眉を跳ね上げて皮肉げに言った。

「ご期待に沿えそうですよ、お嬢様方。出動準備が整いましたので」

 フレデリカはおやおや、と言って獰猛に笑った。

「素晴らしい報告をありがとう、ブレンドン。さて、ダンスホールはどこかな?」

「火薬庫ですよ。ダイナソー達は人間どもの争いにご興味がお有りのようですね」



「酷いな、これは。竜だろうが兵器だろうが、壊されたほうにとっちゃあ同じことだろうに」

 かつては美しく整った町並みだったであろうそこは、恐らくミサイルや特殊砲弾の餌食となったのであろう。人気のない鉄筋コンクリート造の建造物群は、あちこちに穴が空き、壁は崩れ、崩壊寸前の廃墟のような様相を呈している。

「恐竜だとここまで破壊するには相当の時間がかかる。これは、兵器によるものだな」

 長大な大剣を片手に提げたゲルトルーデが眉間に皺を寄せる。

 いかに恐竜が頑健で強大な力を持っていようと、RC造の建物をここまで完膚なきまでに破壊する事は不可能だ。間違いなく、これは竜災害によるものではなく、人間の武力によるものだ。

「変なの。恐竜に壊されるのは駄目で、自分達が壊すのはいいんだ」

「残念だが、ロロ。人は他人の痛みにはそこまで敏感ではないのさ。自国でなければいくらでも暴力を振るえるものなのだよ」

「連邦のやり方は理解し難いな。私から見れば、間違いなく”悪”の範疇に入る」

「まぁ、そうだね。何があろうと一方的な武力での侵攻は……いや、連邦よりも話の通じない連中がお出ましだよ」

 三人は武器を抜いて構えた。廃墟となった建造物の陰から、ぞろぞろと竜達が姿を現す。

「ふむ、やはり最近は多いな。13、4といったところか」

「問題ない。蹴散らす」

 先頭に立っていたフレデリカは頷き、細剣を掲げて号令をかける。

「いつも通りだ。エレガントに舞いたまえ」


 真っ先に飛び出したのは、得物が最も軽いフレデリカだった。

 音すら置き去りにする程の速度で群れの先頭に瞬時に近寄ると、その細剣の一撃、たった一撃を、竜の首元から頭蓋に向かってすっと差し込んだ。

 刺して、抜く。ただそれだけの動きを済ませると、そのまま次の獲物へと向かっていく。

 あまりの刹那的な出来事のせいか、刺し貫かれた竜は彼女を追う事もできずにその場で立ち尽くしている。いや、そうではない。

 脳の一部を損傷しただけの竜は、死ぬ事は無い。やたらと再生力の高いこの生き物は、例え損傷を受けたのが重要器官であっても、体液の循環ができてさえいれば再生を果たす。

 だが、当然、肉体を主として動かしているのは脳である事に間違いはない。即ち、彼女に刺された竜は、一時的な運動麻痺を起こしてしまうのだ。

 動きが止まれば当然、後続の格好の的となる。

「ふっ!」

 刃の暴風が立ち尽くしたままの竜を襲う。

 その重量と遠心力によって力任せに叩きつけられたゲルトルーデの大剣が、容易く竜の首を吹き飛ばす。上顎の突き出た独特な形状をしたその竜の頭部は、何ら抗うことすらできずに、瓦礫だらけの地面に転がった。

「よいしょお!」

 続けて跳ねてきたのは小柄な黒い影。その体に似合わぬ、頭の部分だけで数百キログラムはありそうな巨大な鉄槌を、固まったままの別の竜へと振り下ろす。

 凄まじいまでの重量が、ロロの剛力でもって頭部から叩きつけられる。

 液体の詰まった袋が破裂するかのような無惨な音を立て、竜の頭部、いや、頭部から首にかけての肉体の一部は地面にめり込み、周辺にびちゃりとその構成物を弾けさせた。

 対多数において、彼女達の戦い方は一貫している。

 目にも留まらぬ速さで接近したフレデリカが竜の動きを止め、後続の二人による大火力で殲滅する。これが、DDDアトランティックの、対新古生物における戦闘であった。


「ふむ、この場は殲滅したが……まだいるようだね。どこだろうか」

 周辺に動くものは三人以外に無くなった。辺りに散らばるのは、例外なく頭部を失ったか、頭部を潰された竜の死体達。

「もう少し東かもしれないな。来た方向には気配を感じなかった」

 彼女達は途中まで飛行機でやってきたのだが、災害発生現場までは車輌で移動してきた。近場なので、一々降下作戦など取らなくても間に合うという判断である。

 事実、この地域は幾度も連邦からの攻撃に曝されたせいか、民間人は殆ど残っていなかった。人的被害も、建造物の被害も最小限である。最初から壊されていたのだ。

 ただ、残っていた人間にとって、隠れる所の少ない廃墟というのは悲劇だった。

 竜災害が発生した場合、まずは近くに逃げ込める頑丈な建物がなければ、ほぼ100%生き残れない。この地はこの有様であるので、当然ながら、現地に残っていた人間は全滅していた。

「フリッカ、歩いていくのか?」

「それしか無いだろうね。まさか軍の人たちを危険に晒すわけにはいかないし」

 ロロの言葉に頷いたフレデリカは、血と脳漿のついた細剣を軽く払って顔を東へ向けた。

 壊された街並みはまだ続いている。血液の亢進が収まらない以上は、竜が殲滅されたわけではない事がわかる。

「肉はどうするんだ?」

「後にしたまえ。別にすぐに腐ったりはしないだろう」

 どちらにせよ、後からこの国の軍がやってきて液体窒素で冷凍していく。それに、この数だ。研究所の人間に彼女が一声かけるだけで、肉ぐらいは望めばすぐに譲ってくれるのである。

 廃墟には場違いな程に美しい出で立ちの彼女を先頭に、三人は歩く。

 竜自体は小型のSクラスだったが、それ故に街中ではどこに隠れているのかがわかりにくい。体高1メートルから2メートル程度の竜であれば、人間の住居にも比較的容易く入り込める。

「いないぞー」

「騒げば向こうから出てくるのではないか?」

 面倒くさくなった後ろの二人が、大雑把な作戦を提案する。フレデリカは苦笑して頭を振った。

「もう少し我慢して歩こう。騒いだところで近くに竜がいなければ疲れるだけだ。心配しなくても、奴らは鼻が利くのだから、勝手に寄ってくるさ」

 DDDパシフィックが捕獲した生体のおかげで、新古生物に関する研究は大幅に進んだ。

 脊椎動物としては異常とも思えるほどの再生力の高さや、嗅覚、視力。どれも既存の生物から並外れて高く、特に嗅覚においてはゾウのそれと同等近いとまで言われている。

 意外に思われるかもしれないが、ゾウの嗅覚はイヌの倍近くあり、陸上の生物としては最も臭いを嗅ぐ力が強いとされている。あれだけ大きな鼻なのだから、良く考えれば当然なのではあるが。

 その嗅覚も恐竜の種によって多少の個体差はあるようだが、それでも解剖から得られた嗅球の大きさから、基本的には竜の嗅覚は鋭い、と結論付けられた。

 てくてくと荒れた道路を進んでいた一行だが、唐突に三人が三人とも、一斉に立ち止まった。

「何!?なんだ、どういう事だ?」

「あ、あれ?消えちゃったぞ!?」

 彼女達は急激に落ち着いていく体内の変化に困惑した。近くに竜がいた場合、血流の増加と体温の上昇があるものだ。それが、唐突に消え失せてしまったのである。

「逃げたか?いや、それにしては唐突すぎる。これは、死んだんだ」

 普通、徐々に対象が遠ざかった場合、体の変化もそれに応じた緩やかなものになる。唐突に消えるという事は、間違いなく近くにいた竜が死んだという事だ。これは経験上分かっている事である。

「何故だ?まさか、転んで頭を打って死んだというわけではあるまい」

「恐竜だぞー?そんな簡単にはしなないぞ」

 口々に困惑した台詞を吐くゲルトルーデとロロだったが、フレデリカも困惑を隠せないようだ。

「共食いなら、生き残った方の気配が残る。同士討ちで共倒れ、というのは再生力と耐久力の高い竜である以上ありえない。しかし、竜を殺せるのは我々だけだ」

 困惑しながらも、順番に考えを纏めていくフレデリカ。

「行こう。死んだにせよ、死骸の確認は必要だ。多分、方向は間違っていなかったはずだ」

 遠ざかる方向に歩みを進めていれば、体内の変化でわかるようになっている。自前のセンサーが生きていた以上、方角は間違っていないのだ。

 気を取り直して歩みを再開する三人。舗装されているとは言え、あちこちが破壊された道路というのはお世辞にも歩きやすいとは言えない。

 足場の悪さに辟易としつつも進む。元々体の変化によって探知できる範囲というのは、そこまで広い範囲ではない。程なくして、道路に転がる竜の死体の前にやってきた。

「死んでいるな。これは……鈍器か?強い力で頭蓋骨を一撃で粉砕している。ロロのような武器だろうか」

 道端に転がっていたのは、先程と同じ、Sクラスの恐竜だった。

 死んで間もないと思われるその竜の頭部はぐしゃぐしゃにひしゃげており、横倒しになった道路の上に赤黒い染みを広げている。

「あっちにもあるぞ」

 ロロの指差す方向を見れば、確かにそちらにも同じような死体がある。近寄ってみれば、やはりこちらも同じような一撃で倒されたのだとわかる。

「これは、一体……我々以外に、いや、その可能性はあるか」

「フレデリカ、我々やミサキ達以外にも駆逐者が?」

 ゲルトルーデの疑問は直後、彼女達の目の前に現れた者によって証明されてしまった。

 脇の建物から、同じような竜の死体の尻尾を担いでずるずると引きずって出てきた女が一人。片手には鎖のついた棘まみれの鉄球を提げている。

『何だ、お前たちは。ここは危険だと聞かなかったのか?』

 ルーシ語である。ゲルトルーデとロロは、唐突に聞き慣れない言語を前にして戸惑った。

『君は、連邦の駆逐者だな。どうして存在が公表されていない?』

 状況から即座に判断したフレデリカが、同じくルーシ語で返す。

『そうか、お前達はあれか、DDDとかいうの私だな』

 耳垂れのついた茶色い帽子を被った少女。年齢は彼女達とそう変わらないようだが、フレデリカ達に比べるとやや容姿は幼く見える。

 まだ顔の造作に幼さを残しながら、小さな顔に収まった長い睫毛と大きな双眸が凛々しい。連邦の軍服を着込んでいるものの、背の低い幼い容姿と整った容貌から、何ともちぐはぐな印象を受ける。

『質問に答えてくれないか。どうして連邦は君の存在を隠している。竜災害は世界的な危機であると、連邦も知っているだろう』

 フレデリカの問いに彼女はしかし、口元に小さな笑いを浮かべた。嘲笑に近い。

『それはそっちでどうにかするのだろう。我が祖国で起こった災害は、私が駆除する。今まで一度たりともわが祖国が、お前たちの世話になった事があったか?』

『それは……だが、連邦もこちらとの協力体制に調印しているはずだろう』

 広大な国土を持つルーシ社会主義共和国連邦ではあるが、確かに一度もDDDの出動があった事はなかった。彼女達もおかしいとは思ってはいたものの、寒くて遠い場所に行かなくても良いのであれば好都合だ、ぐらいにしか思っていなかった。

『まぁ、必要になれば呼ぶ。今の所は必要ない。それだけだ』

 無愛想な彼女はそう言うと、担いでいた竜を道路の上にどしゃりと転がした。

『これは背任だろう。戦力を持ちながら公開しないというのは。それに、ここの鎮圧には我々が派遣されてきた。何故君がいる?』

 フレデリカのその言葉に、彼女は僅かに目に力を込めて返した。

『何故だと?ここは連邦の領土だ。私が来るのは当然だ』

『何を言っている?ここは三十年以上も前に連邦からは離脱して独立しただろう。中立国のはずだぞ』

 連邦はある時期、大幅にその範囲を縮小した。対外宥和政策を取った党書記長がいたのだ。

 彼が在任中は一時的に犬猿の仲であった合衆国とすら歩み寄り、世界の大きな火種が一つ消えた、かに見えた。

 だが、実際には規制緩和によりなだれ込んだ西側の企業により、連邦内に元々あった資本が軒並み食い荒らされた。結果、それを恨んだ連邦内の大資本家達から彼は糾弾され、連邦の歴史の汚点として粛清されてしまったのだ。

 その際、力の弱まった連邦からは、その強権的なやり方に嫌気をさした地域が次々と独立した。この地、キーウ公国もその一つである。

 その独立の経緯からこの地には連邦寄りと欧州連合寄りの二つの勢力があり、中立国ながら東西に挟まれた危うい国家運営をしていた。それが、二年前、突如としてこの国に侵攻を開始した連邦によって、先程の廃墟が生産された、というわけだ。

『何と言われようが、歴史的にここは我が祖国だ。お前たちに何かを言われる筋合いはない』

『馬鹿な。我々は公子から正当なルートで通報を受けてここに鎮圧に来たのだ。連邦の領土などと、認めるわけにはいかない』

 険悪になる二人の間に、慌ててロロとゲルトルーデが挟まる。

「おい、何を言っているのかわからないが、状況を見る限り、彼女も駆逐者だろう。喧嘩はよせ」

「そうだぞ、フリッカ。そっちの人も、怒るのはやめよう」

 間を取りなした二人に、軍服の彼女は冷たい視線を浴びせて言った。

「群れないと何も出来ぬ者達が、世界を守るなどと片腹痛いな。去れ。ここは見逃してやる」

 唐突に連合王国語で言い放った彼女に、三人は呆気にとられたまま立ち尽くした。竜の死体をそのままにして、彼女は鉄球をぶら下げて東へと歩いていく。

「おい!待ちたまえ!まだ話は終わっていないぞ!」

『さよならだ、軟弱者達』

 彼女は振り返りもせずに、唐突にその速度を上げて走り去っていった。

「何なのだ、あれは。無礼にも程があるだろう!」

 珍しく怒りを露わにしたフレデリカに、ゲルトルーデが当然の質問をする。

「フレデリカ、彼女は何と言っていたのだ?彼女も駆逐者なのだろう?」

「恐らく、そうだ。連邦は彼女の存在を隠していて、彼女の言い分が本当であれば、自国内の鎮圧は全て彼女一人でやっていたのだろう」

「えっ!?たった一人でか!?すごいな!」

 ロロが感嘆の声を上げたが、二人の反応は冷淡だ。

「広いとは言え、連邦内だけだろう」

「今までは大丈夫だったのだろうが、今後は厳しくなるのではないか?」

 一人で、というのであれば、三人とて今までに一人で竜を駆逐した事はある。狭い範囲だけであれば、今までの出現数であれば十分に可能であると言える。ただ、ここ最近はその数自体が増えつつあるのだ。

「いずれにせよ、これは世界に対する連邦の背信だ。すぐに戻って報告しなければ」

 フレデリカは懐から通信端末を取り出して、作戦終了の合図を送った。

「あっ!そうだ!肉!ゲルちゃん、尻尾切って尻尾!」

「いや、やはりここは腹の脂の乗った部分が良いだろう」

「尻尾の方があっさりしていて美味しいぞ!」

「いや、ミサキが言っていただろう。淡白だと。ならば脂があったほうが良い」

「しっぽ!しっぽだ!」

「腹に決まっている!」

 下らない言い争いを始めた二人に、フレデリカは苦笑して言った。

「二人とも、両方持って帰れば良いだろう?これだけ数がいるんだから、それぐらいは許されるさ」

 毒気を抜かれたフレデリカは肩の力も抜いた。これはこれで、彼女は案外この二人に救われている部分もあるのだった。



「インテリジェンスは機能していたのか?」

「予測はしていました。ですが、確証が得られていなかったというのが実情です」

 壮年の男性は、公爵家令嬢に申し訳無さそうに頭を下げた。

「竜災害と思しき反応はありました。しかし、当の連邦が何も言ってこないものですから」

「鎮圧はされていたという事だな。ほぼ、確定じゃないか。何故黙っていたのだ」

「申し訳ございません。不確定情報で混乱させるのではないかと」

「あの二人は兎も角、僕がそのような事で混乱するものか。それで、どうするつもりだ?」

「遭遇された以上、それを前提に動きます。恐らく、連邦から救援要請があった時点で、相応の規模かと」

「Gクラス以上か。しかし、ミサキは一人で倒したと言っていたぞ」

「彼女の戦闘能力は恐らくDDD随一です。あまり基準とされるのは」

 顎に手を当てた彼女は、暫く考え込んでから頷いた。

「わかった。その時は彼女達の力も借りる事にしよう。オーウェン、軍でもそのように周知しておいてくれ」

 男は承知しましたと言って部屋から出て行った。

 公爵令嬢は一人、ぬるくなった紅茶に口をつけて顔を顰めた。

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