第46話 幕間の決断

 簡易裁判所でのこちらの訴えは全面的に認められた。被告、リュウジ・ムトウは原告、ソウ・サメガイに金20万エンを支払え。簡単に言えばそれだけだ。

 反発も反論も何も無かった。当然だ。被告は裁判所からの呼び出しを無視し、欠席した。連絡を入れても電話に出もしなかったらしい。それはそれで構わない。

 有休を取って一緒にやってきたソウは、拍子抜けしたような顔をしている。こんなに簡単に決まって良いのか、と。その顔を見ていたミズモト弁護士は、皮肉げな笑いを浮かべて説明した。

「割といるんです。裁判所からの出頭命令を無視する人。自分が不利になるだけなんですけどねえ」

「そうなんですか。でも、無視するような人が、お金を払うものなんですか?」

 払え、と言っても、知らん、と言ってきそうだ。

「まぁ、大抵は渋りますね。そんな事は知らないと。なので、裁判所に申し立てて差し押さえです。会社で働いている人ならまずは会社からの給与ですね。当然、その場合は会社に連絡が行きます。訴訟内容によっては懲戒解雇か降格、減俸ですね」

「働いていない場合は?」

 無職だった場合はどうなるのだろうか。支払う能力の無いものに言っても無駄ではないか。

「完全に生活保護状態、ならば取るのは無理です。ですが、給与が無い場合でも銀行預金なんかはありますから、そちらの差し押さえです。それができない場合は資産の売却。まぁ、外車を乗り回しているぐらいだから20万ぐらいぽんと出せるでしょう」

 それもなんだか腹立たしい。まるで金があれば傍若無人が許されるという事みたいではないか。法の執行がされても、全然気分は晴れない。

「なんか、苦労した割にはあんまり報われた気がしないな」

 ソウがぽつりと呟いた。全くの同感である。

「目的は無断駐車を止めさせることですからね。裁判所命令を無視するようであれば、今度はもう警察に出てきてもらうしかないです」

 とは言っても、警察は民事不介入である。結局何もできないだろう。余程余罪があれば別だろうが。そうだ、余罪。

「刑事の方はどうなりましたか、先生」

 張り紙をしたのは今回の被告の親だ。場合によっては関連性が認められるのではないだろうか。そうなれば、一般的な社会的制裁が与えられる可能性もある。

「そちらも順調ですね。今回の結果を鑑みても、送検、起訴は間違いなし。というよりも、ミサキさんの案件ですからね。社会的意義が大きいものに対しては警察も検察も積極的ですよ」

 社会的意義。いや、しかしそれでは、この告訴が表に出るのではないだろうか。

「それって、大丈夫なんですか?私は兎も角、ソウの」

「ああ!大丈夫です!その辺りはもう、十分に承知していますので!というか、流石にアレはやりすぎなので制裁を受けさせることにどの方面でも異議はありませんよ」

「そうですか……」

 実際、やりたい放題にされるというのは腹立たしい。反省の機会すら無視するというのであれば、相応の社会的制裁は必要だろう。ただ、その社会的制裁というのは、現代では少々やりすぎるきらいがある。相手が死ぬまで叩き続けるというのはどうも、生理的に受け入れがたいというか。


 本当にそうか?

 お前は、憎いと思ったものを、死ぬまで叩き続ける生き物ではないのか?


「ソウ。昼は外で食べて帰ろう。何が良い?」

「お?そうだな。もうすぐ夏だし、ウナギなんてどうだ?」

「ウナギかぁ。わざわざ絶滅寸前の生き物を食べる意味なんてある?」


 良く言う。

 既に絶滅した生き物を殺し回っているお前が。


「別に絶滅寸前ってわけじゃないだろ。完全養殖ができりゃあ、値段は高くても食べられるんだし」

「まぁ、そうだね。でもそれっていつになるのかな」


 科学技術が自然に通用しないというのは思い知っただろう。

 何故抗う?貴様らは滅びる運命にあるのだ。


「うるせえよ」

 黙れ。お前らに指図される謂れはない。俺の中からぐだぐだとくだらねえ事を言うのはやめろ。マジで、駆逐するぞ。

「ん?どうした?」

「いや、なんでもないよ。ちょっと蚊が、耳元で」

 ただの羽虫の音だ。取るに足らない雑音に過ぎない。

「ウナギなら、どうせなら良い店で食おう。金はまぁ、相手持ちってことで」

「そうだね、流石に20万ってウナギはないだろうけど。先生はどうします?」

「あっ、私はその、ウナギなんか食べたら妻と娘に食わせろとせがまれてしまうので」

「良いじゃないですか。オゴリですよオゴリ。娘さん達には黙ってれば大丈夫ですって。いきましょうよ、これも依頼料の一環ってことで」

 ソウがミズモトの肩を叩いて、スマホで近くの店を検索し始めた。サクラダ周辺には有名店も多い。そう遠くまで動かずとも望む店は見つかるだろう。

 どうにも食い物に関しては金に糸目を付けないきらいのある夫に呆れながら、それでもハレの日ぐらいは良いだろう、と、サクラダ駅北側にある高級店へと足を運んだのだった。



「ねえ、ジェシカ。今日はミサキ、お休みなんだよね」

 忌々しいほどに胸の巨大な、それでも大切な友人に話しかける。

 彼女は自分にとって、最初にできた一番大切な友人だ。胸や背の大きさなど、思う所はあるものの、基本的におおらかで優しくてとても親しみやすい仲間である。

「そうですね。お昼ごはんは私達で作りましょう」

 それは問題ない。ミサキの教えてくれた料理はどれもこれも簡単なのに美味しくて、材料さえあればこんなに沢山、こんなにも美味しいものが食べられるのかと感動したのだ。

 おじいちゃんの所にいるときも美味しいものは沢山食べたが、ミサキの作るものはそれとはまた違った美味しさがある。何というか、食べ飽きない美味しさなのだ。

 辛いものが嫌いな自分には驚愕だった、あのカレーライス。辛いと思った瞬間に美味しさが溢れ出して、匙を握った手が止まらなくなった。辛いものは不味い、と思っていた自分の認識を、革命的に破壊した恐ろしい料理だった。

「今日、ミサキが頼んでた材料は?」

「野菜炒めです!たっぷりの野菜と豚肉ですよ!メイユィ!」

「あっ、あれも好き。なんでも良いのが自由度が高くて良いよね」

 オイスターソースをメインの味付けにして、野菜も肉も色々と好きなようにできるのだ。ハズレのない組み合わせをミサキから教わって、どれでも美味しいという素晴らしい知見を得た。ミサキは何でも知っている。彼女の言う通りにしていればまず間違いない。

 先日の戦いでもそうだった。何故か無かったことにされているが、あの恐ろしいほどに大量に出現した恐竜どもを駆逐できたのは、間違いなくミサキのお陰だ。

 自覚していた事だが、自分は沢山出てくる竜に弱い。目の前に集中して殺すことは簡単だ。おじいちゃんの所にいた時だって、目標以外は完全に無視して良かった。

 仮に沢山いたとしても、普通の人間ごときは自分の相手にならないのだから、周囲の妨害など雑音にしか過ぎなかった。

 でも、恐竜は違う。奴らは、自分の想定を超えた速さと力を持っている事が多い。

 だけど、ミサキは違った。あの格好良くて大好きなヒノモト人は、その恐ろしい数をものともせずにあっという間に蹴散らしてしまった。頼もしい。同じ能力を持つ者とは言え、彼女の力は自分たちを遥かに凌駕している。間違いない、彼女こそ私達のリーダー、いや、世界の女王に違いない。

 ジェシカの弱点だってすぐに見抜いて、的確な助言をしていた。前からジェシカは強くて素早いけど、どうにも決め手に欠けるなと思っていたのだ。けれど、自分にはその理由がわからなかった。

 ミサキはその点をはっきりと指摘して、それを補うような技術を提示してくれた。自分が無意識にやっていたことを、分かりやすく、論理的に言葉にしてくれたのだ。これは自分には絶対に真似できないことだ。

 ミサキはとってもカワイイ。それだけじゃなくて、どこかすごく色っぽいし、既に旦那様までいる。自分が将来こうなりたいという、お手本のような存在だ。

 できればずっと彼女と一緒にいたい。いろんな事を彼女から学びたい。そして。

 旦那様と結ばれるために、どうやったのか、どうしても聞いておきたい。



 美味かった。

 それはもう、美味かったのだ。

 ミサキから教えてもらった通りに作ったのだから、美味いのは当然だ。けれど、なんだこの、微妙に物足りない感じは。

 腹は膨れている。味覚も胃袋も満足しているのに、何が足りないのだ。

 メイユィと二人で楽しく作って、楽しく食事をした。それのどこに足りない部分が。

 ああ。

 そうだ。足りていない。自分には圧倒的に、ミサキという部分が足りていないのだ。

 彼女の存在は、出会ったときから即座に、強烈に自分の中でその地位を確立してしまっていた。もう、無理だ。家族を失って、その後に出会った友人と、それ以上に大切に思えるほどの存在に出会えるなんて。

 彼女がいないと、もう生きてはいられない。週末になると、どうしても彼女の痕跡を追って端末で彼女の事を検索してしまう。

 世の中の彼女に対する評価は殆どが称賛の一色だった。当たり前だ。あんなに完璧な存在が他にいるはずがないのだから。

 だが、知っている。自分達に見えない範囲で、彼女の、ミサキに対する謂れのない中傷が巻き起こっている事を。

 最初におかしいなと思ったのは、エゾでの事だ。ヒノモトの人間は、完璧な彼女のことが大好きなのだろうと今までは手放しでそう思っていた。だが、そうではなかった。

 一部の人間には彼女を敵視し、批判し、あまつさえ引きずり下ろそうという人たちがいるという事を知ってしまった。

 許せない。

 ミサキは完璧な自分たちのリーダーだ。優しく、賢く、常に冷静で的確な答えを自分たちに提示してくれる。ただそれだけでなく、他の人間達にも惜しみない、公平な愛情を注いでいるのだ。近くにいてその事は常に感じらていた。

 彼女自身の身を犠牲にしてでも自分やメイユィを慮る素晴らしい献身性。一般の人々が死んだことを心の底から悲しんでいる慈愛と優しさ。彼女こそ、自分たちが戴くべき完全無欠の女王ではないだろうか。

 いくら悪意のある人間に引きずり落とされようと、彼女の高潔さは揺らがない。だからこそ、自分もメイユィも安心して彼女についていくことができる。だから、信じている。

 彼女の選択こそ、自分たちの将来に、最も最適な未来であるという事を。

「メイユィ、ミサキの家、わかりましたよ」

「本当?秘密なんじゃなかったの?」

「ヒノモトはそこまで情報統制が厳しくありません。でも、知っても秘密にしておきましょう」

「そうだね。ワタシ達の秘密だね」

 そう、このメイユィもまた、志を同じくする絶対に欠けてはならぬ仲間なのだ。



 統合幕僚監部のある、防衛省庁舎A棟、地下の一室。スクリーンに映し出されている映像を、防衛隊の幹部、防衛大臣、そして副総理までもが一緒になって見つめている。

 証拠は明白だ。彼女達には常にウェアラブルカメラが装着されている上に、会話まで全て録音されている。あまり表に出せないような映像もあるが、こうした不測の事態が起こった時には、非常に頼りになる映像証拠となる。

「凄まじいとしか言いようがないな」

 統合幕僚長である陸将のウチダが唸る。それ以外に表現のしようがないのだ。

 降下地点に着地するなり即座の高速戦闘、強靭な肉体を持つ竜を一刀両断にする火力、的確な弱点部位の指摘と対集団における判断力。

「これを、誤報だと?かの国は一体何を考えているのだ?」

 キウチ防衛大臣が顔を真っ赤にして両手の拳を握りしめている。彼は、かの国の傍若無人ぶりに何度も苦汁を舐めさせられてきた。そしてそのせいで、防衛隊幹部であっても彼と全く同じ感情を持っている。

 本当にかの国は西側の存在なのか、と思えるほどに、我が国に対して敵愾心をむき出しにしている。歴史学者に言わせれば、歴史の無い国がどうにかして箔をつけようと、隣国のせいにしてその『無い歴史』を取り戻そうとしているからだという。

 だが、そんな分析は今はどうでも良い。問題は、これは完全なる国際協定違反だという事だ。

「アシダさん、副総理。見たでしょう。これは明白な裏切りです。いや、世界に対する背信行為と言っても良い!」

 キウチ防衛大臣の言葉に、隣に座っているアシダ副総理大臣も頷いた。

「早急に合衆国と情報を共有しよう。央華に告げるかどうかはあちらに判断してもらう。北の工作の可能性も考えられるので、迂闊にあちら側に教えるのは危険だ」

 北コリョはルーシ連邦と央華の傀儡だ。東西の分断を図る事が常であるため、これもその潜り込んだ工作員による仕業ではないかというのである。

 だが、無いとは言えないがその可能性は低いだろう。要請は大統領府から直接きているのだし、仮に南コリョの大統領が懐柔されていたとしたら、それはそれでもう切るしかない。合衆国とヒノモトが南コリョから手を引いたらどうなるかぐらい、連中はいやという程分かっているのだ。反ヒノモトは国内向けのポーズなのである。

 央華にしても連邦にしても、南北は分断されたままのほうが都合が良い。無理に統一などしようものなら、第三次大戦の幕開けだ。

「しかし、多いな。いや、良く鎮圧できたものだと思うが、ギリギリではないかね」

「はい。流石にこの数は世界各国での災害事例を見渡しても前例がありません。というより、今まで大群とされていた災害の実に三倍近い数です。異常値です」

 副総理の言葉に答える。異常だ。明らかに今までとは違う。一体何が起こっているのか早急に突き止める必要がある。なのに、よりによって南コリョのこの裏切りだ。

「検体が取れなかったというのは本当か」

 シノノメ副長の言葉にも頷く。 

「はい。と、言うよりも、彼女達が引き上げた後、すぐに南コリョ軍がパークを封鎖しています。明らかに接収を狙ったものかと思われます」

 合衆国から提供された衛星画像は、特徴的な南コリョ軍の制服を着た者たちが、パーク内で竜の死骸の回収作業を行っている所を捉えていた。

「決定だな。自ら首を締めるとは。愚かにも程がある」

 これが公になれば、南コリョは国際社会から総攻撃されるだろう。得をするのは北コリョだが、その背後にいる者たちにとってはあまり愉快な出来事ではない。

 一見馬鹿な敵対国が自爆した、かのように見えるだろう。だが、その馬鹿な国の北側にはもう一つ同じような馬鹿な国があるのだ。

 調子づいた北の将軍様は、これ幸いと南のネガティブキャンペーンを張るだろう。それだけならばまだ良い。好機とばかりに停戦を反故にする可能性だってあり得る。

 ただでさえ竜災害で世界が一致団結せねばと言っているところに、自分の首元で戦争を起こされてはたまったものではない。間違いなく北は連邦と央華に協力を要請するだろうし、彼らはそれを無下にすることもできない。そして、戦う相手は世界最強の軍事力を誇る合衆国と欧州連合だ。

 いかに央華や連邦が軍備を増強しているとしても、とても勝機があるとは思えない。精々有耶無耶にして経済制裁だけで済ませるか、程度に落とし込む事しかできまい。

「総理から直接合衆国に投げよう。まぁ、あちらも既に把握してはいるだろうが」

 南コリョには合衆国の駐留軍がいる。現地で得た情報と衛星の画像と見比べれば、彼らの背信行為は一目瞭然だ。問題はどのレベルまで情報を公開するか、だが。

「その問題は一旦それで終わりだ。それよりも、竜の方だよ、竜の」

「大臣、新古生物です」

 キウチにウチダが遠慮がちに囁く。表向きはそうだが、もう誰もが竜だ、恐竜だと言って憚らない。別にここでアレをトカゲと呼ぼうがハゲと呼ぼうが問題はない。

「そう、新古生物だ。今回はカラスマ君達の活躍でどうにかなったが、あんなものが立て続けに出てこられては、彼女達だってたまったものではないだろう」

 実際、ミサキのあの覚醒じみた動きがなければ全滅していた可能性が高い。そうなってしまえば、残っているのはアトランティックの三人だけだ。三人だけで全アースを。無理に決まっている。

「何か、どうにかならんのかね。エゾのGクラスの時のように、ドローンでの支援などは」

 キウチの言葉に、シノノメ副長が眉根を寄せた。

 国内に出現した時、研究室が開発した竜への目潰し攻撃が初めて成功した。生きている化石とされるヒノモト国内に僅かに生存していた植物を栽培し、品種改良を加えて刺激物となる種子をつけるようになったのである。

 それを粉末状にして大気中にばらまくと、新古生物に対する効果的な牽制効果が得られる。ドローンに積んで爆撃すれば、彼女達にとって相当心強いサポートとなる、のだが。

「国内であれば可能ですが、各国にはそれぞれドローンの飛行規制がありまして。未承認の植物の成分という事で、種子粉末の持ち込みも禁止されています。協力を要請してはいるのですが……」

 ヒノモト国内であれば、その制限を課しているのは防衛省と運輸省だ。いくらでもどうにでもなる。しかし、こと外国ともなるとその反応は鈍い。

 情報産業の最先端を誇る合衆国でさえ、自国の一次産業が一つの生命線であるという事は理解している。得体のしれない植物の種子をばら撒かれては困ると思うのも当然だ。

 竜は邪魔だが、未承認植物はダメだ。DDDだけでどうにかしろ、その一点張りである。

 既存の動植物に影響がない事を証明するにしても、それには膨大な時間がかかる。世界に一体どれだけの動植物があるというのか。

「かといって、トレーニングにも限界があるだろう。あの石頭の新古生物、サンダーバード君の攻撃が殆ど効いていなかったじゃないか。あんなものがわんさか出てこられたら、とてもじゃないが対応しきれんぞ」

 実際、竜の強さは日に日に増してきている。頓珍漢な方向に進化した竜の中には、生存に不適格だろうと戦闘にはやたらと効果的な能力を得るものがいる。

 たまたまあの石頭はMクラスだったのでミサキとメイユィで何とかなったが、これがもしGクラスだったとしたらどうか。たった二人で、エゾに出たあれよりも強いものと戦うに等しい。想像して思わず縮み上がった。

「ううむ……やはり規模が大きくなれば三人だけでは厳しいかもしれんな。新規の駆逐者はまだ、見つかっていないのか?」

 アシダ副総理の言葉に、その場にいる全員が黙って首を振る。いない。いないのだ。現状、確認しているだけでは6人しかいないのである。

 方方に手を伸ばして探してはいるのだが、ミサキ達のような力を持っていれば間違いなく目立つ。すぐに見つかるだろう、と思っていたのだが、現実はそう甘くなかった。

 どうやら彼女達は本当に希少な能力の持ち主のようで、どこを探しても、彼女達と同じ力を持った人間を見つけることはできなかった。

「そうか、ならば、既存の者でどうにかするしかないだろう。今まではあちらに配慮していたが、やむを得まい。アースから人間が駆逐されるよりはマシだろう」

「と、申されますと」

 副総理の決断を意識した言葉に幕僚長が顔を上げた。

「協力体制だよ。三人で手に負えないものが出てきた場合、一旦撤退してでも、六人で始末する。それしかないだろう」

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