第20話 初任務
「ふごっ……んおっ!」
若作りの女はまた間抜けな声を上げて目を覚ました。若干、
「あっ、あー」
風呂にも入らず布団に転がって朝まで過ごした事に、彼女自身は後悔していない。兄の家なのだから何も憚ることなどないし、兄の嫁は勝手知ったる兄の友人である。
「おなかへった」
学習すること無く、彼女は寝ていた和室からリビングに続く襖を開けた。
「ああ、キョウカちゃん、おはよう。朝ご飯、食べるでしょ?座って」
「あっ、はい」
何故か狼狽えた友人の妹は、それでも素直にリビングの椅子に座った。
前日から用意していたしめじとたけのこの炊き込みご飯と、ネギを刻み込んだだし巻きと一緒にワカメのすまし汁を出す。味噌汁でも良いのだが、炊き込みご飯は仄かな味わいが、このダシ中心の醤油味なすまし汁に実に合うのだ。勿論出汁パックとうま味調味料の味だが。ついでにしらす干しに大根おろしを乗せただけの副菜もつけておいた。
「え?なにこれ。ホテルの朝食?」
「どっちかってと、ちょっと安い旅館じゃない?」
言うほど品数は無い。美味いと満足できる味と量ではあるが、そこまで豪勢なものではない。後は適当に味付け海苔と生卵でも置いておけば宿泊施設の朝食といったところだろうか。
彼女は炊き込みご飯を一口箸で口に入れると、何故かぶるぶると震えだした。
「おかしくない?なんで元男の人があたしより遥かに女子力高いの?」
女子力とは。単に飯が美味いかどうかで性別の力を決めるのは問題ではないだろうか。
「女子力とか関係ないんじゃないかな。美味しい?美味しくない?」
「美味しいよ!?ご飯はほんのり醤油味でキノコの味がじんわり出ててタケノコはコリコリしててさいっこうに美味しいし!だし巻きとかこれ、何!?普通のネギ!?」
ああ、そういえばソウが違うネギを入れていた。
「それ、ヤマシロのネギだよ。一応ブランド品だね」
味はまぁ良いのだが、クソ高いので普段はあまり買わないものだ。白ネギは他のものを買ったのだが、ソウが勝手にカゴに放り込んでいたので仕方なく使わせてもらった。
「地元のネギ!?食べたことない気がするんだけど!?」
「いや、多分時々食べてるよ。気づかないだけで」
割と紛れ込むのだ。ブランド化していても元から作ってた農家の人は変わらず近所に入れてくれているわけで。
「なんちゅうもんを食わせてくれたんや……」
「いやいや、キョウカちゃんは普段から食べてるでしょ。料理に使わないだけだよ」
彼女が気づかないだけで外食産業や出前にも値段によっては高価なものも使われているのだ。特に裕福な家の彼女の周辺に限って、それがないわけがない。
「うおー、おはよー」
適当な男が起きてきたので、順番に彼女に出したものと同じものを並べる。寝ぼけた顔をしていた男は、たちまち元気になった。
「んほっ!炊き込みご飯か!ミサキの料理はほんと毎日楽しみだわ」
いただきますと言うなり、脇目も振らずに貪りだす。これぐらい素直に食ってくれた方が嬉しい。
「というかさ、キョウカちゃん。それだけ味が分かるのになんで料理はアレなの?」
おかしいだろう。どう考えてもおかしい。味見をすればおかしいという事が分かるはずなのだ。何故だ。おかしすぎる。
「作るのと食べるのは違うから」
胸を張って言う事ではないだろう。なんだこの子。本当に、もう。30近くまでこの生き方だったのか。いや、ソウや自分の事を考えれば責めることは出来ないが。
「じゃあ、炊き込みご飯の作り方覚える?簡単だし、大体放置で出来るから」
「是非、お願いします、師匠」
先生から師匠になった。料理教室にでも行けば自分よりも遥かに高度な料理を教えてくれると思うのだが、どうにも彼女にはその発想が無いらしい。
面白くもない朝のニュースを見ながら、炊き込みご飯の作り方を適当な男の適当な妹に教える。教えることで彼女の善良な夫と可愛い娘に美味しいものが食べさせられると思うと、これはなかなか間接的に快感を得られるものだった。
「あーなんかもう帰りたくない」
「いや、帰れよ」
朝食を腹いっぱい詰め込んだソウの妹は、リビングの椅子に座って思い切り仰け反って満足げな表情を浮かべていた。
朝から都合三杯も炊き込みご飯を平らげ、作り方を学びながらこちらが月曜日からの弁当用に作っていたきんぴらごぼうを味見していたのである。それはもう腹いっぱいになるだろう。
「けど、もう、カラスマさんに三つも料理教わったもん。無敵。無敵だよこれ」
料理を教わっただけで無敵になるのであれば教えた甲斐もあったというものだ。どれも普通の家庭料理なので少しだけ恐縮してしまうが。
食べ終わった後の食器を洗っていると、キッチンのカウンターに置いたスマホが振動した。着信である。
「はい」
『カラスマさん、出動です。屋上で待機していてください』
聞こえてきた声はオオイだった。出動。そうか、出たか。
すぐに動きやすい服装に着替える。着替えながら、律儀にこちらから目を逸らしていたソウに向かって言う。
「ちょっと仕事で出てくる。帰りはいつになるか分からないから、適当に食っててくれ」
「出たのか?」
「多分。屋上って誰でも出られるのか?」
鍵がかかっていたら困る。一々戻ってくるのは面倒だ。
「出られるぞ。鍵はかかってない」
そうかと返事して、スマホと財布だけ持って出る。何かを持ってこいとは言われていない。多分、あっちで全部用意してくれる。
「え?何?カラスマさん、仕事見つけたの?日曜に?」
「ごめん、キョウカちゃん。まだ秘密だから」
言い残して外へ出た。いつものエレベーター、押すボタンは反対の上向きだ。最上階に出て近くの階段室に飛び込むと、屋上目指して駆け上がった。
「何?どうしたの、カラスマさん。お兄ちゃん」
「言っただろ、仕事だって」
取り残された二人はテレビの音声が流れる中、彼女の出て行った方を見ていた。
「コーヒーでも飲むか」
「あ、うん。お願い」
適当な男は豆の入った瓶を取り出そうとして、面倒くさくなったのか隣のスティックタイプの包みを取り出した。マグカップを二つ出して粉を入れ、ポットから湯を注ぐ。
「何の仕事してるの?」
「まだ秘密だって言ってただろ」
兄はリビングに戻ってきて、妹の前にインスタントコーヒーを置いた。
「秘密かあ。なんか、やらしい仕事だったり?」
「お前な……」
睨みつけた兄に、妹はヘラヘラと笑った。
「冗談だって。旦那がいるのにそんな事するわけないよねぇ」
茶化した妹に、兄は押し黙った。反論が来ると思っていた妹は、意外に思って聞き返す。
「え?なんか意外な反応。自覚が出たってことはつまり……」
「うるせえよ」
確信を得たキョウカは、勢い込んで顔を兄に近付けた。
「何?ついにやっちゃったの!?よっしゃ!これで甥か姪、ゲットだ!」
「あのなぁ。結婚もしてねえのに作るわけがねえだろ」
「しなさいよ、さっさと」
「……まだ戻れるかもしれないだろ」
「戻って欲しいの?」
「……」
沈黙をもって答えた兄に、妹は嬉しそうにスマホを握りしめた。
「お母さんに報告しなきゃ」
「おい、やめろ!余計なことすんな!」
ミサキが戦場へ出ようとも、彼らの言動は変わらないのだった。
結構、いや、かなりうるさい。
良く考えれば遥か上空を飛んでいても地上に音が聞こえるのだから、近くで聞けばうるさいに決まっているのだ。
風圧で髪が乱れるのを無視して、降り立った丸い乗り物に向かって進む。乗っていたのはパイロットともう一人だけで、オオイは乗ってはいなかった。
ジェスチャーでヘルメットとマイクをつけろと言われて大人しく被る。後ろに乗り込んでシートベルトを着用し、マイクを喉元につけてヘルメットを被った。音が大分マシになる。
『ナナオ駐屯地へ向かいます。ベルトは締めましたか?』
『締めました』
『では、離陸します』
一際音が大きくなり、ふわりと丸い巨体が浮き上がる。動いているのは何度も見たことがあるが、乗ったのは初めてだ。何というか、うるさい。そして案外頼りなく感じて怖い。
下を見ると割と爽快だ。自分たちの行動範囲がいかに狭いかを思い知らされる。
フライトの時間は非常に短かった。クルマなら道に沿ってしか移動できないのが、ヘリなら一直線だからである。瞬く間に広い敷地を持つ駐屯地内に着陸し、ベルトを外し、席にメットとマイクを置いて地面に降り立つ。
すぐにオオイが駆け寄ってきて、何やらやたらと長い物を手渡してきた。ずしりと重い。
「これは?」
彼女に続いて早足で歩きながら聞く。
「刀です。非常に頑丈に作ってあるので、少々乱暴に振り回しても折れません」
刀。刀って、こんなに長かったか?
柄からして長い。刀というからには両手持ちだ。そして、鞘に収まった部分はもっと長い。全長で自分の身長と同じぐらいはある。こんなもの、抜けるのか。
「これ、どうやって抜くんです?」
「柄元にスイッチがあるでしょう。押せば峰側から抜けます」
なるほど、言われてみれば小さなボタンがついている。しかし、何故刀。
「時間がありません。すぐに搭乗して下さい。二人は既に乗っています」
滑走路にはタラップのついた、針のような特殊な形状の航空機が鎮座していた。
「パルス・デトネーション・エンジン搭載の超音速輸送機、HC-1、通称『紫電』です。着陸は出来ませんので、現地についたら飛び降りて下さい」
「飛び降り、って」
ばさりと背負うタイプのパラシュートが渡される。渋々背負って前でベルトを締めた。胸の谷間が締め付けられてちょっときつい。タラップを上ってハッチから中に入ると、縦に並んだ座席には、既にヘルメットを着用した二人が座っていた。
一番後ろに座っていた搭乗員から、やはりスピーカー付きのヘルメットとマイクを手渡される。被ってマイクをつけ、空いていた一番前の席に座る。すぐに可愛らしい声が耳元から聞こえてきた。
『ミサキ!休日出勤、クソご苦労さまだ!』
『おはよう、ミサキ。さっさとあいつら、殺しにいこう』
二人は特に躊躇したりだとか、不安に思っていたりはしないようだ。
『おはようございます、二人共、この機体に乗ったのは?』
『二度目だよ。前は央華のジーリンの田舎だったよ。寒かった』
『クソ雑魚だったから助かったぜ』
口々に感想を漏らす彼女達に割って、搭乗員の声が入ってくる。
『当機はオセアーノ連邦に向けて出発します。シートベルトを着用して下さい。目標地付近になれば、ハッチを開けますので順次降下してください。パラシュートの使用方法は――』
もう、何もかも急すぎてどうでも良くなってきた。ヘリで移動したと思ったら見たこともない超音速機に乗って、オセアーノに着いたら飛び降りろと。そんで、そこにいる恐竜をぶっ殺してこいというわけだ。
やれというのならやってやろうではないか。こちらもわざわざ人類の敵を見逃してやる義理は無い。
『およそ二時間半で目的地上空に到達します』
待て。
オセアーノまで二時間半だと。一体どんな速度で航行するつもりだ。
疑問に思った瞬間、機体がゆっくりと動き出した。かと思うと、ヘルメットをしていて尚うるさいと思える轟音が遥か後方から聞こえた。
(うおお)
声には出さずに唸る。離陸時の強烈なGが終わった後、すぐに似たような衝撃が身体にかかる。これ、鍛えてる人間じゃないと耐えられないのではないか。確か輸送機と言っていたはずだが。
潰されるかと思ったが、時間が経つとそれも収まった。振動と轟音はそのままだが、身体にかかる力は感じなくなった。
『帰りはどうするんですか、これ』
着陸はできないとの事だが、降りた場所からどうやって帰れば良いのだろうか。まさか民間飛行機に乗って帰ってこい、なんてことはないだろう。
『別の輸送機を現地付近に送ります。飛行場から、行きと同じ機体に乗って戻ってきて下さい』
流石に自分たちで帰ってこい、は無いか。パスポートだって持っていないのだ。不正入国に不正出国である。多分、国家間の約束による超法規的措置だろうが。
しかし、と考える。ヒノモトからオセアーノまで二時間半は、速いとは言え迅速とは言い難い。二時間半も経ってしまえば、出現した場所は全滅してしまうのではないだろうか。
無論の事、放って置くよりはずっと良い。兵器も何も通用しない猛獣が闊歩しているというだけで、そこは人間の近づける領域ではなくなってしまう。だとしても、これだけ時間をかけてしまえば助かる命も助からないだろう。
しかもこの二時間半、というのは通報があって出動要請がなされ、自分たちがこの超音速機に乗ってからの時間である。現地への降下時間等、総合的に見れば三時間は経ってしまうだろう。三時間もあれば手の込んだ料理が二品も三品も作れてしまう。
ただ、考えても仕方がない。各国の偉い人がそれで良いと決めたのだ。自分がどうこう言ったところでどうにもならない。自分はただ、後ろに座っている二人と一緒に、竜を駆逐すれば良いだけだ。それが仕事なのだから。
気を紛らわせたくて外を見たくとも、この航空機には窓がない。超音速という事だから、衝撃波なんかを考えると機体を堅牢にせざるを得ないのだろう。
『暇だなー。なぁ、ミサキ。休みの日は彼氏とヤリまくりなのか?』
『ジェシカ……』
いきなり何てことを言い出すのだこの娘は。いくら暇だからってそのような。乙女としてあるまじき言動ではないだろうか。
『なぁ、いいじゃねえか。クソ暇なんだよ』
『いや、してないですよ。夜だけです』
『夜はするんだ……』
聞いていたメイユィが震える声で呟いた。骨伝導マイクなので小声でも丸聞こえなのである。
『ハーッ!すげえなクソ!クソだぞ!ファック!』
まるで意味がわからない。感嘆詞をそれしか知らないかのようにシットシットファックファックと連発している。嫉妬か。
『ジェシカ、その、もう少し言葉遣いを丁寧にですね』
ハッと気付いた。これ、パイロット二人と搭乗員も聞いているのではないか。しまった、迂闊に何てことを。
『男性も聞いてるんですから、これ、一般的にはセクハラになるんですよ』
『なんだよセクハラって。エロい言葉か?』
『二人が何を言っているのかわからない……』
そう言えばセクハラはヒノモトの略語だった。
『性的嫌がらせの事ですよ。防衛隊員の方が困ってしまうでしょう?すみません、皆さん』
○○ハラ、というのは大抵がヒノモトで作られた造語だ。連合王国語では別の表現になる事の方が多い。
謝りはしたものの、彼らからの返答は無い。恐らく呆れて何も言えないのだろう。
『ヒノモトってのはクソ面倒くせえ国なんだな』
『貴女の国でも同じです。寧ろヒノモトより合衆国の方が神経質ですよ』
一体自分はこの金髪美少女に何を言っているのだろうか。何故こんな雲の上でセクシャルハラスメントの教育をしなければならないのだろうか。
暫くの間、ジェシカがああだこうだと喚くのを聞き流して、時にはツッコミを入れているうちに、時間は過ぎていった。
『歓談中の所失礼します。当機は間もなく目標地点上空に達します。出撃の準備をお願いします』
来たか。しかし、飛行機から飛び降りるとか初めての経験だ。大丈夫なのだろうか。というか慣性とかちゃんと諸々計算して目標地点に降りられるのだろうか。不安で仕方がない。
ハッチが開いて物凄い風が機内に吹き荒れる。一番後ろの隊員は座ったままだ。当然か。
『降下タイミング、五秒前』
え、そんなにすぐ?心の準備が。
『二、一』
無常にもカウントは終わり、ハッチから身体を投げ出した。
凄まじい風圧だ。耳元で物凄い風の音が聞こえていて、他には何も聞こえない。
空気が薄いはずだが、特別息苦しいという事は無い。気温も低くて凍えそうだが、我慢できないという程でもない。
周囲を見渡すと、大分離れた上空に二人がいる。あまり近いとパラシュートが絡んでしまうのだったか。
高さがあるせいかあまり落ちているという感覚はない。ただ、風に持ち上げられているという感覚があるので、これは確かに落ちているのだろう。ビルの五階から飛び降りた時よりも強い浮遊感がある。
胸元で規定の高度を知らせるアラームが鳴った。思い切り紐を引っ張って傘を展開する。がくんと引き止めるような、引っ張られるような感覚があって、落下速度が急激に緩やかになった。
ゆっくりと地面が近づいてくる。周辺はほぼほぼ荒野ではあるが、片側一車線の道路が赤土の上にまっすぐ伸びている。
南半球の太陽の位置から見て、道路の北側にはいくつか建物が見える。住宅も多くはないが、広い間隔でそれなりの数がちらほらと建っている。典型的な田舎の村の光景だ。
村の東側には比較的大きな川が走っており、道路に繋がる橋もかかっている。道路の南側、土と低木が剥き出しの地面に両脚で着地した。すぐに肩からベルトを外し、パラシュートから離れる。
近くに恐竜らしき姿は見えない。道路の北側には二階建てのモーテルが建っており、小さめのトラックが一台、表の駐車場に止まっている。人の気配は無い。
少し離れた場所に続けてジェシカとメイユィが降り立ってくる。二人共こちらと同じようにベルトを外すと、すぐに近寄ってきた。風があって多少は流されると思うのだが、こんなにすぐ近くに降りられるものなのか。
ジェシカは両腕に大きな手甲を付けており、メイユィは布に包まれた長い棒を持っている。これが彼女達の武器なのだろう。
『見えている範囲にはいませんね。北側でしょうか』
『あぁ、いるぜ。クソ野郎の気配をクソ感じる』
『いるね。わかる』
わかるのか。自分にはあまり良く分からない。だが、先程から心拍数はそのままに、血圧や体温の上昇を感じる。彼女達もこれを感じているという事だろうか。
メットが邪魔なのでマイク共々パラシュートの上に置く。日差しはあまりきつくない。寧ろ寒い。遮るものが殆ど無い場所なので、吹き付ける風が体温を奪っていこうとする。恐竜とは爬虫類と同じく変温動物だったと思ったが、この気温でも動き回れるものなのだろうか。
抱えていた刀を背中に回して担ぐ。鞘に帯がついていたので、解いて身体に括り付けた。
『モーテルの裏から北側の住居を探します。ジェシカは右側前方、メイユィは後方を警戒しながらついてきて下さい』
メイユィはわかったと答えたが、ジェシカはちょっと不満そうだ。
『面倒くせえな。ぱっと行ってぱっと片付けりゃいいじゃねえか』
それが出来るならそうしたい。だが、相手の数も大きさもわからないのである。
『単体で対処出来る相手だと分かっているならそうします。現状、情報が何もありません。警戒するに越したことはありません』
そう言うと彼女も渋々従った。
風の影響下少し歪んだ大きな木の脇を通って、モーテルの裏側へ出る。何も無いように見えるが、どうもおかしい。
『誰もいませんね。死体の跡も無い』
『食べられちゃったんじゃないの』
まるごとがぶり、ならそうだろう。サクラダ駅に出てきたようなサイズであれば考えられる。だが、あのように大きければ、この見通しの良さだ。どこからでも見つけられる。それはないだろう。
『消防署があります。近くで一番大きな建物はあれですね。まずはあそこを調べましょう』
周辺の見通しは良い。警戒するといっても建物の影ぐらいだ。故に、まずは目立つ場所から探索する。早足で近付き、大きな消防車のある駐車場へと近付く。
いる。
駐車場に置いてある乗用車が破壊されている。サクラダの時のようにぺちゃんこに潰されているというわけではないものの、ひっくり返って天井部分がぐしゃりと潰れている。思い切り何かでひっくり返され、その上から踏みつけられたという感じだ。
アスファルトで固められた周辺には赤黒い大きな足跡がいくつもついており、既に何人かが犠牲になった事を示している。
『足跡の大きさを見るに、Mクラスでしょうか』
鳥モドキよりは大きい。トカゲの王よりは小さい。
『あぁ、多分、二匹だぞ、これ』
ジェシカが言う。確かに、良く見れば違う方向を向いた足跡が重なっている部分がある。並んで移動したような、そんな動きだ。
痕跡はもう大分乾いており、かなりの時間が経っている事がわかる。まだこの近くにいることは間違いないはずだが。
やや警戒しながら消防署に近付く。近隣の村に対処するためなのか、建物自体は大きい。それなりの職員がいただろうが、今の所人の気配は無い。全て殺されたか、上手く逃げおおせたか。
シャッターのある、二階まで突き抜けた大きな屋内駐車場が見える。金属で作られていたはずのそのシャッターは大きくひしゃげ、半分開いた状態で、空っぽの中身を見せている。
足跡の大きさから見るに、恐竜が侵入したとすればここだろう。少し回り込んで中を良く見ようとした時だった。
『きやがったぜ!クソファッキンが!』
中からではない。消防署の裏手、ジェシカが警戒していた右前方、建物の陰から、高さ3メートルはあろうかという巨大なトカゲが姿を現した。
二本足で立つそのトカゲは、奇妙な顔面をしていた。
ぞろりと並んだ鋭い歯は肉食恐竜のそれだが、ぎょろりと大きな目の上には瞼が変形したのか、尖った角のような皮膚が飛び出ている。
そいつはこちらに狙いを定めると、姿勢を立ち上げて大きく口を開けて威嚇した。退化して小さくなった前脚に鋭い爪が光る。
『殺す……殺す……』
メイユィが持っていた武器の布を取り払った。先端に鋼鉄の刃が取り付けられた、見るも無骨な大槍。彼女はそれを大きく振り回すと、左手を添えるような格好で恐竜に向けてピタリと止めた。深く腰を落として構えている。
『行くぞオラぁ!』
ジェシカが先手を切って突進した。真正面から行くのか。
制止する間もなく、超高速で飛び出した彼女は、思い切り跳躍して、両手の手甲を合わせたまま、ハンマーのように腕を振り下ろした。
恐竜の頭部に当たるかとおもわれたそれはしかし、軽くのけぞって躱された。彼女は気にせず懐に潜り込むと、裏拳を思い切り恐竜の腹に叩き込む。どすんという鈍い音がして、角トカゲは僅かに
すぐにその鋭い牙の並ぶ口を彼女に向けて振り下ろす。だが、ジェシカは軽くステップを踏んで横に飛び退いた。
どばん、と隣で音がした。
アスファルトを抉り取らんばかりの踏み込みで、巨大な槍と一体となった黒い小さな身体が奔る。
電撃のような突進が、角トカゲの腹部に突き刺さった。重量のあるものが落ちた時のような激しい音がして、恐竜が甲高い悲鳴を上げる。
視界の端で何か動いた。消防署の駐車場だ。
『そいつはそちらに任せます!』
一声叫び、背中の柄に手をかけてスイッチを押す。かしゃん、と軽い音がしたのでそのまま引き抜くと、背側から分厚い刀身が目の前に現れた。
(これ、本当に刀か?)
刀、と言われればそう見えなくもない。だが、反りは殆ど無く、どちらかと言えば片刃の大剣のように見える。
ギラギラと冬の日を照り返す銀色の刃は光沢が少なく、いかにも頑丈さだけを重視しました、というイメージを受ける。
悠長に刀を眺めている暇はない。仲間の悲鳴を聞いてこちらに駆け寄ってきた同じ角トカゲに向かって脇構えに取ると、そのまま横薙ぎにして刃を顔面に向かって叩きつけた。
ばぎんと硬いものがぶつかる音がして、角トカゲの歯が纏めて十数本、折れて飛んでいく。顔面を狙った一撃は開いた口にぶち当たり、ぶつかった歯と上顎を纏めて切り裂いた。
思った以上に斬れる。今までは鈍器で殴っていただけだったが、刃を立てて思い切り殴りつけるだけで、斬れる。斬り裂ける。
咆哮をあげた角トカゲに向かって距離を縮め、今度は無防備な後ろ脚を薙ぎ払った。
分厚いゴムを斬ったような感覚がして、めり込んだ刃は骨ごと恐竜の脚を両断した。バランスを失ったトカゲは身体を崩す。落ちてきた首元を狙って、回転して戻ってきた刃を三度、叩きつけた。
ぼん、と首が飛んだ。ゆっくりとした視界の中、血管や神経、頸椎や消化菅が剥き出しになった首の切り口から血が吹き出してくるのが見える。かかってはまた血まみれになるので、恐竜の反対側に走り抜けた。
遅れて巨体が音を立てて倒れ伏す。後ろ脚と首を失った巨体が、アスファルトの上に赤黒い染みを作った。
振り返ると、二人の方も片がついたようだった。角トカゲは哀れにも全身をぼこぼこと凹まされた上に、体中を穴だらけにして全身から噴水のように血を吹き出している。
『ジェシカ、メイユィ。もういいです。そいつは死んでいます』
返り血で服を赤黒く染めた二人は、その言葉で我に返って手を止めた。立ったまま、一方的に攻撃されていたそいつは、漸くその役目を終えて横倒しになった。
『ミサキ、そいつは一人でやったのか?すげえな』
それには答えずに、持った刀を見る。
1メートルはあろうかという長大な刀身に、重量を稼ぐためか分厚くなった峰。これは切れ味で断ち切る、というよりも、怪力と重量で押し斬るという使い方のもののようだ。央華包丁のようなものだろうか。意外と自分には合っているようだ。
『ミサキ、もう周辺にはいないみたいだよ。何も感じない』
メイユィの言葉に頷いて、血払いをした刀を鞘に戻す。かちりと音がして、再びロックがかかった。しかし、これは後で手入れをしておかなければならないだろう。血糊がついてしまった。
『一旦パラシュートの所に戻りましょうか。終わったことを報告しないと』
ヘルメットには連絡装置がついている。邪魔なので置いてきたが、あれにはGPS発信機がついているのだ。
歩いて降下した現場に戻ると、メットの裏に付いていた任務完了報告用のスイッチを入れた。オレンジ色のLEDが緑に変わり、ピッと音を立てた。
『すごいね、ミサキ。なんかすごい落ち着いてるし』
『そうだな。オレ達、最初はわけも分からずぶち殺して、どうしたらいいのかうろうろしてたし』
単に移動中に説明されていた事をしただけだ。別に特別な事はしていない。ただ、戦っている時の彼女達は少し危険だった。
自分が以前、あの鳥モドキやでかいトカゲと戦った時にそうだったように、本能のまま竜を叩き潰す事しか考えていないように見える。何故か今回は体温の上昇や昂ぶりも感じたものの、至極冷静に屠る事が出来た。以前のような興奮状態にはなっていない。
『年の功でしょうね。二人共いずれ同じ様になりますよ』
本当にそうだろうか。自分はどこか彼女たちとは違うような気がする。それはこの身体になった経緯か、それとも何か別の要因か。
『歳?歳っつっても、オレらとそんな変わんないだろ?』
『一応私は20歳ですよ』
という事になっている。精神年齢としては実際にはもっと上なのだが、マツバラがそのようにして健康診断を受けさせたため、検査のデータ上もそうなっている。多分オオイもそのように認識しているはずだ。
『20!?え、そんな、年上だったのかよ!?』
『わかるよ、だってすごく落ち着いてるもん』
メイユィは兎も角、背の高いジェシカは激しいショックを受けたようだった。確かに白人が東洋人を見ると年下に見えるとよく聞くが。
『そうだよな、だってもう男がいるんだし……そうか、年上か!焦ってクソ損したぜ』
成る程、彼女が妙にこちらの男の事を聞きたがるのは、同い年ぐらいだと思っていたから先を越されたと思って焦っていたのだ。実に可愛らしい理由である。
どこかスッキリした顔をしている二人は、昼に何を食べるかとかこちらの男がどんな顔をしているかとか他愛もない話をしている。そうこうしているうちに、北の方角から垂直離着陸機の編隊がやってきた。
『あれは、合衆国の軍ですね。オセアーノに?』
特徴的な形状をした垂直離着陸機は、ステイツとヒノモトにしか配備されていない。ヒノモトにあれだけ沢山の数が配備されているはずがないので、どう見てもあれは合衆国の海兵隊だ。
回転翼機の特徴を持つため離着陸に場所を取らないのと、通常の固定翼機のように長い航続距離を持っている優秀な中型輸送機である。ただ、事故が多いだとかなんとかで一時期大きく騒がれていたような気はするが。
実際に事故が他と比べて極端に多いのであれば、合理性を重視する合衆国の軍が採用するはずがないので、自分はそれほど気にしたことは無かった。確かに操縦は難しそうに見えるが。
航空機は道路の南側の荒野に、次々と着陸してくる。やはり離着陸時は回転翼機だけあって非常にうるさい。これはもうどうしようもないのだろう。
旗艦機と思しき航空機から、金色の葉の階級章を付けた男が降り、二人の士官を連れてこちらへやってきた。他の機からはぞろぞろと降り立ってきた海兵隊員が、隊列も作らずにバラバラと消防署の方へと走っていく。
『はじめまして。ステイツ海兵隊少佐のブライアン・バンフィールドです。DDDの方々ですね?基地までお送りするように言われています』
非常に背の高い、鼻梁が高く彫りの深い顔をした男だ。自分とは大人と子供ぐらいの身長差がある。
『はじめまして、お会いできて光栄です、バンフィールド少佐。DDD所属、ミサキ・カラスマです。後ろの二人はジェシカ・サンダーバードと、ジュエ・メイユィです』
代表して握手をすると、彼は少し驚いたようだった。
『宜しく、ミサキ。美しいクイーンズですね。どうぞ、あちらの機内で少々お待ち下さい。我々は竜の死骸の運搬も請け負っておりますので』
『ありがとうございます、少佐。二人共、行きましょうか』
言われた通り、示された機に近付くと、一人の士官が恭しく席を示した。少し肩をすくめてありがとうと言って、並んで着席する。
『なあ、ミサキ。なんであのオッサン、驚いてたんだ?』
いきなり海兵隊少佐をオッサン扱いのスラング呼びである。この子に喋らせなくて良かった。
『多分、背の高いジェシカが代表者だと思ったのでしょう』
『ふっ……ジェシカじゃ無理だね』
『なんだと』
二人は微笑ましいじゃれ合いをしている。だがまぁ、メイユィの言う事は妥当だ。作戦の指揮官をオッサン呼びでもしようものなら、いきなり失礼な小娘扱いをされてしまう。各国の軍とは出来るだけ良好な関係を築いていかねば、悪くすれば中々帰してもらえないなどという事にもなってしまう。それは困る。
『それはそうと、ミサキが言われてたクイーンズってなんだ?美しいって事は、文字通り女王って事か?』
連合王国語圏なのに何故知らないのか。
『本家ヴィクトリアの発音ってことですよ。私の連合王国語はそっちから学びましたので』
ここオセアーノにも、合衆国にも、本家から見ればそれぞれ特徴のある訛りがある。会話に支障は無いが、気難しい連合王国の年寄りなどはそれだけで田舎者扱いすると聞いたことはある。実際は知らない。
『連合王国語、スラング多すぎてわかりにくい』
メイユィは普通に聞き取れているようだが、特殊な表現には明るくないようだ。あまりジェシカの言葉を覚えられても困る。
『メイユィは連合王国語が上手ですよね、どこで覚えたんですか?』
『ホンハイは連合王国人が多いから、勝手に覚えた』
『ああ、それで発音がクイーンズに近いんですね』
央華語特有の癖はあるものの、その発音は本家のそれに近い。なので、どちらかと言えば合衆国でも粗野な部類に入るジェシカの言葉が聞き取り辛いのだ。
『発音は兎も角よ、大体わかる連合王国語と違ってヒノモト語とか央華語は全然わかんねえよ、なんつうか、根っこから理解できねえ。アニメ見てるとカワイイ言葉だなって思うんだけどさ、さっぱりだ』
カワイイの所をとても可愛らしくヒノモト語で発音するジェシカ。以前聞いて知っていたが、彼女はヒノモトのサブカルチャーに興味があるようだ。
『それじゃあ、暇な時にヒノモト語を勉強してみますか?字幕無しでアニメを見られますよ』
『えっ!?そりゃあ字幕無しで見れるんだったらクソ嬉しいけど……でも、なんか難しそうでさ』
確かに全く違う性質の言語を一から習得するのは骨が折れる。だが、興味のある事から入れば頭には入ってきやすいのだ。それに、自分がそうだったように彼女たちも学習能力は非常に高いはずである。
思えば記憶喪失から数年で日常生活を自然に行えるようになっているのである。基本的な記憶野が生きていたにしろ、普通は相当に時間がかかるはずだ。つまり、彼女たちも自分と同じく脳の出来は非常に良いと思われる。
『好きなことならすぐに覚えますよ。ジェシカは賢いんですから。それに、ヒノモト語を覚えて丁寧に話せるようになれば、外出許可も降りるかもしれませんよ』
『え?そうか?オレ、賢いか?』
『ジェシカが……賢い?』
怪訝そうな顔をして呟いたメイユィの頭を撫でる。
『メイユィもやってみますか?トレーニング機器が入るまで暇でしょう?』
やってみたい、と顔をほころばせた彼女に癒やされる。これでトレーニングと料理以外にやることができた。時間は有効に使わねばならない。
『大変お待たせしました。これよりダルヴィンへと向けて出発します』
ガタガタと前方が騒がしくなり、コックピットかららしい音声が搭乗している部屋の中に響いた。
『ダルヴィン……ああ、海兵隊の基地があるところですね』
今いる場所から北東へ140キロメートル程離れた場所、海岸線の近くにオセアーノ連邦の軍事施設と共に、合衆国海兵隊の駐留基地が置かれている。確か空港もあったはずだ。
『ミサキ、良く分かるなそんな事』
『暇な時に地図を眺めていたんです』
『眺めてるだけで覚えるようなもんなのか?』
環パシフィックを飛び回るという事で、各地の地理は大体覚えておいたほうが良いだろうと、暇な時にネットで調べていたのだ。特に大使館と空港、港のある場所は覚えておかねば、万が一の時に帰れなくなってしまう。
垂直離着陸機は大きな音を立てて飛行を始めたが、暫くして音は大分静かになった。固定翼での航行に切り替えたのだろう。
『皆さんは何というか、普通ですね』
最初に席を案内してくれた士官が薄く微笑みながら話しかけてきた。階級章を見れば少尉である。
『普通ですよ、ちょっとだけ恐竜を倒すのに特化してるだけで』
彼が言いたいのは、まるで普通の少女のようだ、という事だろう。
誰だって、どんな兵器も通用しない正体不明の巨大な生き物を殺す者とは、一体どのような存在なのかと想像を巡らせるに違いないのだ。
普通はゴリラみたいな人間か、或いは戦闘機械のようなものを想像する。可愛らしい美少女達がきゃいきゃい言いながら会話している現状からはかけ離れたイメージだ。
『困りましたね、ファンになってしまいそうです』
『是非、応援して下さい。我々も軍の支援無しに活動できないのですから』
そう、できるだけ仲良くしておくに限る。関係が良好であれば連携も取りやすいし、いざという時にちょっとだけ便宜を図ってもらえるかもしれない。
『ファンクラブを作ったらお知らせしますよ。ただ、我が国出身の女神は少しだけ口が悪いですが』
『海兵隊もそう変わりは無いのでは?』
『これは、してやられました』
実際在ヒノモト海兵隊には割と粗野な人間が多い。最近はどうだか知らないが、言葉遣いも結構荒い。だがまぁ、この程度はただのジョークだ。
適度に雑談を交えながら時間は経過し、航空機は軍事施設内の空港へと降り立った。
『あー、腹がクソ減った』
『私も……』
『困りましたね、軍事施設内で食事は……』
食堂はあるにはあるだろう。だが部外者が利用して良いかどうかはわからない。
降りた場所で困り果てていると、ヒノモトの防衛官がこちらを見つけて走り寄ってきた。
「皆さん!任務お疲れ様でした。すぐに戻られますか?」
ここからまたヒノモトまで戻れば二時間半以上かかってしまう。その前にどこかで腹ごしらえをしないと、二人が暴れだしそうだ。超音速機が墜ちてしまっては困る。
「先にどこかで食事をしたいのですが、どうすれば良いでしょうか?」
彼もこちらが昼抜きで動き回っていた事を思い出したのか、ああ、という顔になった。
「それでしたら、隣接する空港内にレストランがありますよ。こちらは出発はいつでも結構です。DDDの皆さんは、基地内には自由に出入り出来るようになっていますので」
「そうですか、ありがとうございます」
こちらもかなり空腹だ。朝食に炊き込みご飯を食べたものの、もう昼をずいぶん過ぎてしまっている。
『二人共、隣の空港で食事をしてから帰りましょうか』
『やった!飯だ飯!』
『おなかへったー』
財布を持ってきているので大丈夫……かと思ったが。
『しまった、オセアーノダラーなんて持ってませんね。カード、使えるでしょうか』
『あん?空港内で両替すりゃいいんじゃねえの?』
ああ、そうか。ダルヴィン国際空港は国際空港だった。
『そういえばそうですね、お腹が減って頭が回っていませんでした。ありがとうございます、ジェシカ』
しっかりしてくれよ、と彼女は笑った。これからはこういった事も増えるだろう。慣れておかなければならない。三人で隣接する空港に向かって、我先にと走り出した。
どちらにせよ腹を空かせた大食娘三人分ともなれば現金では足りなかったので、クレジットカードで支払った。領収書はしっかりと貰っておいたので経費として申請しておこう。
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