集う幻魔
第1話 8人の子供
私は頭が回っていなかった。
最後の8人?なんだそれは。いや、そんなことよりまず幻魔って何なんだよ。
とにもかくにも、詳しく聞かなればならない。
「・・・教えてください。幻魔について。最後の8人について」
私が聞くと、神は長い話をし始めた。
「幻魔。それは、人の想像力が生み出した強い力を持つ特殊生物。特殊と言っても、基本はみんな人らしい。しかし想像力から生まれただけあって、火を容易に扱ったり、自己回復ができるやつがいるなど、並外れた能力を持つ」
そういう者は大抵、本やゲームの中だけに存在している(はず)。それらは全て、人間が楽しく考えて生んだ想像上の生き物だ。その、私を楽しませてくれる本やゲームに登場する生物を幻魔、というらしい。
「君達と少しずれた世界に、幻魔が住んでいる。幻魔界と人間界は、互いにいい距離で過ごしてきていた。しかし、ある日。ちょうど12、13年前」
松ノ殿がうつむき、トーンを落として言った。
「幻魔界にある、とある倉庫。その倉庫には、'想像の核’というものが存在しているのだが、それが突如として消えた」その個数を数えると、8個。
「想像の核は、幻魔を産むのに必要不可欠のいわば、エネルギーだ。想像力を働かせるたびに成長し、やがて幻魔としての命が誕生する」
由紀ちゃんが、信じられないとでも言う様に驚く。
「そんな・・・、大事なものを失くした・・」
「同じ頃。人間界の生命を産む場所、つまり赤ちゃんが形成される場所に、想像の核が現れた。残念なことに、神々が気づく前に、その日 魂 として誕生した8人の子供の体内に、一つずつ核が入ってしまった。後に赤ん坊の検査をしたところ、8人とも全員幻魔の要素を受けついでいた。生命の神である私は、責任を取らされた」
松ノ殿は、どこか申し訳なさそうに話している。こんなことに巻き込んで、少しは罪悪感を感じているようだった。
「そして私は、上司の神に言われた。『生命として生んだからには、ただで消すわけにもいかん。親となる者も、とても楽しみしている。だから、この者たちがある程度大きくなり、人間としての暮らしを全うした頃にそなたを派遣する。その時、彼らに彼らの正体を伝えるのだ』と。そういうわけで、私は人間界にやって来た。そして、君たちに出会い、今こうして話している」
とりあえず、話に一段落ついたようだ。深い事情があるのは、判った。しかし。
「じゃあ、最後の8人とはなんですか。私の他にも幻魔がいるということ?」
神はうなずいた。
「そう。あと7人、この地球に生存している。その7人が今どうなっているのかは、私にもわからん」
私は少し気持ちが軽くなった。仲間がいるだけでも安心するとは、こういうことなのかな。
「そして。最後、というのは・・・」
松ノ殿はもったいぶっている。
その様子に、怪しさを感じなくなっていた。さっきまでは、何もかも怪しいと目をつけていた松ノ殿のことが、少しに気に入っていた。
「その日生まれた、幻魔の命が丁度8人。そして、その日からめっきり生命が誕生しなくなってしまったのだ」
最後の8人の幻魔の子、で 最後の8人 ということか。
「今更ですまないが、これを知ったからには幻魔としても生きてもらう」
「!!!」
選ぶ権利は無いということか。
「どうして?人間のままじゃダメなんですか」
由紀ちゃんはずいぶんとがっかりして聞いた。
でも、少しわかる気がする。本当に由紀ちゃん(達)が誕生してから、生命の発生が無いのは、ある意味重大なことだ。地球がそうでもあるから。
でも松ノ殿は、私の思ったのと違う答えを返してきた。
「・・・君を生かした理由は、実はもう一つある。でも今は、話すのをやめておこう。まだ君達にとっては刺激が大きすぎる」
私はその話題の終わらせ方に納得できず、強く迫った。
「なぜですか!それでは、お引き受けできないじゃないですか!もしかしたら、私も幻魔かもしれないんですし!」
彼はハッとして、それからまた言った。
「そうだな。確かにそうだ。これも話しておこう。もう一つの宿命と、その全てを」
彼は再び語り始めた。
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