トラベルゲート

無二六弐ムーニー

「開門」

人は誰しも心の中に扉がある。

固く閉じられた扉。

簡単に開けられる扉。

秘めた思いの扉。


簡単に開かない心の扉は自分自身で開くのは非常に困難であり、いくら仲の良い関係であっても扉を開くきっかけになることは少ない。

しかし、同じ扉を持ったものであれば解決できることもある。


それを信じて少女は走った。



2578年

6月2日。

地球の生命は1%以下となった。

人々が起こした資源の消費、生き物の乱獲、

文明が進んだことによる核実験、人間同士の争い。

しかし、問題視されていたそれらの事象のせいでは無かった。原因を知るものはこの地球にはもういないであろう。この地球に住む人類も滅びてしまった。たった一人の少年を残して。


少年

「…」


少年は一人彷徨う。

さら地となった場所をひたすらに歩いている。かつてあったショッピングセンター、魔法訓練所、映画館、喫茶店、ロボット製造工場。様々な見知った建物は消え去り、見知らぬ空の色となった。空は青ではなくまるで宇宙が近づき宇宙の色と言うものが見える程、幻想的でこの場所にはとても似合わなかった。


少年は星の下、自分の帰る家を探し歩き続ける。そして、1つ町の都心部にかつてあった巨大な建物にたどり着いた。全ての建物が無くなったはずのこの世界でその建物1つ、たたずんでいた。そして、その近くにあったはずの家へと続く商店街などの道は跡形もなく消え去っていた。当然自分の家があったところも何もなくなっていた。少年は悲しみよりも虚無感を感じ目の前の建物に入ることにした。


そして、中にはいると自分より小さな少女が床に倒れていた。


少年

「…っ…」


少年は少女に近づき呼吸を確認する。

呼吸は正常で寝ているだけの様にも見えるその横顔をまじまじと見つめる。


少年

「……」


少年はその場所から少女を抱えあげ近くのソファに移動させる。

目元にかかってしまった髪をかきあげてあげ、呟く。


少年

「姉さん…」


目の前に寝る少女に実の姉を重ねて。


ーーー


建物内を探索すると大きい研究所だということが見てわかる。異世界技術の研究。異世界の魔法や魔力、禁忌や理、事象や地形、生き物のサンプルや遺伝子情報の研究書類やデータなど、数えきれない材料が無数にあった。


そして、研究所内を歩いていくと「関係者以外立入禁止」と書かれた部屋があった。

その扉をあけると明かりが自動で付いたので、奥へと進んでいくと、カードキーを差し込む式の扉が現れる。

少年は研究室の書類に挟まっていたカードキーを使いなんとか入った。

するとそこには地下に続く用のエレベーターがあった。

少年はエレベーターに乗り地下へと移動した。

下へは一気に加速し体が何となくふわりとした感覚に陥る。


1分程だろうか。長い長い浮遊感の中、何も考えずボーっとしていると地下に着いたみたいだ。扉が開くのと同時に目映い光が差し込んだ。


少年

「っ…!」

              ・

そこには無限にも広がる様々な扉が広がっていた。そこには重力など関係なく宙に浮いている扉があり、全ての扉が閉じている。

少年は息を飲み前へと踏み出す。この一歩から何もかもを無くした少年の全てが始まった。

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