基本装備魔女っ子セット

 ボク、魔王のマオです! こっちはとりあえず作成した魔女っ子セット!


 黒くて赤いリボンのついた大きめのとんがり帽子! 通気性バツギュンの黒マント! ゴシックぽいデザインのワンピとショートパンツ! そしてブーツ!


 城にある布を譲ってもらいました。洗濯魔術で衣服やカーペットを洗浄し、お掃除魔術で窓とか綺麗にして対価としてもらいました。


 メイドが泣いて喜んでいたのでついでにメイド服ももらいましたブイ。これでコスプレできるね! デザイアメイロのメイドのコスプレなんて誰もわからないけど!


 メイド服は置いておいて……魔女っ子装備セットなのだ!


 付与されてる魔術はとんがり帽子は日差し除けの効果で日焼けをしない。黒マントは体温調節機能とちょっとした収納魔術、ワンピとショートパンツは魔力を注いだ瞬間、身体能力強化が施される魔術、ブーツは空中を歩行できる魔術を仕込んでみました。刺繍で魔術的意味を刻み込んであるから、丸ごと破れない限りは効果は発動できる。


 制作期は徹夜で三日。


 ゴシック衣装なんて高くて買いづらいし、もったいない上に着るのが怖くて衣装棚の番人になっちゃうからなぁ。これは着れるぞぉ。


 さて、早速着る。


「――へへん」


 さすがボク。魔女っ子マオちゃんとして超似合う。いやぁ、たまには化け物扱いの魔女じゃなくて、コンパクトに変身できるタイプの可愛いのに憧れるよね〜ボク魔王だからこういう格好コスプレでしかしないんだけど。


 鏡の前でくるくる全身を確認しつつ、指を鳴らして風を起こす。


 うん、スカートめくれてもショートパンツあるから恥ずかしくないネ。


 非戦闘装備だけどちょっと丈夫にしただけのジャージよりは戦えるだろう。ちなみにジャージはボロボロのまま保管してある。


 ま、ポリエステルとかあるかもつくれるかもわからないから補修もできないし、帰ったらたぶん新しいものを買うだろう。とりあえず、元の世界のものだから取っておくだけで、元の世界に帰れたらどうするか決めようかなってことで。


「杖よっ」


 指を鳴らして手をかざす。手品マジックのように杖が出現した。いや魔術マジックなんだけど。マントに仕込んだ収納魔術で、しまっていた杖を呼び出す。


 うん、うまくいったな。


 杖は木材を削って作ったただの棒だ。魔術を効果を高めてくれるが、ただ肩までの高さがあるただの棒、という見た目しかしていないし、杖という存在そのものが魔術の効果を補助してくれるので、ほぼ無加工だ。床が傷つかないように靴下のように布を履かせている。


 これで場しのぎの試作の装備一式が完成したし、軽い性能テストがしたいところ。


 ……せっかくだから練兵場に行こう。







 練兵場は城のすぐ外にある。正方形の広いスペースで実戦や打ち込み、素振りなど、様々なことが行われる。


 今はガリアが実戦形式で兵士を鍛えているようだった。


 兵士はみんな打ちのめされた後のようでヘトヘトだったが、ひとりだけ打ち合ってる人物がいた。


 デザイアメイロの主人公だった。


 うーむ。攻防が速すぎて全然わかんない。とりあえず主人公のほうが劣勢ぽいな。


「ガリアー!」


 手を振って声をかけてみる。ガリアは一瞬だけ視線をボクに向けてから、顔ごとボクに向けて二度見した。


「は? え? マオ殿!?」

「隙ありですよ!」


 あんぐりと口をあけるガリアに木剣が迫る。

 ガリアはこちらを見たまま剣撃を受け流し、体勢を崩した主人公の背中に一発入れた。


「勝利が見えたときが最も脆いのだぞ、アルフ」

「ま、参りました。ガリアさん」


 あ、主人公初期ネームアルフなんだ。良かった「ああああ」とか「トゥンヌラー」とかじゃなくて。


 ボクはふたりに歩み寄る。


「ガリア。どうだい、ボクの装備」

「最初の服と大違いだな。可愛らしいぞ。とても似合っている」


 優しい声音でボクの肩を軽く叩く。ボクは胸を張った。


「ふふん、苦しゅうない」

「ところでこんな男臭い場所にどうしたのだ? まさか剣術を習いに来たわけではあるまい」


 ボクは指を立てる。


「模擬戦をしてほしいんだ」


 立てた指をぱちんと鳴らし、右側に杖を出現させ、それを持つ。


「誰かお相手になってもらえるかな?」


 アルフに目を向けつつ、話をしてみる。ガリアは少し考えた後、アルフに顔を向けた。


「うーむ、アルフ殿。マオ殿と戦えるか」

「ガリアさんはいいのか」

「あぁ、若い者の経験のほうが大事だからな」

「そういうことなら」


 相手が決まったので、ボクはアルフとの距離をあける。アルフもボクと同様に距離をあけるように動き、中央にガリアがいる形となる。


「では準備を」


 アルフが木剣を構える。


「そういえば直接言葉を交わすのは初めてだな」

「そうなるね。ボクはマオ・フルシロ」

「ラティナ姫の近衛兵のアルフだ」


 おやおや。血筋は知らないけど結構気に入られているご様子で。やっぱり幼馴染だなぁ。


「用意」


 さて、どう戦おうかな。装備の性能も活かしたいところだし。


 ……うん。フィーリングでいいや。


「始め!」

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