ボーンキングっぽい?
火に包まれる。
逃げ込んだ教会で、身を震わせる。
「お逃げください……姫様」
血を流しながら剣を握りしめる騎士。その背中には美しい少女がいた。
金髪に翡翠の瞳。白いローブを身に纏った少女は縋るように騎士にふれる。
「ガリア……いやよ」
ガリアと呼ばれた中年の騎士は教壇の窪みの床を蹴る。そこには階段があった。
「さ、ここから」
「いやっ! 私ひとりじゃ、この先殺されるだけだわ! ならいっそのことガリアと共に……」
「悲しいこと言いなさるな。幼き頃からお守りさせていただいたのだ、責務を全うさせていただきたい。騎士として!」
ガリアは少女の襟首を掴むと地下への階段へ放り込む。そして蓋を閉めた。
『ガリア! お願い開けて! ガリアぁ!』
蓋に教壇を引いてのせる。悲痛な少女の悲鳴が聞こえるが、ガリアは涙を呑み込んで教壇の前に移動し、剣を構える。
入り口に形成していたバリケードが破壊され、中に魔物たちが入ってくる。
角の生えた骸骨、ボーンキングが屍を引き連れてきた。
大鎌を担ぎ、カラカラと笑うように顎の骨を鳴らす。ボーンキングの後ろには動く屍たち……かつての部下たちがいた。
笑い合った部下たちの心は、もうそこにはない。
『貴様だけか、ガリア』
ボーンキングが喋る。
「……そうだ。姫はとっくに逃した」
『そうか。しかし、姫だけでは何もできまい。国が滅んだ今、ただの小娘だ』
「その小娘に随分しつこいじゃないか」
ボーンキングが大鎌をガリアに向ける。
『それはキサマと、秘宝が存在ゆえだ。片方は今日ケリがつく』
「ただでは死なん」
決死の覚悟を持って、ガリアはボーンキングと対峙する。
──が。
「おぶぅ!」
──天井から子どもが落ちてきた。
まるでそれまでの空気を壊すように。
ロ
あたた……。
なんだここ。
ボクは体を起こす。
目の前には──骸骨がいた。
大鎌を持っていて身を鎧で固めている。デザイアメイロで出てくる中ボスのボーンキングにそっくりだ。
その後ろには騎士の格好のゾンビみたいなのがうじゃうじゃいる。
デザイアメイロにもあったなぁ。廃墟になった教会で無限湧きするゾンビとセットで戦闘になるんだっけ。
体力が半分になると忠義の騎士ガリアゾンビとかいうクソつよお供を呼び出して厄介なんだよねぇ。
アンデッド相手にダメージが上がる骨砕きの鞭と、あと特攻アイテムで亡国の秘宝を使用するとガリアが正気に戻ってボーンキングに大ダメージを与えてそのまま自滅するんだよね。
まぁ滅んだ国とか忠義の騎士ガリアの背景情報全く無くて、秘宝は焼け崩れた城跡を探索して手に入るだけだし、古いゲームだからあんましエモさ感じないただの救済アイテムでしかないんだけど。
体力が半分になるまでゾンビが無限湧きなのと、ゾンビに経験値がちゃんとあるのでボーンキング相手にレベリングする人もいるくらい。時間がかかるけど初期のレベル上限の五十まで無理なく上げられるしね。
うん。
……ゲームに現実逃避している場合じゃない。
『ガキか。どこから紛れ込んだか知らないが……』
ボーンキングみたいなのが大鎌を構え、ボクに振るってきた。
「やめろぉ!」
後ろで叫び声が聞こえて振り返る。そこには見覚えのあるようでないおっさんがいた。白髪混じりの渋い顔付きで、ボロボロの鎧を着ている。右手にある剣も刃こぼれしまくっている。
あれあの見た目……。設定資料集でみたことある。
「ガリアなのでは?」
ボクの首に大鎌が当たる。
おっさんはギュッと目を瞑り、カラカラと骨の鳴る音が響く。
だがそれはすぐに止んだ。
『キサマ。なぜ首が繋がっている』
おっさんが目を開け、ボクの姿を見て、あんぐりと口を開ける。ギャグ漫画みたいなリアクションだった。
「うん? ボクが生きてる理由かい?」
ゆっくり振り返って首に当たっている大鎌の刃を撫でる。
「簡単さ。ボク、強いから」
ボーンキングみたいな……いやもうボーンキングでいいや。
ボーンキングは大鎌を引くと、片手に光を発生させる。
そして爆発がボクの身を包んだ。
デザイアメイロに出てくるフレアの魔法みたいだな。
──というか。
ボクは顎に手を当てる。
「ゲーム世界に転移──ってやつだろうか」
爆発が晴れる。ボクは無傷だ。なにせ元とはいえ魔王だしね。それを見てか、ボーンキングの顎が外れた。
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