茨に解毒を

琥珀ツキ

回想シーン

志希（しき）「おじ様、今日はありがとうございます」

道林（どうりん）「いや、いいんだよ。志希が楽しんでくれたなら私は十分。それより、佳代子（かよこ）にかんざしを買ったけど、喜んでくれるかな…？」

志希「心配しすぎですよwおば様は大好きなおじ様から貰ったものならなんでも喜んでくれます。そうでしょう？」

道林「そうだね」

志希「くんくん。…ねぇおじ様、血の匂いがしませんか？」

道林「え、そう？でも志希は鼻がいいからな…」

志希「屋敷の方から血の匂いがします…！しかもかなり匂いがきつい！まさか誰かが！？」

道林「志希、今すぐ屋敷に向かおう！もしかしたら最悪なことが起こっているかも…！！」

志希「はい、おじ様っ！」

“ﾊﾞﾝｯ”

志希「ッハ、お父様…っ、お母様…っ、おば様…っ！？ハァ、…ッハァ、私たちがいない間になんでっ！！！！」

道林「…佳代子？まさか、こ、殺されたのか？」

志希「おじ様、今日はどちらの企業がいらっしゃる予定で？」

道林「えっとたしか──……」

和泉（いずみ）「──、志希！どうしたの？だ、大丈夫？」

志希「ッ、大丈夫。ごめん、ちょっと思い出すことがあって…」

和泉「ほ、本当…？無理してない？疲れてたら言ってね…！俺、力になるから…っ！！」

志希「ありがとう。頼りにしてるよ、和泉くん」

(…あの日、おじ様が言っていた名前、誰だったかな。思い出せない…、考えようとすると頭が痛くなる)

拓也（たくや）「志希様、依頼されていた資料出来上がりました」(小声)

志希「ん、早いね。じゃあ、ひとけの少ない場所に移動しようか」(小声)

‐旧校舎渡り廊下‐

拓也「こちらが、“吉良組”の活動累計資料です。そしてこちらが、現在ボスである“吉良黒耀（きらこくよう）”の資料、その跡取り“吉良和泉”の資料です」

志希「ありがとう、タク。それにしても、よくこれを調べてきたね。今では吉良組の資料を入手するのはかなり困難になったと聞いている。

それを平気でやってのける君は、本当に私の優秀なボディガードだよ…っ」

拓也「そう思っていただき、とても光栄です…！でも、俺なんかより、志希様の方がよっぽどすごいですよ」

志希「そうなの…？」

拓也「はい！！志希様は実力もありますし、とても賢いです！それに、今の蛇崎（へびさき）組の唯一の『ナビゲーター班・実行班次期取締役』の資格を持っているんですよ！？しかも歴代の資格取得者の成績をさらに上回り、全分野満点という伝説まで作ってしまった…！！そして志希様はですね、自分だけではなく蛇崎組全体のことも考えてくれていて、“ボスの右腕”という──……」

志希「こ、これ以上はもういいよっ。少し落ち着いて、わかった…？」

(流石にあんなに言われてしまったら照れるんだけど！？ふぅ…、感情を押し殺さないと、任務にあたる時に動きが悪くなったら危ないからな)

“ﾌﾞﾌﾞｯ”

拓也「誰からですか…？」

志希「おじ様…、いや仕事モードだから、ボスから。…タク、今すぐ準備を。アズには連絡しておく。ボスからの殺人命令（ミッション）だよ」