茨に解毒を

琥珀ツキ

第1話

「おじ様、今日はありがとうございます。」

「いや、いいんだよ。志希しきが楽しんでくれたなら私は十分。それより、佳代子かよこにかんざしを買ったけど、喜んでくれるかな…?」

「心配しすぎですよ(笑)。おば様は大好きなおじ様から貰ったものならなんでも喜んでくれます。そうでしょう?」

「そうだね。」


「クンクン…ねぇおじ様、血の匂いがしませんか?」

「え、そう?でも志希は鼻がいいからな…。」

「屋敷の方から血の匂いがします…!しかもかなり匂いがきつい!まさか誰かがっ!?」

「志希、今すぐ屋敷に向かおう!もしかしたら、最悪なことが起こっているかも…!」

“バンッ”←ドアを明け放った音

「ッハ、お父様…っ、お母様…っ、おば様…っ!!ハァ、…ッハァ。そ、んな…、私たちがいない間に…っ!」

「…佳代子?まさか、こ、殺されたのか、?」

「…おじ様、今日はどちらの方がいらっしゃる予定でしたか?」

おそらくそいつらが犯人――

「たしか――……」



「――、志希!」

「ッ、ごめん。ちょっと思い出すことがあって…。」

「ほ、本当…?無理してない?疲れてたら言ってね…!俺、力になるから…っ!!」

「…ありがとう。頼もしいよ、和泉いずみくん。」

(…あの日、おじ様が言っていた名前、誰だったかな。思い出せない…、考えようとすると頭が痛くなる。)

「志希様、依頼されていた資料出来上がりました。」(小声)

「そうか、早いね。じゃあ、ひとけの少ない場所に移動しようか。」(小声)


−旧校舎渡り廊下−

「こちらが、“吉良組”の活動累計資料です。そしてこちらが、現在ボスである“吉良黒耀きらこくよう”の資料、その跡取り“吉良和泉きらいずみ”の資料です。」

「ありがとう、タク。それにしてもよくこれを調べてきたな。今では吉良組の情報を入手するのはかなり困難になったと聞くぞ。それを平気でやってのける…!君は、本当に私の優秀なボディガードだよ。」

「そう思っていただき、とても光栄です…!でも、俺なんかより、志希様の方がよっぽどすごいですよ。」

「そうなのか…?」

「はい!!志希様は実力もありますし、とても賢いです!それに、今の蛇崎組の唯一の『ナビゲーター班・実行班次期取締役』の資格を持っているんですよ!?しかも歴代の資格取得者の成績をさらに上回り、全分野満点という伝説まで作ってしまった…!!そして志希様はですね、自分だけではなく蛇崎組全体のことも考えてくれていて、“ボスの右腕”という――……」

「こ、これ以上はもういいっ!少し落ち着いてくれ、いいな!?」

(流石にあんなに言われてしまったら照れる…。感情を押し殺さないと、任務にあたる時に動きが悪くなるから…!!)

“ブブッ”

「誰からですか…?」

「おじ様…、いや仕事モードだから、ボスからだ。…タク、今すぐ準備をしろ。アズには連絡しておく。ボスからの殺人命令だ。」

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