第3話
彼らは財宝を見つけだし熱狂した。伝承は本当だった!一族の宝物庫の島を発見した!これらはみな我らのものなのだ!
そして他へ向かうことはやめ、財宝のあるこの場所で暮らそうと言い出した。別れ別れとなった仲間を探すにしても、あくまでもここを拠点としたいと決めた。
やがて彼らは島から小舟で漕ぎ出し、行ける範囲内で町や村を見つけ、持ち出した財宝を食糧と交換し持ち帰り日々の糧として暮らしてゆくようになった。
こういった状況下では、生活はひどく不自由な面があった。食糧だけではなく物資がそもそも無いのだ。慣れない気候の土地で疲れもあったのか、しばらく前に仲間の何名かは熱病に倒れ帰らぬ人となってしまった。薬などは大して持ち合わせておらず、薬草となりうる草木も島には無く、体力を失くした者から儚くなっていってしまった。気の毒なことにリーテの母もその時亡くなってしまったのだった。
同じ頃、薬やら他の物資を調達すると言いながら出かけて行った者達もいた。彼らは財宝を小舟に運べるだけ積み込んで出かけて行ったが、そのまま戻っては来なかった。
その者たちは、本当は物資調達の目的は出かける立て前で、先細りな暮し向きが嫌になりよその土地にこっそり向かったのかもしれない。あるいは何が何でも一族の他の船を探しに行こうとしたのかもしれない。それとも、病に伝染ることを恐れ急ぎ逃げだしたのかもしれない。
だがその連中がうまく目的地に着けたかどうかは不明であった。外海に出る場所の近くには、突然流れが早くなるため普通に船で進むのも難所とされる箇所があるのだが、普段より遥かに宝で荷が重くなっていたら船を操るのに失敗した可能性が高い。
外海へ向かわず、湖の周りの土地まで船でゆき、そこから徒歩で進み行くことも可能だが、島についた当初周囲を調べに行った者の話では、近しい土地には人はおらず、遠く町村はあるようだが、そこまで荷を持ち進むには、徒歩で進むとなると大変困難な道のりだということだった。
そのため島の者は外海を通る方法だけで出入りをしており、帰らなかった者らも、外海の方へと向かって行ったのだ。
彼らが帰らなかった本当の理由は、島の者には知りようがないことだったが、こんな訳で島に住まう人々は減る一方だった。
当初の船は出入りする用の何艘かの小舟を作る木材を取るため解体したので、前と同じように皆で乗る船は無かった。
この島で暮らし続けるのであれば、小舟で行ける近場へゆき、宝物と交換した食糧を運んで帰ってくる方法でしか暮らしは成り立たず、今回も残り数名の大人が船で出ていったのだが、島にはこの二人の少女達しか残されていなかった。
彼女たちだけでは危ないというむきもあるだろうが、彼らの祖先は伝承の通りこの島に一種の術をかけており、よそ者がこの島に近づくと幻影を見て道を誤ったり気が触れてしまったりで辿り着けなくなっているのだ。旅に赴く方が危険が多く、一族の巫女は安全な島にいたほうがいいということとされたからだ。
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