第2話

「じゃ、決まりね!ラウア、早くいこ!」リーテが腰掛けていた橋のたもとから勢いよく立ち上がった。


橋というのは、小島と小島を渡す小さな細い吊り橋だ。


少女達が暮らしているこの二つの小島は、遠方からみると広い湖の上に二つの小さい島がポツンポツンとあるのが見えるという。


湖は広く楕円形を描いており、周りを人が住まぬ枯れた土地が輪のように囲んでいる。


湖の端は土地の輪の一部が切れて外海へと繋がっていた。


島の大人達はそこから小舟で外海へ向かい出入りしている。


この島に暮らす者は彼ら一族のみで、その数は多くない。


そして彼ら一族以外の者は、このあたりに来ると一種の呪いにかかってしまうため、近づくことができない。


少女達の一族は、船で外海からこの小島へやって来た。彼らが住んでいた土地は海中に沈み、逃れた人々は幾隻かの船に別れて乗り、うち一隻が辿り着いたのがこの島だった。


船には人々と共に積める限りの食糧や少々の日用品などはあったが、急ぎ乗り込んだためさほど準備されていたわけではない。


島に辿り着いた時、当初は少し休んだらすぐ他へ向かう予定だった。まずは物資の補充が最重要事項であり、それらを手に入れられる場所へ赴く必要があったのだ。もちろん住めそうな土地が見つかれば移住するつもりだった。


家族が他の船に乗ったかもしれないから探しに行きたいという連中もいた。


だが、沈むゆく土地からお目当ての人物が船でうまく逃げのびることができたかどうかはわからない。そしてその船の行く先もわからない。現状こちらでも困っている状態なのに無計画に探し出しに行くのは困難だとする者の方が多く、その案は採られなかった。


少女二人に関しては、リーテは片親であったのだが、幸運にも母親と同じ船に乗っていた。ラウアの両親は船に乗る以前、すでに亡くなっていた。そのため、他の船を探しに行かないことが決まっても、彼女達には直接の影響はなかった。


ともあれ、同じ船に乗ってきた人々は思った。他の船を探し出すまではできずとも、たちまちここは去らなければならないだろうと。


というのも、今彼らが辿り着いたこの島は、作物ができそうになかったのだ。


岩ばかりで土の部分は少ない上、やたらに固い土である。

耕すにも農具などは無い。また土地は酷く痩せており、自生植物もほとんど生えていなかった。みるからに碌な作物が育ちそうになかった。


また草木がほとんどない影響なのか、島の周辺には見たところ魚や鳥を見つけるのはなかなか難しかった。ここでは暮らしていけそうにない。


だがここを離れて先を行く計画は、島の中に密かに蓄えられていた大量の財宝を発見した時に中止となった。


偶然ではあったが、島の岩に同じ一族の印が刻まれているのを発見した者が、あたりを探し回った時に発見したのだ。


この一族は古いため様々な伝承を継承しているのだが、その中に人里離れた小島に莫大な宝を集めて宝物庫を作ってあるため困った時にはそこに行けばいいという伝承があった。そして伝承では、その島には魔術がかけられており、一族でない者は立ち入れないようにされているということだった。


彼らはその伝承にある小島を偶然にも発見したようであったのだ。

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