果てのない合わせ鏡
森本 晃次
第1話 産業廃棄問題
この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。似たような事件や事例もあるかも知れませんが、あくまでフィクションであります。それに対して書かれた意見は作者の個人的な意見であり、一般的な意見と一致しないかも知れないことを記します。今回もかなり湾曲した発想があるかも知れませんので、よろしくです。また専門知識等はネットにて情報を検索いたしております。呼称等は、敢えて昔の呼び方にしているので、それもご了承ください。(看護婦、婦警等)当時の世相や作者の憤りをあからさまに書いていますが、共感してもらえることだと思い、敢えて書きました。ちなみに世界情勢は、令和5年9月時点のものです。とにかく、このお話は、すべてがフィクションです。疑わしいことも含んでいますが、それをウソか本当かというのを考えるのは、読者の自由となります。今回は大学の研究所の話をしていますが、イニシャルから想像する大学とはまったく違う大学、まったくの架空の存在だとご認識ください。また戦争認識も政治見解も、作者の勝手な思い込みかも知れませんが、諸説言われるなかの一つだとお考えください。また、現在の政府も、本当にフィクションなのか、ここの判断にお任せします。また、ここでいう日本は、パラレルワールドです。
世の中には、
「超常現象」
と呼ばれるものがたくさんある。
要するに、
「自然科学において、説明のつかないことの総称」
とでもいえばいいのか、遣い方としては、
「広義の意味」
という解釈でいいのではないだろうか?
その中には、
「超能力」
「霊能力」
などと呼ばれているものや、
「憑依」
「呪い」
「ドッペルゲンガー」
のような、一種の都市伝説的な話も含まれているとってもいいだろう。
そんな中で、とある片田舎の湖畔に、
「秘密研究所」
のようなものがあり、その存在を知っている人は、ごく限られた人に違いない。
ただ、普段は隠れ家のような場所で、まったく人がいないというわけではなく、時々、人がたくさん来ることがある場所だったのだ。
だが、その人がいっぱい来るという状況を知っている人は、それほどいるわけではなく、どちらかというと、
「ここに来る人は、皆、目的を持っているわけで、その目的は、皆同じものなのだ」
ということであった。
湖畔のまわりには、森が生い茂っていて、その奥に、まるで、西洋の城のようなものがポツンと建っているのが、神秘的である。ただ、このあたりが、昔からこのような場所だったのかどうか、知られているわけではない。
一時期は、このあたりに、大きな、
「産業廃棄物を取り扱うところを作る」
という町の思惑があったという。
もちろん、農家などは大反対して、一時、街を二分する形で争われたのだが、少しして、急に、
「町長がいきなり辞任」
ということになった。
「あれだけ熱心な町長だったのに」
と街の人が怪しんでいるが、
「いやいや、あの人は、産業廃棄物処理所の誘致を言いだしたので、解任されたのさ」
と言っている人がいた。
「ん? それはどういうことだい?」
と聞くと、その人は、耳打ちするような小さな声で、
「大きな声では言えないが、もっと大きな勢力から排除されたんじゃないかな?」
ということであった。
「そうなのか?」
と聞くと、
「俺も噂話を聞いただけなので、何とも言えないんだけどな」
というだけだった。
正直、この街は面積としては、他の街に比べて、かなり多きなところであった。別に山があるわけではないのに、知らない人が聞けば、
「なんでだろう?」
と思うことだろう。
それは、この湖畔の場所が、想像以上に大きなところだからだ。人によっては、
「無駄に広いところ」
と感じるに違いない。
他の街や村も、集落としては、そんなに広くないところに人が住んでいるだけで、ほとんどが山林となるので、
「人口が少ないが、面積とすれば、かなりのものだ」
ということであった。
これが山林であれば、林業ということで、街の収益にもなるのだろうが、この湖畔で、何かが採取されるわけではないのにだだっ広いので、本来なら、
「手放したい」
と思うのかも知れないが、この場所の管轄としての街では、
「ここは手放したくない」
と思っているようだ。
ただ、この間、解任された町長だけは、
「理屈が分かっていないのか?」
それとも、
「わかっていて、敢えて、この場所を手放そうと思っていたのか?」
ということで、どうやら、
「町長が、この湖畔を手放そうとしたということには、結構な信憑性がある」
ということのようだった。
実しやかなウワサ話ではあったが、それだけに、意外と、知られていないことのように言われているが、そのせいで、
「実際にこの村には、バックに何か街を凌駕できるほどの大きな組織が存在しているのではないだろうか?」
と言われるようになったのだ。
それが、どんな組織なのか、誰にも分からないということであろう。
この街が、
「産業廃棄物の処理工場になる」
というウワサは、かなり前からあった。
それは、実に、町長の耳に、オフレコで入ってくる前から、水面下では、話があっていたようだ。
ということは、町長を無視した、さらには、それ以上の組織のようなものが、この街に蠢いているということになるのだろう。
今の町長になる前から、そんな噂は実はあった。
それも、町役場内であったのだが、最初はそれを誰も止めるということはなかったのだが、今の町長になってからというもの、
「町長にも知られないような話」
というのが、存在しているのであった。
これは、
「今の町長だから」
ということではなく、どちらかというと、
「今水面下で進んでいる事業というか、プロジェクトというものが、町長の介入があっては困る」
ということから始まっているということであった。
もちろん、町長が、
「今はダメだが、そのうちに、理解してもらい、従ってもらうしかない」
というために、まだ、町長の介入があっては困るということで、水面下で動いていたのだということになるのだった。
しかも、今までの町長というのは、
「内部昇格」
というのが多かった。
いわゆる、
「たたき上げ」
ということで、この街独自の体制が昔から守られていた。
ただ、それが、県の中では、
「そういう体制はなるべく減らしていかないといけない」
ということがいわれるようになってきた。
今の町長は、今までにない、
「他からやってきた人」
といってもよかった。
今までに、都会経験の町長も何人かいた。
ただ、一つ言えるのは、皆、
「この村出身者だ」
ということであった。
高校を卒業し。東京の方の大学を卒業し、戻ってきて、町長になるという人である。
だが、もちろん、いきなり何の経験もなく町長になることはない。明文化されたものはないが、基本的に、
「この街に、5年という継続した住民票がなければ、町長には、立候補できない」
ということである。
もっといえば、
「町の行政を勉強しないと分からない」
ということであり、いくら、他の街で、町長の経験があるといっても、それは通用しないということであった。
それを考えると、この町長は、まだこの街に来て3年目だった。
それは誰もが知っていることであり、本来なら、町長立候補の際に、
「資格がない」
といって、却下することもできたのだが、分かっていて、選挙に出したのだ。
それでも、当選するから面白いもので、
「それだけ、街の人は、新しい人を求めていた」
ということであろうか?
「毎回同じ人であったり、街に、どっぷりつかっているような人に飽き飽きしていた」
ということなのか、この街で3年しかいないのが分かっていて、それでも、この人に票を入れるというのだから、街の人の心境はどういうことだったのだろう?
ただ、それも、街の人で、この人に票を入れた人は、
「産業廃棄物処理所」
というものの計画を水面下で知っていたという人だったのではないだろうか?
考えられることとしては、
「傀儡政権」
を作りたかったということであろう。
この街の町長は、歴代、大体、この街の規則で、3期までが最高ということになっている。
都会では、基本は2期なのだが、タレント議員であったり、
「他に適任者がいない」
というような理由で、仕方がなく、3期以上している人も多いだろう。
実際に、
「十数年市長をしている」
などという人が多いが、そのわりに、辞める時は、スキャンダルめいたことであったり、議員が、
「やらかした」
ことを、大きくマスゴミに報じられて、市民からは、ボロクソに言われて、それまでの実績が、一瞬にして無駄になってしまうということが多かったりするだろう。
そんな市町村が、世の中にはたくさんある。 特にタレント議員などがやっているところでは、日常茶飯事ではないだろうか。
長い間、公務を続けている人でも、
「この人はいい人だから、信頼できる」
というわけではない。
それこそ、
「他になりてがいない」
という理由であったり、
「名前を聞いたことがあるのは、この人だけだから」
という、いかにも、
「私は政治には興味などありません」
という人が入れるだけだろう。
だから、当選する。
特に、政治に興味がない人が多い、自治体では、
「投票率が低いと当選する」
と言われている。
というのは、投票率がたかろうが引くかろうが、
「必ず投票にいく」
という人が一定数いるのだ。そういう人のことを、
「組織票」
というのだが、そういう人は、それだけの地盤を持った人であり、現職であったり、中央政党の公認を得られている人だったりになるのである。
中央政権で、しかも与党だったりすれば、県議会に名の通る事務所だって、それぞれの地区に存在しているだろうから、それらの人が、必ず、その候補を投票するのだから、完全な固定票ということである。
つまりは、中央からの公認政党というのは、それだけ、
「金を持っている」
ということである。
「政治は金だ」
と言っている人が多いのだが、まさにその通りだといってもいいだろう。
何といっても、
「それだけの人が固定票で投票するのだから、もし、固定票が2割だとして、投票率が3割しかなかったら、それだけで、当選確実ということになるのだ」
そもそも、フリーの票が、
「すべて対抗馬に入れられる」
ということがあるわけもなく、もしあったとすれば、それこそ、組織票だといえるだろう。
そういう意味で、
「組織票同士の一騎打ち」
というような選挙が今までに行われたのかどうか、正直分からないが、どうなのだろうか?
そんなことを考えていると、実に面白いといってもいいだろう。
だが、今回解任された町長は、どこからも、公認されていなかったのだが、なぜか当選したのだ。
それは、県でも、
「不思議だ」
と言われていたが、人のウワサも75日ということで、すぐに誰も気にしなくなったのだった。
そんな街で、町長が変わったことで、最初あれだけ、水面下で、そして、町議会で、話題になった
「産業廃棄物処理所」
というところの建設計画は、完全なしりすぼみとなってしまったのだ。
誰も何も言わなくなり、それこそ、そんな話題があったということを口にする人はいなかった。
「言ってしまうことがタブーだ」
と言わんばかりだったのだ。
「世間で、タブーと言われるようになったことというのは、その後下冷えになってしまう」
ということがよく言われているようだ。
「最初からなかったことのようにする」
という、いわゆる、
「黒歴史」
とでもいえるのだろうか、
「産業廃棄物」
というものが悪いのか、それとも、
「この街に、何か、中央の思惑で動かされる」
ということが、議会の中での長老などと言われる人たちにはたまらないことなのかということであった。
今の長老と言われる人たちは、昭和の時代を生き抜いた人たちとは若干違っている。
昔ほど厳しくはないが、時代背景が、
「そうは言っていられない」
というようなものだったといってもいいだろう。
時代は、昭和のような、
「バブル最盛期」
とは違い、
バブルがはじけたことであったり、行政における、
「国営事業の民営化」
という波があったのだ。
特に、民営化の中で、鉄道関係というのは、赤字問題がかなり大きな部分を占めていて、民営化し、株式会社になってからも、いまだに、その赤字を解消するまでには行っていないということだ。
何といっても、
「親方日の丸」
という時代の会社が行っていたことは、
「税金泥棒」
といってもよかった。
「外には辛く、内には甘い」
と言った状況が続いていたのだが、いまだにその借金を返せていないというのは、すでに、30年以上という月日が経っていながら、やっていることは、まだ、
「昔の国鉄だ」
だということである。
「やっている基本的なことは、国鉄時代をそのまま継承し、さらに、株式会社ということで、乗客が一番のはずなのに、営利を目的にしないといけないということで、鉄道会社の理念をまったく無視するから、たちが悪い」
と言われるのだ。
つまり、
「最悪な状態を、さらに最悪に掘り起こしたのだ」
ということになるのであった。
ハッキリいえば、
「そんなことも分からない政治家たちが、民営化すれば、借金も返せるだろう」
という安易な考えになるのだろうが、
「民営化したくらいで借金を返せるのであれば、そもそも、こんな借金になるまで、放っておくことはないのだ」
ということで、結局、巨大ブーメランとして、その責任の所在は、
「国家にある」
ということになるのであろう。
そもそも、鉄道会社の理念というのは、
「乗客や、依頼された貨物を、安全に決まった時間に、目的地に届ける」
ということが、一番に理念のはずである。
もちろん、民営化されたのだから、そこから先、
「利益追求う」
というのは当たり前のことであり、
「利益を出せない企業というのは、社会的には、罪悪だ」
とまで言われるくらいである。
というのは、これは人間と同じで、企業というものも、
「一人では何もできない」
ということである。
他の企業があってからこその自分の企業が仕事ができるというわけで、例えば、流通業などであれば、
「モノを生産する業者から、仕入を行い、そして、販売を目的とする、流通会社に納める」
ということで、その間にいくつもの企業が介入する。
モノを運ぶための物流会社。
そして、発生する費用は、その時の、
「現金払い」
であったり、何かとも、
「物々交換」
というものではないので、そこには、銀行であったり、それ以外の金融機関などが介入してくるだろう。
物流会社にしても、金融機関にしても、どちらも機能していなかったら、会社は経営などしていけるわけはないということである。
だから、会社の中には、会社を取り仕切る、総務部、仕入先との間に発生する交渉などを行う、商品部、さらには、スーパーなどの流通業を相手に営業を行う。
「営業部」
と様々な部署が発生する。
適切な支払や、入金を確認するための経理部であったり、銀行の窓口としての総務部などが、
「金のやり取り」
というところを担って、会社の、
「縁の下の力持ち」
として、支えているということになるのであろう。
だが、なかなか、会社によっては、それぞれの部署で、立場というものが違っている。
それによって、会社というものを、うまく機能させるために、コンピュータ化を行ったり、場合によっては、
「アウトソーシング」
と言われる、
「外注」
により、会社の機能を行うことで、
「経費節減」
という意味からの、
「会社の利益を追求する」
ということになるのであろう。
それを思うと、会社においての
「いかに、業務をスムーズに回すかというところでの、コンピュータ化」
というのは、必須なことである。
しかも、
「自動決済もできないような会社とは、取引はできない」
というところが、大企業の中にはあるだろう。
今までであれば、
「自分たちの会社で開発した端末を貸し出すので、それで運用してください」
ということもあったが、今では、そういうことも少なくなってきている。
コンピュータ自体が簡素化しているので、簡単に、システム構築ができるということなのか、
「企業が、企業を選ぶ」
ということは、今までの力関係だけでできるというわけではない。
ということなのだろう。
一方通行だけでは、今では通用しないということだ。
そんな中において、この街は、途中から、
「都心部の企業を誘致したり、中央からの援助がないとやっていけない」
という状態になっていた。
そのことを分かっていたのは、町長と、一部の人たちだけだったのだが、そもそも、この町長が、今までの慣例にない形で、町長になれたのかというと、
「中央からの組織票が流れ込んでいた」
ということがあったからだ。
大っぴらにしてしまうと、もちろん、贈収賄の罪で、逮捕されるのは必至であるだろう。
だから、町長本人にも分からない方法で、彼を合格させたのだ。
そこから、最初こそ、自分の信念のようなもので、行政をこなしてきたが、そのうちに、
「お前がここで町長ができるのには、秘密がある」
とばかりにウワサが流れてきているのであった。
「じゃあ、私がここでうまくできてるのは、その力のせいですか?」
というと、
「そうだ、その通りで、お前は、これからは、俺たちのしもべとして、キチンとやってくれないと困るからな。言っておくが、お前を当選させるのが簡単だったように、引きずり下ろすことくらいは、朝飯前なんだからな」
と、完全に脅迫してきたのだ。
「いいか、お前の立場で今の最大の優先順位は、俺たちのことを他の人に口にした時点で、お前は終わりだからな。下手をすれば、社会的な地位だけではない可能性だってある。こうなると、どれだけリアルなことか、すぐに分かるというものだ」
とその男はいうのだった。
最初こそ、やつらの命令に、少しずつ従ってきた。
最初は簡単なことが多かったが、だからといって危なくないものではない。バレた瞬間に、町長を追われることは当たり前の状態だった。
しかも、下手をすると命がなくなるなどという脅迫は、普段なら、
「そんなバカな」
と一蹴できるのだろうが、やつらの実際の力を知ると、恐ろしくてたまらなくなってくるのだった。
だから、
「産業廃棄物処理所」
というものを、作ることに賛成だったのは当たり前のことだった。
奴らが言っているとおりに事態は進行していた。実際に、予定地も決まり、案の定、湖畔あたりのところが候補地になり、まるで電光石火のごとく、その土地を、街が買い取ることに成功したのだ。
急いでやらなくてもいいくいなのだろうが、中央は急がせる。
なぜなら、
「この計画をわかっているような連中がいるので、いつ妨害があるか分からない」
ということであった。
それを聞いた町長は、急いで購入し、その理由をどうするか考えていた。
「まだ、産業廃棄の話はしてはいけない」
と言われていたので、このあたりから、少しジレンマになってきていることが分かってきたので、自分の立場が危ういのが分かるのだった。
どんな言い訳をしたのかというのも、すぐに忘れてしまった。
思いついたまま、
「ああ、これでいいんだ」
とばかりに、反射的に行動したので、後から考えると、なぜか、どうしても思い出せないということになっていたのだ。
それでも何とか購入することに成功したのに、
「後は我々がうまくやりから」
と言いながら、実際には難航しているという話が聞えてきたのだ。
「本当に団丈夫なのか?」
ということを考えるのだが、
「いやいや、俺は一蓮托生なんだから、任せるしかないじゃないか?」
と、脚を踏み入れた時点で、共犯だということは決定しているのだ。
それを、いまさら、どうすることもできず、後は言いなりになるしかないだろう。
後になって、
「全部あいつらの指示でした」
と言えば逃れられると思ったのか、その考えは、本当に、まるでお花畑の中にいるようなものだといえるではないか。
そんな町長だったが、正直、
「なぜ、自分が更迭させられたのか?」
ということが分かっていなかった。
更迭といえば、まだ聞こえはいいが、
「ありもしないことをでっち上げられて、その結果、辞めざるを得なくなってしまった」
というのが真相であった。
最初は、副町長も、
「新町長として、なかなかお分かりにならないことも多いでしょうから、私がいろいろお手伝いさせていただきます」
ということを言われ、町長も、副町長を信じていた。
副町長は、生粋の子の街の出身者ということで、中央の人からも、
「副町長に分からないことは聴けばいい」
ということを言っていたので、そのつもりで対応していたのだ。
もし、産業廃棄に関しての話が出てきた時に、副町長が、少しでも態度が変わっていれば、副町長の気持ちが分かるということであったが、最初はそんなことはなかったのに、途中から、次第に町長から離れていくような感じだったのだ。
それに伴うように、町長の取り巻きといっておいいような連中が、どんどん遠ざかっていくような感じだった。
「どうしたんだ? 一体」
とは、少し感じていた。
それでも、町長も副町長に対して必要以上なことは聞かなかったし、逆も同じで、何も副町長から言ってくることもなかった。
だから、
「最初はあんなに、絆が深かったと思っていた二人が、二人三脚で、街の行政をつかさどっている」
と思っていたのに、急に豹変したといってもいいのか、副町長は、
「一体どっちの味方なんだ?」
と思えてきた。
おかしくなり始めたのは、確かに、産業廃棄の問題が、表に出てきたからだった。
実際に、産業廃棄の話が出てくるまで、ちょうど、町長に就任してから、慣れるまでの期間だった。
ひょっとすると、町長就任のタイミングで、今回の産業廃棄物の件が起こっていたのだとすると、
「俺は、その産業廃棄の問題を請け負い、何とか裁くためだけに、ここに雇われたということになるのか?」
と思わせられた。
それも分からなくもない。
そもそも、この街は、地元出身者しか受け入れないという、田舎にはありがちであるところの、
「実に閉鎖的な街」
ということだったのだろう。
ただ、それだったら、もっとうまくやれるだろうと思った。
実際に、産業廃棄処理所を作るという目的は、結局達成されたわけではない。
中途半端に、例の、
「無駄に広い」
と言われている湖畔の土地を、街が買ったというところで終わっているのだ。
しかし、その土地が売りに出されたという話は聞いていない。自分が町長として、正直やったことは、あの土地を買ったということくらいであろうか。
それを誰が分かっているというのか、実際に、あの土地が売りに出されているという話は聞かない。
どちらにしても、ただでさえ、
「無駄に広い」
というだけの土地なので、ある意味、
「二束三文」
で売りに出されたとしても不思議はないだろう。
行政をしていると、本当に無駄な土地は、ある程度で見切って、二束三文でも売りに出すということになったとしても、それは当然のことだと言えるのではないだろうか?
そんな街の町長を、結局、2年くらいやっただろうか。初めての自治体の長となったわけで、選挙に出たのも、初めてという、
「童貞議員」
と言ことで考えると、
「まぁ、最初はこんなものだ」
ということになるであろうか。
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