楽楽記(らくがくき)

呪文堂

第1話 言語化の抑制

 暑いですね。

 近頃、ジム通いを始めました。仕事が忙しい時はサウナとジャグジーしか使えません。

 …いや、ほぼ毎回。サウナとジャグジーしか使っていないかな。


 え?…現状毎日、街中サウナ状態?

 素敵に辺りは高温高湿度。

 …ジム通いは、無駄ですか?


 いえいえ!生きるに於いて無駄なことなど無いはずです!

 …街なかの『自然サウナ』とジムの『人工サウナ』、どっちがより気持ちかろう、その差異比較を楽しめという啓示でしょうか?


 違う。

 今日書こうと思ったのは、そういうことではないのです。


―言語化の抑制―


 ここでいう『言語化』とは、『思考を結ぶ』という第一段階と、『発する』という第二段階があろうと考えます。

 つまり、言語で思考が結ばれてしまうことや、言語を外界に発することを、ある程度抑制したらどうだろう?という話なんです。


 何故か。

 言語は『縛る』呪術だから。


 ええ、縛るのは好きですよ。でも、美しいものをより美しく縛るのが好きなのであり、自らを縛っちゃったり、対象を不格好に縛るのは好きじゃない。


 この世に触れたとき。何かが立ち昇る。

 それを無闇矢鱈と縛る、言語化するのは如何なものか、そんなお話です。


 言葉の枠組みに入らぬものは溢れ零れて、不完全で不格好な形で固まってしまう。

 その不格好なモノで思考が結ばれたなら、思想も行動も不格好になる。

 不格好なモノを外界に発したなら、他者に不格好が敷衍する。人間関係が、社会が不格好になる。

 美しくない。嫌ですよね。



 ところで『自我』は、その構成要素のかなりの部分を言語が占めていると思います。

 ならば。

 言語を棄てることで、自我から解放される可能性は高い…

 つまり第一段階の『思考を結ぶ』言語化を辞めることは、『則天去私』や『無為自然』に至る門なのかもしれません。こりゃ、凄いですよ!


 あるがままに。

 美しきものとの、合一。


 …実に憧れますが、僕には些かハードルが高すぎるみたい。


 ならば、第二段階。『発する』ことを辞めてはどうでしょう。でもこれ、完全に成そうとするなら大変な苦行ですよね。沈黙行。解放を求めているはずなのに、行で雁字搦めは嫌だなあ。

 …いやいや。言語は、縛るモノ。

 美しく縛るなら、発しても良かろうと思えます。

 美しきものを、美しく縛る。

 不格好なものは、発しない。


 そのためには、第一段階で不格好な思考が結ばれぬよう配慮せねば。

 可能な限り、ただ在りてただ受ける。言葉が届かぬものは、届かぬままに眺めておく。

 獲らずとも有ると知る。

 たぶんこれ、古からの知恵なんだろうと思うのです。

 天籟を聴くには、口を閉じて耳を澄ます必要がある。聴こえた天籟を取り込むために、初めて発する。

 だが。自己の有無に関わらず、天籟は常にある。それを真に知ったなら、発することすら無用と悟るのでしょうか…




 …暑さは、思考を鈍らせます。鈍れば万事がどうでもよくなる。誤謬も気にならない。詰まらないことでも楽しめます。

 …なんの話をしていましたっけ?ああ、街なか天然サウナと、ジムの人工サウナだ。

 様々な要因で、環境が変わっていく。だんだんと思考を結びづらくなる。

 …それは、悪いことばかりではないかもしれない…

 そうか。そんなことを僕は言いたかったのかなあ?


 どちらにせよ、第一段階も第二段階も、僕は全く抑制できちゃいないのです。

 …まあ、ぼちぼち行きましょうか。


 さてさて。全く不格好なお話にお付き合い頂き、恐縮至極にございますっ

 誠に誠に、ありがとうございました!


(つづく、のでしょうか?)

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