裏口入学の無能特待生、下位魔法を極め最強魔導師に
玖波
第0話 プロローグ
少女は紛うことなき天才だった。
少女の広げた手のひらには六色の光の玉が眩いばかりに妖しく輝いている。
穏やかで小さな村である。小川がせせらぎ、若々しい葉を付けた木々が風に呼応し揺れる。
暖かく慈愛のように包み込むような光を放つ太陽に、目を細めた農夫が三本角の屈強な牛を引く。
「すげー!もっと見せて見せて!!」
王都から離れたちっぽけな集落の中心にそびえ立つ大樹の下で、少女が手に転がす魔法に1人の少年は目を輝かせる。
尊敬と好奇心の混じる瞳を向けられた少女は、艶のある透き通るような白銀の髪を風に靡かせ、長い睫毛の奥にある夕陽のように静かに燃える瞳を細めた。
この世には魔法という概念が存在する。
体中を絶え間なく魔力を力の贄として、術式を展開することにより、母なる大地と世界の創造主そのものである【女神】の恩恵を受け、この世に大いなる力を生み出すことができる。
それが魔法である。
魔法には火、水、風、土、光、闇と6つの属性があり、それぞれこの世に生まれ落ちた際に、創造主である【女神】から受ける魔法の加護がなければ使うことができない。
つまり魔法は天から授かった才能であり、女神から受ける贈り物そのものであるのだ。
並大抵の人間なら本来受ける加護は2つか3つほどで、加護が1つしかないなんてことも決して珍しくはない。
加護が4つもあれば優秀とされる程だ。
少女はこの世に存在する6つ全ての属性に対する加護を受けていたのだ。
対するは少年だ。
少女の見よう見真似で、空をすくい取るようにして両手を広げる。
小さな魔力の粒が一つ、朧げで今にも消えそうな中、光を灯した。
なんの色も宿さない、弱々しく情けない光である。少年は思わず顔をしかめた。
しかし少女はその濁りのない、儚くも確実に力を蓄えた光に目が離せられなかった。
これは加護もない、才能もないただの少年が、創造主たる【女神】ですら恐れ慄く、大魔導師になるまでの物語。
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