梨花の正体
「なんですか? 刑事さん?」
「梨花さんも一緒においでになったようで。」
「ええ、基本的には一緒にいますよ。」
「しかし、被害者の洋子さんはそんなあなたと梨花さんの関係を好ましく思っていなかったようです。」
「何を言うんです?」
「実は洋子さんは殺害される前に、誰かと電話をしていたようなんです。そして、その電話相手は、洋子さんの彼氏でした。」
「えっ!?」
金子は鳩が豆鉄砲を撃たれたように驚いていた。
「ええ、あなたと洋子さんの間には、愛人関係にあったようですね。会社員の皆さんに話を聞けば、そういう噂があることを聞きました。
しかし、洋子さんはあなたに愛が無かっただけでなく、金銭目的の殺人計画を立てていたようです。
電話相手の男に事情聴取した結果、全て自白してくれました。」
「そんな……。」
「そして、さらに残念なお知らせですが、その洋子さんを殺害したのは……
梨花さんです。」
「なっ!?」
金子はまた非常に驚いていた。金子が梨花に目を合わせようとすると、梨花は顔を隠すように頭を下げた。
「刑事さん! そんなことを言うからには、証拠はあるんでしょうね!」
「梨花さんがこの殺人をできることは否定はしないのですね。」
「はっ?」
「あなたは心の中で気が付いているんだ。
この社長室の密室、足首の傷から出た大量の出血、
そして、死因が絞殺であったこと。
この3つの謎を全て解決する犯人は、梨花さんしかいないことにね。」
「……。」
言葉に詰まった金子に、能登羽は梨花の正体を告げる。
「この殺人は、ヘビである梨花さんでしかありえないんですよ!!」
それを告げられた梨花は、2つに分かれた舌を出していた。
「では、最初から1つずつ説明しましょう。
洋子さんは誰もいない社長室で、彼氏と金子社長を殺す計画について電話で話し合っていました。なので、誰かが社長室に入ってきてはいけないと、社長室の鍵を内側からかけました。
そして、洋子さんが電話に集中している間に、梨花さんは隣の部屋からこの社長室を繋ぐ換気口から社長室に侵入しました。換気口の格子はちょうど梨花さんの体が通り抜けることのできる隙間だったことは確認済みです。
梨花さんはこの社長室に入ると、洋子さんの足首に噛みつきました。噛みついた跡が足首だったのは、地面を這うヘビゆえです。
そして、梨花さんは足首にヘビ毒を流し込みました。
ヘビ毒には血液が固まらないようにするものがあるそうで、梨花さんのヘビの種類を調べると、ちょうどその毒を持っていることが確認できました。
しかし、ヘビ毒で血が出続けると言えど、この社長室から出て、助けを呼ばれれば、梨花さんが犯人であることがバレてしまう。
だから、梨花さんは足首に噛みついた後、洋子さんの首に巻き付いて、首を絞めたんです。
洋子さんの死体を調べると、ヘビのうろこの様な跡が首についていて、体内からヘビ毒が検出されました。
もちろん、梨花さんと同じ種類のヘビ毒でした。
このように、不可解なこの事件は、梨花さんが犯人であれば、全て合点がいくんですよ!」
能登羽がそのように結論付けると、ずっと黙っていた梨花が喋り始めた。
「シャーシャーシャーシャー、シャシャシャー、シャシャシャシャー
シャーーーーー(´;ω;`)。」
「分かっています。
現場にある割れた花瓶、あれは洋子さんがあなたに投げつけたものでしょう。ですが、あなたが洋子さんを殺害しようと絞殺したのはいけませんでした。
それじゃあ、正当防衛は認められず、確かな殺意があったと認められるでしょう。」
「シャ、シャ……シャシャシャー,シャシャシャーシャ……。゚(゚´Д`゚)゚。」
「それでは、梨花さん、参りましょう。
頼むよ、神宮司君。」
神宮寺はそう言うと、素早い動きで、梨花の頭を指で押さえた。梨花は諦めたようで、神宮司の手に巻き付くことさえしなかった。
「私は田舎出身なので、この手のヘビは小さい頃に、たくさん捕まえていました。」
「流石だ。」
能登羽が神宮司を褒めた。神宮司は梨花の首根っこを掴んだまま、社長室を後にしようとする。
「……待ってください! 刑事さん!」
金子が能登羽達を呼び止める。
「刑事さん、梨花に洋子を襲わせたのは私です。」
「シャシャーシャ、シャシャシャ?ヽ(; ゚д゚)ノ 」
「梨花さんの言う通りです。罪のないあなたが梨花さんをかばう必要はない!
先ほどのあなたの驚きようは、この真実を何も知らない驚き方でした。あなたがこの殺人に関わっていないことは分かっています。
それに、あなたは私、ヘビ語が分からない。だから、梨花さんに殺人を刺せることは不可能です。」
「私が梨花に殺人を教唆させました。」
「……あなた、殺人の罪の重さを知っているんですか?」
「シャシャーシャ、シャシャシャー……シャシャ……シャシャ……。
ヽ (´Д`;≡;´Д`)丿」
「……それでも、罪を被ります。
刑事さん、私を捕まえてください。」
能登羽はしばらく黙り込んだ。梨花は口から毒を吐いて抵抗している。
「よろしい。あなたも殺人の罪で逮捕しましょう。」
「シャシャ……シャシャ……シャシャ……シャシャーーーーーー!!!
・゚゚(p>д<q)゚゚・」
社長室には、梨花の悲しき咆哮がこだましていた。
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