第20話 刑務所


 これ詐欺で勝てない?


「行きましょう」


 エマージェンシー! エマージェンシー!

 と脳内で警報音が鳴る。

 だが、二人に送り出された手前戻り辛いのもあって俺はボウヤーさんに促されるまま中へ向かう。


 やけに厳重な警備だなあ。

 まあ、アトリエなら価値のある作品が多いから当然なのかもしれんな。


「アトリエには武器は禁止ですよ」


 そう言ってボウヤーさんに腰に差していた剣を取られた後、中に入った。


「では、私はここまでですので。後は中の人に聞いてください」


 ボウヤーさんは笑顔で俺を見送ると、外から鍵をかける。

 えっ、鍵締める必要ある?


「おい! 新入りか! 早くこっちに来い!」


 突然、奥から熊のような髭面の大男が怒鳴ってきた。


「誰、あんた?」


「なんだあ、その態度は!」


 大男は大剣を抜き、こちらを威嚇する。

 なんだこいつ、短気すぎるぞ! 電子レンジ並にすぐ熱くなりやがる!

 俺は両手をあげ、降参の意を示す。


「新入りなもんで」


「早く来い。お前はこれから二十号だ」


 俺は突然番号で呼ばれると、無理やり狭い部屋に放り投げられる。

 三畳くらいでトイレと布団のみが敷かれた部屋というか牢屋である。扉すらなく鉄格子でありその姿はまるで動物園の動物。側には水の入った容器だけが置かれていた。

 大男はアトリエレーゴスの別作品を机の上に置く。


「今日はこれの贋作は五個作れ。それまで飯は抜きだ」


「冗談だろう? 俺は一日一個が限界だ」


「なら次の飯は五日後だな」


 そう言って大男は部屋の鍵を閉め去って行った。

 ここまでくればどんな馬鹿でも分かる。

 俺は騙されたのだ。


「助けてくれーーーーー!」


 俺は窓すらない刑務所に入れられた囚人の如く叫んだ。

 囚人生活、一日目。

 俺はいつもより速度を優先して二つ作るも、飯は出てこない。

 時折、扉についた鉄格子から警備員が作品の数をチェックしているがそれだけだ。


「まじで出さないつもりかよ……。死んじまう」


 空腹で朦朧としながら作成し、最後の五つ目の途中で俺は意識を手放した。


「ここは……天国?」


「残念ながら地獄のままだよ」


 俺は目を覚ますと、そこには眼鏡をかけたおっさんが座っていた。


「僕は七号。君が新入りの二十号だよね? ほら君の御飯だ」


 目の前の机にはパンとスープと薄い肉が置かれたプレートがあった。

 だが、それでも俺からすればどんな料理よりもごちそうである。

 周囲を見渡すと、簡易的な食堂のような場所であることが分かる。

 俺は料理を夢中で頬張った。

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