第2話 美少女(ゴリラ)
「今なら最強(予定)の俺をパーティに入れることができるがどうする?」
「いやあ、無職はちょっと……」
俺は半笑いで断られる。既に十回以上断られている。
よっぽど無職はレアなのか、俺の名は冒険者ギルド内でも一気に有名になった。
「無職っていうなやああああ! 俺はまだ高校生だっつううううの! 将来の勇者(自称)を断りやがって。後であいつの剣、ひのきの棒に代えておいてやるからな」
女神の与えた力に関しても全く分からねえし、もはや夢に思えて来たぞ。
俺はギルドを出て、外に置いてあった樽を思いっきり蹴り飛ばす。
誰も入れてくれねえし、ソロで仕事をさがすしかねえ。俺ならやれる。とりあえず、ドラゴンでも討伐して俺を馬鹿にした奴等を全員見返さねば……。
俺は決意を新たに、依頼ボードへ向かう。
そしてそれから二週間、俺は……土木作業員として汗を流していた。
「てめっ、もっと早く持ってこいやあああああああ!」
「うるせえ、爺! こちとらタコ部屋で寝不足なんだよおおおおお!」
親方の爺からの怒号に、丁寧に返す。
金のない俺は毎日、布団もない大部屋で、数十人の男達と雑魚寝である。とても辛い。
「誰が、爺だ! 給料やんねえぞ!」
「元々あってないような給料だろうが!」
異世界パワハラに俺は、真っ向から立ち向かっていた。
俺は大量のレンガを運びながら、爽やかに汗を拭う。
「汗をかくのが気持ちいい……訳あるか! 引きこもりどころか、生きていくのが精いっぱいじゃねえか! 駄目だ。魔物狩りにいかねえと、このままじゃ冒険者を名乗るのもおこがましいぜ」
二週間かけて貯めた金と元から持っていた銀貨二枚(一枚は冒険者登録した際にぼられた)を持って、剣を買いに武器屋に向かう。
その途中、少女が厳つい冒険者に絡まれているところを見る。
「おい嬢ちゃん。冒険者か? 俺が色々教えてやろうか?」
冒険者ギルド付近はリエン街と言って、日本でいう歌舞伎町並に治安が悪い。そのためこのようなことはしょっちゅうある。
だが、その少女は他より大きく人目を引いた。
まるで輝いているかのような銀髪のショートカット。
陶器のような白い肌に真っ赤な宝石のような瞳。そしてなにより目立っているのは白く大きな獣耳である。
仕方ねえなあ。イケメンな俺が華麗に救ってやるか。
「すまん、待たせたな。昼飯に行こうぜ」
俺は少女に声をかける。
ふっ、まるで本当に待ち合わせていたかのような自然な動き。
このスムーズな助け舟。俺が女なら惚れるね。
少女の手をとってその場から逃げようとする。
「下手な芝居してんじゃねえよ、待てや」
おっさんが少女のもう片腕を掴む。
ばれとるがな。
どうすればいいんだ、と考えていると、少女がおっさんに掴まれていた手を振った。
次の瞬間、おっさんは宙を舞い、近くの建物の壁に叩きつけられる。
轟音と共におっさんは壁に白目を剥いてめり込んだ。
ワッツ?
美少女かと思ったらとんだゴリラじゃねえかあああああああああああああ!
「あっ、お呼びじゃないようなんで帰りますね」
俺はそう言うと、すぐさま踵を返す。
だが、俺は一歩も前に進むことができなくなっていた。
なぜならゴリラに腕を掴まれているからだ。
「ナニカヨウデショウカ?」
「昼飯に行くって聞いたけえ」
少女はお腹がすいているのか、腹部をさすっている。
「あれはその場を切り抜けるための嘘だろうが!」
逃げようとするも、全く動けねえ。
こいつ……ゴリラすぎる!
「放せやああああ! お前になんで飯食わせねえといけねえええんだよおお!」
俺の叫びもむなしく、結局俺はこの半当たり屋に連れられ飯屋に居た。
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