人取り押し入れ

天川裕司

人取り押し入れ

タイトル:人取り押し入れ


ある日、近所の加奈子ちゃんが遊びに来た。

私が住んでるのは普通のアパートで、

加奈子ちゃんは時々私の家に遊びに来ている。


もちろん今日は私も仕事が休みだったから、

その日は加奈子ちゃんとずっと遊んであげた。

「今度かくれんぼしよ♪かくれんぼ♪」

加奈子ちゃんがそうねだってくるので

私も付き合ってあげることに。


「もういいかい?」「まーだだよ」

そんなやり取りが数回してから、

「もういいよ」と加奈子ちゃんの可愛い声が聞こえたので

私は早速探してあげることに。


大体わかってる。

この子が隠れると言ったらお風呂場の中か押し入れ。

そう、このかくれんぼも何度かやっていたのだ。


でもすぐに見つけちゃうとアレだからと、

私はわざと探すふりをして

加奈子ちゃんをちょっとでも喜ばせてあげようとした。


そのとき電話がかかってきて、

「ねぇ、うちの加奈子、行ってない?」

と相手は加奈子ちゃんのお母さん。何かひどく心配してる様子。


「あ、来てますよ〜♪」私は明るく返し、

「よかった〜もうどこ行ったのか心配で。あの子急にどっか行っちゃうから」


お母さんが心配してたので、

「加奈子ちゃん、ちょっと出てきて。お母さんから電話♪」

とちょっとかくれんぼを中断して、私はガラッと押し入れを開けた。

でも…誰もいない。

「…あれ?あ、お風呂場かな」

と行っても誰もいない。

他にもいろいろ探してみたが、

加奈子ちゃんが隠れてそうな場所の

どこにも加奈子ちゃんはいなかった。


「あれぇ?どこ行っちゃったの?」

途中で飽きて帰るような子じゃない。

だんだん心配し始めた私は本気で探した。

でも本当に見つからない。


「お、お母さん、加奈子ちゃんどこにもいないんです!」

「ええ?」

それから皆で探し回ったがどこにもおらず、

警察に捜索願を出して探してもらったがやはりいない。


でもその夜から部屋で寝ていると、

押し入れの中から子供の笑い声が聞こえてくる。

「まさか加奈子ちゃん…?」

と思って開けてみてもやっぱり誰もいない。


心霊現象…?私は怖くなり、すぐそのアパートを引っ越した。


でも本当の恐怖は、又そのあとでやってきたのだ。

私が住んでたそのアパートに

何人か新しい人が入ってきたが、

その何人もが全員、行方不明になっていた。


そんなある日、そのアパートの周辺を歩いていると、

「キャッキャッ♪」「ハハハ♪」

と小さな女の子の声と、何人かの大人の声が聞こえてくる。

耳をすましてみるとあの押し入れの方向だ。


この部屋はあれから人が入ってないようだが、

売り物件としてなぜか窓がいつも開けられていた。

その窓から押し入れが簡単に覗け、

ストレートにその声が聞こえてくるのだ。


管理人さんに頼んでその押し入れを

開けてもらったけどやっぱり誰もいない。

でも子供と大人の入り混じった笑い声。

楽しそうではあった。


それから数日後。

加奈子ちゃんが池のほとりで見つかった。

警察の調べでは、亡くなったのは

ちょうど私の家に遊びに来たあの日辺り。


あの部屋は事故物件なのに、

なぜか売り物件のままになっている。

誰も何も言わないのだろうか。

でも加奈子ちゃんが幸せなら…と、

その思いが一瞬よぎったのは本当の事。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=dTNHaWuhNEc&t=51s

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人取り押し入れ 天川裕司 @tenkawayuji

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