魔鏡

天川裕司

魔鏡

タイトル:魔鏡


私たち家族は引っ越してきた。

それまで住んでいたアパートからマンションへ。

今度はけっこう高級なマンションで、

それまで住んでたのが安アパートだったから

私は嬉しくなった。


セキュリティーもしっかりしてるし、

内装なんかも全部新しい。

ここで第二の生活が始まると思うと

本当にセレブになったような気がしてたまらない。


お父さんとお母さんとお姉ちゃんと私の4人暮らし。

ある朝、お父さんはいつも通りに会社へ行き、

お母さんは朝食の支度をしていた。


私とお姉ちゃんは起きてきて、そろそろ学校へ行く準備。

トイレに行ってから顔を洗い、

洗面所の鏡の前に立って髪型なんかを整える。

お姉ちゃんはすることが早いから、いつも私のほうがあとに残る。


「早くしなさいよ、遅れちゃうわよ」

お姉ちゃんが私に言う。

「わかってるわよ、急かさないで!」

なんて言いながら髪を整え、リップを塗って鏡の前から立ち去った。

でもその時ちょっとだけ違和感を感じた。


「朝ご飯できたわよ〜」

「んーいい匂い♪お姉ちゃん行こ」

と洗面所から出た所に立ってたお姉ちゃんにそう言い、

キッチンへ行こうとしたのだけれど、

「ん?お姉ちゃんどうしたの?」

お姉ちゃんはまったく無反応。

いつも2人揃ってキッチンへ

行く習慣がついてた私たち。


お姉ちゃんはそれから洗面所を覗き、

「まだなの〜?」と言った。その直後、

「あれ?裕子?どこ行っちゃったのよ…」

と洗面所に入っていった。


「…何やってんの?お姉ちゃん私ここだよ」

と言おうとした次の瞬間…

「キャアアァアァ!」

お姉ちゃんが思いきり悲鳴をあげた。


その声を聞いてキッチンからお母さんが飛んでくる。

「ど、どうしたのよ!」

「こ、これ…!これ…!」

鏡を指差すお姉ちゃん。

私はその2人の光景を

ただぼう然と突っ立って見てるだけ。


2人に近寄って見てみると、

「…え?…これ、なに…?」

まったく無表情な私が鏡の中に映ってた。


さっきからずっと気になってたけど、

お母さんにもお姉ちゃんにも、私の姿は見えてないようだ。

それから鏡の中の私はスッと消えた。


学校へも行かず、ずっと私はこの家にいるのだが、

お父さんもお母さんもお姉ちゃんも

私がどこへ行ったのか分からなくなったようだ。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=6JnGhaR7rDE

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魔鏡 天川裕司 @tenkawayuji

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