携帯電話

天川裕司

携帯電話

タイトル:携帯電話


俺はある日、携帯電話を拾った。

交番に届けようかなぁなんて思ったけど、

その時どうしてもお金に困っており、

携帯電話が買えなく、その携帯電話を欲しいと思っていたので、

つい魔がさして、

「…ちょっとだけもらっちゃおうかな」

なんて考えちゃったんだ。


拾って画面を見るとトップメニューが映り、

美しい楽園のようなものが壁紙に使われてある。

それから電話をかける相手はいなかったので、

俺はネットを楽しもうとSNSを歩きまわり、

YouTubeをサーフィンしていた。


そして帰ってきてからも携帯をずっといじくりながら、

散々楽しんだ後、そろそろ寝ようかなぁと思った。

すると「ピリリリリ!」と古い着信音が鳴った。

「音楽とかにしてないんだ」

なんて思い、電話に出てみると、

謎の声「ありがとう。よく拾ってくれたね」

と変な声が聞こえた。


女の人の声?…なんて思いながらも

思い当たる節がない。

「も、もしかして、本当に持ち主…!?」

この状況からして持ち主しか考えられない。


「す、すみません!すみません!すみません!」

と俺は何度も謝り、

「すぐに返しますから、今、どこにおられますか…?」

なんてまた無茶なことを言ってしまった。

罪の意識が瞬間的に膨れ上がり、

まるで出来もしないことを言った様子。

いやいや、でも絶対返さなきゃならない。


すると電話向こうの彼女は、

謎の声「そんなに謝らなくても良いですよ?拾って頂けただけでも有難いんですから。それに良い人そうでよかった」

そんな嬉しい事まで言ってくれ、

俺は益々「返さなきゃいけない」気持ちに火がついた。


謎の声「それじゃあすみませんが、S通りの裏路地に公園ありますよね?ご存知ですか?」

よく知ってる場所。

「え、ええ、ええ、知ってますよ?」

謎の声「そこに携帯電話、持ってきてもらえますか?」

「あ、はい!分かりました…」


一瞬、男が数人待ち構えて女が真ん中に1人おり、

俺、ボコられないか…?なんて心配した。


でも行ってみるとそんな気配はない。

ここはよく知っている場所。

大学に通っていた時、よく通学に使っていた道だ。

でも、公園前に着いても誰もいない。


「まだかなぁ」

と思っていると電話が鳴った。


謎の声「すみません、遅くなりまして。その公園入って突っきった所に『緑の富士』ってありますよね?そこ知ってます?」


「え、ああはい!知ってますけど」


謎の声「そこまで来て頂く事って出来るでしょうか?ちょっと用事済ましてすぐだったので、私そこで待ってますので」


よくわからない内容だったがとりあえず行ってみた。

でも急に不安と言うか、なんでそんなこと言ってくるんだろう?

ここで落ち合えば良いのに…なんて当然に思う。

彼女がさっき言った「緑の富士」ってのは、霊園なのだ。

誰かのお墓がいっぱい並んでる所。


そこまで行くとまた電話が鳴り、

謎の声「今あなたが立ってる目の前のお墓に、携帯電話、置いてください」

「…は?え、ええ?ど、どう言う事でしょう…」

謎の声「…置いてください」


置くと、その携帯電話はスッと消えた。

「……………」

一瞬、言葉を忘れた。

さっきまでとは全く違った恐怖がやってきた。


そして更なる恐怖はその墓標の文字。

「坂崎家」……偶然なのかもしれないけど、

最近、高校の時に付き合っていた

彼女の事をよく思い出したりしていた。

その彼女の名前が坂崎静美(さかざき しずみ)。


今どこでどうしているのかわからない。

もしかして…とちょっと思ったりしている。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=74boNlroiiA

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