第14話.ゲームセンターでの一幕
月曜日の放課後……
学校から徒歩で約二十分程度で、二人は近場のゲーセンに辿り着く。
「何するよー?」
「俺、小銭無いから両替してくるわ!」
「あ、ちょ、おい。」
奏多の制止を聞かず、入って奥にある両替機へ姿を消す和希。
頭をかきながらも気を取り直し、UFOキャッチャーのあるコーナーへとひとりで足を運ぶ。
「・・・・・・。」
「くっそー。なんで取れねんだっ!」
半泣きになっている金髪ボブのギャルが、一切景品を掠らず絶望的なプレイスキルでUFOキャッチャーに向かい合っていた。
見たところどこかの制服を着ているようだが、ここら辺では見たことの無い高校の制服だ。
「こうかっ?これで・・・・・・あーーーくそっ!なんで掴むことすら出来ねんだよ!」
「あのー。」
「あ?なんだよ!」
ギャルは八つ当たり気味に、こちらに振り返り睨む。
青く透き通った瞳。
振り返り様に香水の匂いが鼻腔を擽り思わずドキッとしてしまう奏多。
美鈴たちと引けを取らぬ美少女であったことは間違いない。
「あ、すんません!つい。」
はっ!と自らの態度を改め、頭を下げるギャル。
見た目と口調からは、見て取れないが根が良い子なのかもしれない。
「次俺がやっても良いか?」
「あー・・・・・・うー・・・・・・仕方ねえっす。」
そのまま一礼して背を向けるギャルに奏多は声をかけ制止する。
「あ、ちょっと待って。とりあえず見とけ。」
「?」
可愛らしく首を傾げるギャルに、言葉を返さずUFOキャッチャーに向き合う。
あくまで素人だが、これでもUFOキャッチャーと向き合ってきた数は知れず。
まずは、捨ての戦法としてアームの強度を確かめるために100円投下するに限る。
「ははは・・・・・・。無理っすよ。アタシは既に5000円消し飛んでるんっすから。」
「まじかよ・・・・・・。」
よし。左アームが若干強いな。
「次でとるぞ。」
今狙っているのは、大量に置かれた熊のぬいぐるみだ。フィギュアなどのパッケージの方が余程取りやすい。
「無理っす無理っす。」
諦めたように首を振るギャル。が次の瞬間。
ガタンと取り出し口に何かが落ちる。
「はぇ!?!?」
「ほらとれたぞ。」
思わず。と言った表情でギャルは奏多を見やる。
「くぅーーー。目の前で取られちゃうなんて・・・・・・。やるっすね・・・・・・。」
「ほれ。」
奏多は、ギャルに熊のぬいぐるみを差し出す。
「?」
「さっきの悔しそうな君があまりにも見てられなくてな。」
みやと何度もゲーセンに来ているがUFOキャッチャーで景品を一切とったことがないあいつの悔しがり方とどこか似ていたが・・・・・・。
余計なお節介だったか?
「え?いいんすか!?」
「どうせ俺が持ってても意味ないからな。」
「いやでもさすがに悪いっすよ・・・・・・。見ず知らずのアタシにって・・・・・・。」
「いいんだよ俺がやりたくてやった事だから。」
しばらくの沈黙の後、ギャルが何かを思いついたように紙とペンを鞄から取り出す。
「・・・・・・っと。よし。お兄さんこれアタシの名前と連絡先っす!」
「いや!それこそダメだろ!見ず知らずの男に!」
「いいんすよ!お兄さんだから渡したんっす!あ、でも勘違いはダメっすよ?他の男にこんな事しないっすからね?」
紙には『西条マリ』というギャルの名前と連絡先が確かに書かれていた。
「じゃあアタシもう行くっす!」
「あ!ちょっと待・・・・・・」
「じゃあさらばっす!」
ピシッと敬礼すると、ゲーセンの外へと走っていくその後ろ姿に元気だなっと若干微笑む奏多。
「おっすー。ってどうしたお前一人でニヤけて気持ち悪い。」
「うるせえ黙れ。」
「黙りはしねえけどよ。レースゲームしようぜ。」
こいつ絶対、この前一勝したことで味をしめたな。
「・・・・・・やってやるよ。」
「はーん。吠え面かかせてやるよ?」
ふん。いつまでも俺が立ち止まっていると思っているならばこいつはバカだな。
あの日の負け以来俺は幾度となくプレイし、スキルを磨いた。
「その言葉そっくりそのまま返してやるよ。」
「じゃあ負けたやつ今度飯奢りで。ん―そうだな……紬と美鈴ちゃんも誘うことにしよう」
「てめぇ……自分が一度勝ったからって……」
「おーおー!なんとでもいえや!」
激戦の末、勝利を勝ち取ったのは奏多であったため、自らが課した罰ゲームを行う羽目になった和希であった。
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俺のラブコメが義妹一色になりつつある 〜学校の四人の姫に何故か好かれています〜 望米 @mochi_gome
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