預言者
イシイ
第1話 予兆
「なぁ、今日はやけに虫の声が聞こえるな。」
隣で横になっている妻の靖子は不思議そうな顔をしている。
「え?何も聞こえないけど・・・いつも通り静かよ。」
そんなはずはない、さっきからジィージィージジジジジジジジジと、うるさいじゃないか。
「ひょっとして、耳鳴りじゃないの?」
「耳鳴りって、キーンとかピーじゃない?」
こんな虫のような音しないだろ。そう思いながらも達夫は耳を塞いでみる。周りの音が遮断されてもジィージィージジジジジジジジジという音が聞こえてくる。
「うわ、ほんとだ。耳鳴りか、これ。まいったな。」
「もう寝たら?1日寝たら治るんじゃない?」
靖子の言う通りかもしれない、達夫はいつもより少し早いが寝ることにした。
翌朝、靖子から「耳鳴りはどう?」と聞かれるまで耳鳴りの事は忘れていた。すっかり治ったようだ。達夫はいつものように朝食を食べ家を出る準備をした。
「今日も遅くなるの?」
達夫はここ最近残業が多い。
「そうだな。まぁ、ちょっと遅くなると思う。帰る時に連絡するよ。」
そう言って駅へと向かった。
達夫は電車の席を確保して落ち着くとスマートフォンを取り出しSNSのアプリを開く。今日は何件の”いいね”が付いているだろうか。昨日投稿したランチの写真。あのエビフライ、かなり大きいし見栄え良かったからなぁ。そう思いながら開いた画面には、6件の”いいね”が付いていた。まぁまぁじゃないか。達夫のフォロワーは80人に満たない。そのうち6件なら良い方だ。そう思いながらも、いつか1万を超える”いいね”がもらえる日を夢みて投稿を続けている。
自分の”いいね”をチェックした後は、フォローしている人たちの投稿を見て”いいね”を付ける。おっ、この人の”いいね”凄いな。3万超えてるぞ。
『今日の午前中。関東地方で地震あり。結構大きめ。みんな気を付けて』
確かに、昨日の午前中に東京で震度4の地震あったな。預言が的中で3万以上の”いいね”が付いてるのか。俺にもなんか預言でも降ってこないかな。そんな事を考えているうちに会社の最寄り駅に電車は到着した。
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