ゲーム ~誰もが等しく一人のプレイヤーになれる場所~

メグリくくる

○序章 <風人>

「風人、そっちに行ったぞ!」

「わかってるよ!」

 焦ったような律の声にあわせるよう、僕は汗をぬぐうのを後回しにして行動を開始した。

 敵に向かって体を突っ込ませる、ように動かすため、コントローラーを操作する。

 僕の操るキャラクターが、敵キャラの進路を塞ぐように、前方に躍り出た。

 しかしそのキャラも、僕らとは別の人間が動かしている。

 相手プレイヤーも必死になって、指を動かした。

「思い通りにいかせないよ!」

 敵キャラが僕のキャラを押しのけようと、攻撃を開始。それをガードするのだけれど、防御したため一瞬行動が止まってしまう。

 僕のキャラが動かなくなったスキを見逃さず、敵キャラはこちらをつかんで投げ飛ばした。

 相手が僕を追撃しようとするのを防ぐため、画面上で律のキャラがこっちに向かってくる。

「フォローする!」

「ごめん!」

 そう言いながら、僕はさっき拾ったアイテムの銃を、律の背後に向けて撃った。彼女のキャラを狙う、もう一体の敵キャラが僕の攻撃で吹き飛ぶ。

 僕らは今、二対二の対戦ゲームを必死になってプレイしていた。

 しかも小学五年生の僕と律の対戦相手は、会社に勤めている大人。

 10歳以上も年が離れている僕らはそういうものを抜きにして、テレビ画面へ前のめりになりながらゲームをプレイしている。

 知らない人が見たら、何をやっているんだ? と思われるかもしれない不思議な光景。

 でも僕らには、本気でゲームをする理由があった。

 

 それを語るには、少し時間を巻き戻して説明する必要がある。

 それは僕らが小学五年生に進級した、四月の始業式のことだった。

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