可愛い嫁
数週間後、夏休みは終わった。
澪と色々なところにデートしたり、俺の家で宿題とかゲームをしたり……今まで童貞男子だった俺にとって、彼女と一緒に夏を過ごせたのは何よりも幸せだった。
クラスメイトは皆、夏休み明けだからか、少し眠そうだった。
もうちょっと休みたいと声をあげている生徒、夏にイベント行ったことを話し合う生徒など、様々な生徒がいる。
俺は澪と恋人同士になって、幸せな日常を過ごせたので、このクラスで一番の勝ち組だといえよう。
彼女はいつも通り、眠っていた。
周りの視線を気にしているのだろう。
まあ、俺も気持ちはわかる。
夏休み、俺達は本物の恋人同士になった。
甘い生活を過ごしながらお互いをより知ることができて、本当に嬉しいと思う。
けど、それを学校でも同じようにできるかというと……難しい。
夏休み前と同様、俺達は軽く挨拶をして、あとは昼休みまで静かに授業を過ごした。
それから夏休み、俺達は屋上にいた。
隣同士で座り、澪の手作り弁当を食べている。
今日の手作り弁当は、おにぎりに唐揚げ、卵焼きやハンバーグなどたくさん入っていた。
「すごく豪華……休み明けでも女子力の高さを活かしていくあたり、澪は本当に素敵な彼女だ」
「ふふっ、ありがとう。青って、私のから揚げ特に好きでしょ?休み明けだから、少し大人しいメニューにしようかなって思っていたけど、青に喜んでもらいたくて……えへへ……」
澪は照れ笑いを浮かべながら、体をモジモジさせてこちらに視線を向ける。
さりげなく腕に抱きついてくるので、相変わらずのあざとい萌え行動が自然過ぎて可愛くてドキドキした。
「本当に可愛いよなぁ、澪って……」
「えへへ……ありがとう。けど、青も素敵だよ。かっこいい……他の女子も見ていたからね?」
「他の女子!?え、そんなに変わったか、俺……筋肉がついただけだと思うけど……」
「それだけじゃないもん……青、私と恋人同士になってから逞しく見えるというか……と、とにかく女の子からしたら、今の青は魅力的で……むぅ……」
澪はムスッとした顔で強く俺に腕に抱きつきながら、大きくて柔らかい胸を押しつけてきた。
いきなり俺の理性は削られ、顔とか耳が赤くなっていく。
夏休みに澪とイチャイチャラブラブしていても、やっぱりこの感触には慣れていない。
「ど、どどどどどどうしたの!?お、俺……何かまずいこと言った?」
「そういうわけじゃないけどさぁ……他の女子に青を取られたくないの……」
「え、ヤキモチ?可愛すぎるだろ」
「い、いいでしょ!?青がかっこいいせいで、教室でも全然眠れていないんだから……」
「寝ていなかった……え、まさか俺の周りを見ていたとか?」
「そうだよ……夏休み明けから、他の女子が青に近づいて誘ってくるかもしれないじゃん。青はそんなにチョロいとは思っていないよ。いつも私だけを何よりも誰よりも大切にしてくれているの知っているから……けど、うちのクラス、可愛い子ばかり……」
「ああ、たしかにそうだよな。なんか、この前他の男子が、うちのクラスだけ可愛い女子だらけで勝ち組!!とか言っていたな」
「偶然かなぁ……この学校、クラス替えがないから、卒業まで他の女子に気をつけて過ごすべきだね」
「そ、そこまで大げさに考えなくても……大丈夫だよ、俺は澪だけを愛しているから」
「もぉ……こんなに心配しているのに……けど、本当にそういうところが大好き!!私も青のこと愛しているからね……ちゅっ」
彼女は少しだけ怒った表情を見せてから、可愛い顔を近づけて軽く俺の頬にキスした。
体があつい、目とか脳とか全身の血液が熱でおかしくなりそうだ。
「ちょ……いきなりはずるいって……」
「……ごめんね、急にほっぺにチューしちゃって。けど、このくらいのスキンシップを学校でもした方がいいかもしれないね。むしろ、教室でイチャイチャラブラブ……」
「それはマジで恥ずかしいというか、クラスで話題になって、からかわれるよね」
「むぅ……青の照れ屋!!私を家に連れてきた時はあんなに大胆だったのに……」
「場所にもよるってこと……まあ、教室で少しくらいイチャイチャラブラブした方がいいかもしれない」
「でしょ?じゃあ、午後からは私が青の両脚の間に座って、一緒に授業を……」
「授業態度で怒られるよ!?というか、いきなり大胆すぎるでしょ!?」
「じゃあ、休憩時間に私を抱いて」
「……体を寄せるぐらいで良いんじゃない?」
「あ、良いね!!じゃあ、午後からはそれでいこう!!」
澪は嬉しそうに微笑んだ。
よっぽど、他の女子が周りにいる教室で俺との関係を見せつけたいのだろう。
まあ、俺も夏休み明けに勝ち組になったことを見せびらかしたい……という気持ちは強い。
休み明けのクラスを見ると、恋人ができた生徒はいないようだ。
ふふ、今まで普通以下のモブキャラ男子高校生だった俺が、今をときめく勝ち組男子高校生になったからなぁ。
羨ましいだろぉ………って、俺も澪と同じ考えをしているじゃないか。
やっぱり、俺達本当に性格とか価値観も似ていて……素敵なカップルになれて良かった。
そんなことを考えていると、澪がおにぎりを手に取り、俺の口に近づける。
「はい、あ~ん。おにぎりの具は昆布だよ」
「あむ…え、美味い!!俺の知っている昆布おにぎりよりも、なんだか、米がもちもちしていて……あむ……昆布もすごく味が染みわたっていてるよ!!」
「良かったぁ……ふふ、青の好きな具は全部知っているから、少し自分なりに味を調整してみたんだ。喜んでくれて、ありがとう」
「お、俺の方こそありがとう!!こんなに美味しいおにぎりを、たくさん作ってくれるし、から揚げ、卵焼き、ハンバーグ……マジで俺の嫁だな。澪よりも良い女なんて、この世にいないよ」
「~っ!?」
俺の言葉に澪は顔をリンゴ飴に負けないくらい赤くして、腕に顔を埋めながら息を乱していた。
「すぅ……はぁ……」
「え、澪?どうかした?」
澪の顔を窺うと、彼女は顔をあげてトロンとした顔でニヤニヤしていた。
「えへへ……えへへぇ………もぉ、青ったら……恥ずかしいよぉ。俺の嫁とか……ドキドキしちゃう……」
「ご、ごめん……いきなり嫁とか早いよな。けど、それぐらい俺は澪を愛しているんだ。それはわかってほしい」
「うん、伝わってる……青の気持ち、嬉しいよ。私、不安がなくなったかも……ありがとうね」
「澪が安心して、良かったよ」
「ふふ、私も青のこと、愛しているからね。未来の旦那様……はい、あ~ん」
澪は幸せそうに微笑みながら、優しくより体を密着させておにぎりを口に近づける。
胸もなんだか、ムニュムニュ………どころか、ムニュムニュムニュムニュって、いつも以上に擦りつけてくる……。
甘えたがりで、感情豊かでエチエチな澪との新婚生活……やばい、めちゃニヤニヤしてしまう。
高校卒業後、澪と一緒に同じ大学に通って、大学卒業後は年収がかなり高い職に就いた方が良いかもしれない。
公務員とかいいかもね。
帰宅が遅かったり、疲れてイチャイチャラブラブする余裕も無かったら、澪を悲しませることに……それは、一番マズいことだ。
彼女との幸せな結婚生活を無事に叶えるには、それなりの計画、努力が必要だ。
「あむ……澪、俺さ……公務員目指すね」
「え、どうしたの?」
「澪を幸せにするから、安心してくれ」
「な……ななな何をいきなり……もぉ……プロポーズ早いよぉ……えへへ、あむ……」
澪は嬉しそうにニコニコしながらハンバーグを食べていた。
小さい口でハンバーグを味わっている姿は、まるで小動物みたいで、とても可愛かった。
「青……」
「ん、どうした?」
「キスして………ん」
澪は俺の太ももの上に座り、向かい合った状態で唇を近づけてくる。
もちろん、全身に熱が帯びて汗だくになった。
この体勢もかなり男の心を刺激するものだな。
「あ、ああ……」
俺は澪の背中に手を回して優しく抱いた後、顔を近づけた。
お互いの唇は重なり、甘い味がした。
いつも俺の理性とか心を乱していくこの味……やっぱりずるい。
けど、そんなずるいところも俺は好きだ。
俺達は誰もいない屋上で蕩けるようなキスをして、昼休みを幸せに過ごした。
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