掛け違えた恋

saito sekai

1話完結800字小説

11月の黄色くなり、落葉した銀杏の葉をゆっくり踏みしめながら、片手に珈琲を持ち散歩を楽しむ。そんな時間を愛おしいと思う私は、48歳の独身女だ。不足を言えば色々出で来る人生でもあるが、仕事は順調。外見磨きを頑張っているので、30代にも間違われる時もあったりする。その時々に男性は現れたが、縁がなかった。

一生一人でも良いと思っていたが、なんとこの年で、釣り合いそうな彼が出来たのだった。話が合うし、楽しいし安らげる。結婚の二文字が心をよぎった私だったのだが・・・


「来週の金曜日僕の誕生日だから、一緒にお祝いしてね」と言われ、私はプレゼントは何にしょうかと考えていた時、ふいに(彼って何歳なんだろう・・そういえば、聞いたことないなぁ)と思考が停止。カフェに向かい合わせに座った彼に、私は初めて聞いたのだった。


「あなたって、幾つになるの?」と。


すると彼は実に無邪気な顔で答えたのだった。


「ああ、僕?30歳になるんだけれど・・・」

それを聞いた私は、そんな馬鹿なと心で叫ぶ。だって、白髪は目立っているし、全てが50男にしか見えない風貌、体形だったからだ。


二人の誕生日パーティーの前に、私は彼に別れを告げた。彼は私の年齢を知っても、構わないと言ってくれたのにもかかわらずだ。


女は・・いや私はあんまり外見に拘る男というのもいかがなものかと考える一方、あんまり外見に気を使わない人も嫌なのだ。例えで言うなら、私以外の異性に対して、モテ意識全開されても嫌だし、かといって全く無頓着というのも、冷めてしまう。絶妙なバランス感覚でいて欲しいと思うのは、欲なのだろうか?


後一か月でXmas。今日も一人珈琲を楽しんだ私はカフェを出た。トレンチコートの襟を立てて、街角を歩く。ふと空を見上げると小さな雪が降ってきた。ふと、涙が滲んでくる。もしかして、こんなこと思うから一人なのかな・・・そう思っても、後ろを振り返らない私なのだ。  完

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

掛け違えた恋 saito sekai @saitosekai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ