第5話 感情の共有

コミュニティセンターでの体験から数日後、あきらは再び感情日記を書き続けていた。毎日少しずつ、心の中の思いを言葉にすることで、自分自身を見つめ直し、成長していく感覚があった。そんなある日、宮田さんがあきらの家を訪れ、新たな提案を持ちかけた。


「実は、今度の週末に感情日記のワークショップを開こうと思っているんです。あきらさんも参加してみませんか?」


宮田さんの提案に、あきらは驚きつつも興味を持った。「感情日記のワークショップ…ですか?」


「そうです。あきらさんのように、感情を言葉にすることで自分を見つめ直すことができる人が増えてきています。その経験を共有することで、もっと多くの人が自分自身を解放できるようにしたいんです。」


その言葉に、あきらは深く共感した。彼自身、感情日記を書くことで救われた部分が多かった。もし自分の経験が他の人の助けになるなら、それは素晴らしいことだと思った。


「ぜひ参加させてください。」


週末、あきらは宮田さんと共にコミュニティセンターに向かった。そこには、既に多くの参加者が集まっていた。みんなそれぞれの背景を持ち、感情日記を通じて自分を見つめ直そうとしている人たちだった。


「皆さん、今日は集まっていただきありがとうございます。今日は、感情日記を書きながら、自分の感情を共有し、共感し合うことを目的としています。」宮田さんが開会の挨拶をした。


あきらは緊張しながらも、ワークショップの流れに従ってノートを開いた。初めて感情日記を書く人もいれば、既に日記を書き続けている人もいた。あきらは、自分がどのように感情日記を始めたのか、そしてそれがどのように彼を変えたのかを話すことになった。


「私は、長い間引きこもり生活を送っていました。外の世界と断絶し、誰とも話さずに過ごす日々が続いていました。そんな時、宮田さんと出会い、感情日記を勧められました。最初は何を書けばいいのか分からなかったけれど、少しずつ自分の感情を言葉にすることで、心の中のモヤモヤが晴れていくのを感じました。」


あきらの話に、参加者たちは深く聞き入っていた。彼の言葉には、真実味と共感を呼ぶ力があった。


「感情日記を書くことで、自分の中に閉じ込めていた感情を解放することができました。そして、他の人たちとその感情を共有することで、新たな繋がりを感じることができました。」


あきらの話を聞いた参加者たちも、それぞれの経験を話し始めた。誰もが抱える悩みや不安、喜びや希望。それらを共有することで、会場には温かな連帯感が生まれていった。


ワークショップが終わる頃、あきらは心が満たされるのを感じた。自分の経験が誰かの役に立つこと、それがこんなにも素晴らしいことだとは思わなかった。


「今日は本当にありがとうございました。これからも、感情日記を書き続けていきましょう。そして、お互いに支え合っていきましょう。」宮田さんの締めの言葉に、参加者たちは大きく頷いた。


帰り道、あきらは宮田さんに感謝の気持ちを伝えた。「宮田さん、本当にありがとうございました。今日の経験は、僕にとって大きな一歩です。」


「それは良かったです、あきらさん。これからも一緒に頑張りましょうね。」


あきらは宮田さんと別れ、自分のアパートに帰ると、早速その日の出来事を感情日記に書き綴った。


「今日は感情日記のワークショップに参加しました。自分の経験を他の人と共有することで、新たな繋がりを感じることができました。これからも感情日記を書き続けて、自分自身を見つめ直していきたいと思います。」


その投稿には、いつも以上に多くのコメントが寄せられた。読者たちはあきらの成長と変化を喜び、励ましの言葉を送ってくれた。


あきらの新たな一歩は、また一つ確実に前進していた。感情日記を通じて自分を見つめ直し、他の人と共感し合うことで、彼は確かな希望と自信を持ち始めていた。これからも、彼の心には確かな希望が育っていくことを信じていた。

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