勝手にインタビュー!(すべてセルフです)

西奈 りゆ

第一回 作品への思い

インタビュアー:砂原(仮名)

受け手:西奈りゆ


砂原:このたびは、デビューおめでとうございます(※フィクションです)。


西奈:ありがとうございます。


砂原:西奈さんの作品をいくつか拝読したのですが、幅広いようでいて、一貫しているテーマもあるようにも感じます。書き分けのようなものは、されているのでしょうか?


西奈:そうですね。書くにしても読まれるにしても、飽きがこないようにしたいので、なるべくいろいろな書き方を試しているところです。短編は特に、その色合いが強いですね。以前はダークというか、人間のほの暗い部分を強調した作品が多かったと思いますが、最近は少し柔軟な作品が出せるようになったように思います。


砂原:なるほど。長編の、特に今回取り上げられた「口に合わない望みは食えない。」と、メインで同時連載されている「りん。」については、いかがでしょうか?


西奈:書き始めた当初はそれぞれあまり意識していなかったのですが、今振り返ってみるとある種の生きづらさがテーマにあるのかなと思います。「りん。」のほうではよりシリアスな問いとして差し迫ってくるのですが、「等身大で生きられない」みたいな、そういう不安とか、心もとなさがテーマにあるのかなと思います。


砂原:「等身大で生きられない」・・・・・・。それは、自分に対して、ということでしょうか?


西奈:個人的な意見なんですが、「等身大」っていう言葉自体、すごい矛盾を背負い込む運命の言葉だと思うんです。例えば、「社会」っていう箱の中で生きていると、その良い面も悪い面もひっくるめた箱の中で、どこまで「等身大」が許されるのかっていう。大きすぎて箱に収まりきらなければ息が詰まるし、自分があまりに小さいと、反対に、大きな空間に取り残されたような気持ちになっちゃう。他の人はみんなぴったりか、それなりにサイズの合った箱に収まっているように見えて、自分はそうじゃなくてつらいみたいな・・・・・・。だから、「等身大で生きていいよ」って、それは確かにそうなんですけど、僕は乱発できないし、力量的にも無理だと思っていて。

そういうわけで、「等身大で生きられない」っていうテーマは、自分に対しても、他人、あるいは社会といってもいいですけど、そういういろんな対象に対して、自分の居心地が良くないような、そういう視点を表現できればいいなと思っています。


砂原:なるほど。「口に合わない望みは食えない。」は、そのテーマがより前面に出ているように感じます。


西奈:主人公の登理のぼりの境遇が、目に見えて大変というわけでもないけど、かといって充実しているかというと、そうではない。どちらかと言えば、欠けた部分を意識しないで毎日をやりすごしている、という感じで書いています。かといって、ドラマティックな展開も、そうそうないし、とりたてて特別な人もでてこない。けれど物語は進んでいく・・・・・・その動きを大事にしながら書き進めていきたいと思っています。


砂原:「りん。」のほうは、そうするとやや対照的に思えますね。主人公の琴音は、真っ向から生きることに対峙たいじしているというか。


西奈:年齢的なものと言いたいところですが、琴音の場合は、彼女の経験を強く意識して書いています。「思春期危機」という言葉がありますが、その一言では絶対にくくれない彼女の体験、彼女とりん、そして登場するキャラクターたちだからこそ掴んでいけるもの、失っていくもの、取り戻すもの、そういう視点を通して、「死にたくなる現実を生きる」ようなテーマを描ければと思います。


砂原:西奈さんの作品を読まれた方からは、感情の表現力を評価する声も多いようでうが、その点はどうお感じになられていますか?


西奈:それは本当に嬉しいです。もともと、怒涛の展開で魅せる作品よりも、例えば島本理生(作家)さんのような、淡々としているけれど圧倒的な余韻や存在感がある作品というか、そういう方の作品への憧れがありましたので。それに、さっきの話になっちゃうんですが、それが僕の「等身大」なので、そこから読み手様に手渡せるものがあったんだっていう思いで、すごく大きな励みなんです。他にもいろいろな感想をくださっている方がいて、ときには「この話って、そんなふうに読めるんだ!」っていうような驚きもあって。いずれにしろ、いつも感謝しきりです。


砂原:お時間が迫ってきましたが、西奈さんの作風に、もっとも影響を与えたと思われる作家さんはいらっしゃいますか?


西奈:語ると止まらなくなるのでお名前のみで失礼しますが、島本理生さんの影響は圧倒的にあると思います。人生で唯一ファンレターを出した作家さんです。あとは小川洋子さん、最近だと、村田沙也加さんや海外の作品にもすごくはまっています。


砂原:なるほど。機会がありましたら、ぜひその辺りのお話もうかがえればと思います。最後に、読者の方に対して何かメッセージがありましたら、お願いします。


西奈:たくさんの作品の中から、お目に留めていただき、ありがとうございます。

皆様の琴線に触れる何かが書けるよう、一生懸命に頑張りますので、よければ応援をよろしくお願いいたします。


(第二回に続く・・・・・・かも?)



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る