俺のウラガワ宇留賀さん

ごもくおにぎり

第1話「あのー。君が死ぬと困るンだけど」

※あー。テステス。なんだ……その。本作には鬱の描写や自殺の表現があるので苦手な人は注意してね。いい? 警告したよ? それではいいエンタメを。

 

 スマートフォンから流れる機械の合成音声の音楽。机に置いてある青い光を放つノートパソコン、布団の上にぺたんと座り充電コードを震えた手で握りしめる少年。


「よし……。やるぞ」


コードを部屋のドアノブに巻き付け、吊るし、頭が入るほどのわっかを作る。首つり自殺。体の重さで首に絡まったコードが引き締められ気道が遮断される。そして死に至る。


 唾を飲み。コードに頭を通す。何回目だろう自殺を試みたのは。今回こそ苦しまずに逝きたい。


『あのさちょっと待とう?』


 気だるそうな女性の声が部屋に響く。親か? 親にしては聞いたことのない声だな。まぁ。関係ないか。あとは体重をかけるだけでいい。やっと楽になれる。


 体重をコードにかける。コードは気道をギュッと締め付け、次第に息が苦しくなっていく。


『おいおいおいおいおいおいおいおいおい!! ちょっと待てよメテオ!!』


「うるさい!!」


 のどに力が入りコードが緩む。重力に従い、地面に顔から落ちる。


『いったぁ』


 まただ最近になっての出来事だが、女の声が聞こえる。主に自殺や自傷をするたびに。最初は幻聴だと思っていたけど次第にその声は大きく、鮮明になっていく。


 単に無視すればいい話なのだがシンプルにうるさい。なんかオーディオインターフェースでも使ってるんじゃないかってくらいエコーがかかってるときもあれば、ひどく音が割れているときもある。なんなんだほんとに。


悠真ユウマ? 聞こえてるなら応えて。まだ死ぬな』


「誰だよお前。最近ごちゃごちゃうるさいよ?」


『やった!! やっぱ届いてたんだねぇ』


 女の声が上ずる。


「わかった。一旦休憩しよう。で? 何?」


『ハ〇ビンホテル見なおそーぜ』


「自殺邪魔しといて言いたいことそれ?」


『あーなんだ。じゃー45る? 私がしてあげようか?』


「てか名乗ってくれ。お前が誰で何者なのか」


『待ってたわそのセリフ』


『私。宇留賀ウルガ。27歳。女。趣味は……小説を書くこと』


 宇留賀と名乗る女性は丹丹と自己紹介をする。ナニコレ? 幻聴にしてはハッキリしすぎじゃね? 幻聴ってせいぜい単語が聞こえるだけじゃないの?


『あー。とりま説明するね。解離性同一性障害って知ってる?』


 なんかやばそうな名前出てきたな。なんか聞いたことあるなぁ。嫌な予感しかしない。


『あー。ミリしらか。簡単に言おう。キミの人格は私、宇留賀と東雲悠真シノノメユウマに分離したってわけ』


「は?」


『信じがたい話だと思うけど本当のことだから。机の右の引き出し引いてみ。そこに証拠がある』


 首に絡まったコードをほどき。机の右の引き出しを恐る恐る引く。


 中に入っていたのは1か月前くらいに失くしたお気に入りのシャーペンと黒いノート、そして開封済みのタバコ。え? ノートを手に取り、ペラペラとめくってみる。


 中には自分のものとは思えないような綺麗な字で物語がつずられていた。


『あー。それそれ。私が書いたやつ。タバコはオキニのやつ。なかなかいい感じに書けてるっしょ』


 点と点が線で結ばれる。


「え? まじか」


『よーやっとカラダ乗っ取れるようになったんだ。死なれたら困る。正味悠真は死んでても生きててもどうでもいい。だけど私の小説が完結するまでは死なせない』


 状況を整理しよう。俺の中には2つの人格があって、そのうちの一人が

小説家の宇留賀。で、自殺が失敗したのは宇留賀のせい。某呪い系漫画の主人公かよ。


『ちな私と一緒にいるといいこともあったりなかったり。キミ寂しいのがすごく嫌いだろう? それはそれは死ぬことよりも』


 こいつ言ってることがほぼ全部当てはまっててうざい。寂しさが埋まるのならそれでもいいか。


『え!? いま私に対していいかもって思った? 思ったでしょ~? このこの~?』


「わかったよ! もう少し生きてやる!」


『いいね。その域だ。あわよくば初めてを。ぐへへ』


 なんだかやばいやつを心の中に飼っていたらしい。それはそうとハ〇ビンホテルは見返した。初めて二人でアニメを見た。少し嬉しかった。


 














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俺のウラガワ宇留賀さん ごもくおにぎり @Onigiri_5mo9

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