女難の俺がわからせた美少女達は、激重感情に目覚めて離してくれなくなった
みずはる
第1章 わからせられて、わからせて
恋人兼幼馴染にわからされる
俺こと
やることなすこと上手くいかず、気付けば善意を悪意で返されてばかり。
特に女性に関しては、ほぼ百%の確立で俺の行動が裏目にでる。
現に助けたはずの子からは冤罪を掛けられ、相手を考えての行動は不快に思われた。亡くなった両親が残した言葉を守り、周りに優しい対応を心掛ければ嘘コクされて虐めも受けた。
更には引き取った親戚が毒婦であったり、ストーカー問題に悩まされたりなど、これまで女性に関することで悩まなかった時はない。
もうさぁ、そういう星の下に生まれたとしか思えないレベルで女難に振り切ってる。
特に最近は、またいろいろと考えることが増えてきた。
学校でもバイト先でも、そして私生活でもだ。
つまり何が言いたいのかと言うと――
「ねぇ、春人。私達別れよう」
――俺はやっぱり女運には恵まれていないらしい。
目の前に立つ彼女――
俺が毒婦の元に行っていた約3年間を除いては母が生きていた頃からの付き合いで、高校の2年に上がる前には明日香から告白され、明日香の必死な様子と俺自身明日香に対して好意を抱いていたこともあり、告白を受け入れて付き合い始めた。
それからはいろいろ大変だった。
彼女と俺とでは容姿もさることながら人間関係の面でも明らかに釣り合いが取れていなかった。
そのため、明日香にとって相応しくあろうと容姿には気をつけたし、勉強も今まで以上に努力した。
明日香が付き合って良かったと思ってくれるようにいろいろ頑張ってきたつもりだったんだけど……どうやら俺の行動はまたしても裏目にでたようだ。
告白の時はあんなに真に迫っていたのに、たった3ヶ月ほどで別れを告げられるなんてな。しかも、別の男を好きになったなんて……見事に騙された。
女は生まれたときから女優なんて言うが、ホントその通りだと思わずにはいられない。
「(ただ)」
昼休みに連絡をもらった時点からある程度悪い予感はしていた。
と言うのも、最近明日香との時間が付き合い始めた当初から考えると少なくなっている気はしていた。それにデートに誘っても体良く断られることが増えてもいたんだ。
しかも変によそよそしい時もあり、何かしらの気持ちの変化があったことは想像に難しくない。
そんな時に『大事な話があるから』との仰々しいメッセージと共に放課後の呼び出し。
そりゃあ、身構えるし最悪の想像もするだろう。
で、件の彼女と向き合ったら今の発言だ。
「私さ、他に好きな人ができたんだ」
俺の方は見ずに屋上から見える景色に視線を向けながら、言葉を続ける。
「だから、もう春人とは付き合う必要はないかなぁって」
明日香の長く伸びた茶髪は夕日に染まって神秘的な色合いをみせており、クラスでも整った容姿から紡がれる言葉は、まるで女神からの福音のようにも思える。
……まぁ、今現在告げられている言葉の数々は、浮気女のクズ発言なんだけど。
「そっ、か」
彼女からのクズ発言を聞かされた俺はというと……
「……はぁ」
――ああ、またか。
不思議と納得がいっていた。
それと同時に、彼女と付き合っていた日々が急激に色あせていくのがわかる。
そもそも違和感はあったんだ。
彼女は学内でも人気者の美少女、対して俺はと言うと自分で言うのもなんだが目立たず騒がずを地でいくザ陰キャ男子。
友人と呼べるような相手はおらず、放課後も基本的にはバイトをしているため部活仲間もいない。運動や成績に関しても中程度を維持しているし、普通に考えて俺みたいな男を魅力に思う女子は少ないだろう。
……中には奇特にも俺と関わりをもったから変に絡んでくる女子はいるけど、あいつらは例外だ。
そんな俺が、人気者である明日香から告白される。
――うん、改めて考えてみると裏があるような気がしてならない。
どんな理由で俺と仮とはいえ付き合っていたのかはわからないけど、まぁ、たいした理由じゃないだろうな。
大方、男避けとかそんなところか?
こんなクズな発言をする幼馴染みだけど、結構な頻度で男子から告白されてるらしいし。
「……わかったよ、今までありがとう。明日香の恋が叶うことを願ってるよ」
もう用済みな俺に出来ることと言えば、こんな俺と仮とはいえ付き合ってくれた彼女に対する感謝とこれから先の恋の応援くらいしかない。
「え、あ……それだけ、なの?」
「え?うん、そうだけど…」
なんで、そんな見当違いみたいな表情をしてるんだろうか。
もしかして俺はまた何か裏目をひいた?
そう思うものの、明日香がそんな表情をする理由には思い当たる事柄がない。
「(それに、こう言うしかなくないか?)」
そりゃあ全く何も感じない訳じゃないけどさ、ここで怒ったり裏切り者って罵ったところで起きてしまった現実は変えられない。
何かが変わるなら行動する意味もあるけど、明確に拒絶された時点で俺には万に一つの可能性もないことは確定しているからな。
なら、意味のないことに労力を割くのは馬鹿らしい。
それに――心の何処かでまた裏切られる可能性をいつも考えていた。
だからこそ、今の俺は想像以上に苦しくは……ない。
どちらにしても、これから関わることがなくなる俺には関係のないことか。
「あ、ごめん。一つあった」
そうだ、これは忘れちゃいけなかった。
「そ、そうよね!春人は私のこ」
「もう俺は明日香――いや、雛守さんとは今後関わらないようにするよ」
俺の言葉に雛守さんは戸惑ったような声を上げる。
「――え、な、なんで!?」
「なんでって、好きな人がいるんだよな?」
「そ、うだけど」
「ならさ、その相手が別の男と親しくしている君の姿を見て、どう思うかはわかるだろ」
「それは……っ」
「明らかにいい気分にはならないだろう。それに付き合った後に変な誤解をされる可能性もあるし……男女の問題に巻き込まれるのとか俺はごめんなんだ」
「――」
至極当然のことを言ったはずなのに、なんでそんな泣きそうな顔をするかなぁ。
もしかして、別れても幼馴染みとしての関係は続くとでも思っていたのだろうか?
これがただの幼馴染みだったのならその可能性もあっただろうけど、元カレが近くにいるなんて地雷だろ地雷。仮ではあっても元カレが目に入る距離で彼女の近くにいて、何かあったらしゃしゃり出て来るなんて、普通に考えて嬉しい男なんていない。
それに、こんな身勝手な裏切りをしたのに、幼馴染みだった時と同じような対応を求められても困る。
俺はそこまでできた人間じゃない。
「というわけだから」
……これ以上ここで話していても意味はない、か。
「じゃあ、俺この後バイトだから」
「あ」
まだ何か言いたそうな顔をしている雛守さんに背を向けて、俺は屋上を後にした。
――――――SIDE:雛守明日香――――――
春人がいなくなった屋上で、私はさっきの春人の様子を思い出し激しく動揺していた。
「ど、どうしよう!こ、こんなはずじゃっ!!」
最近春人がこれまで以上に格好良くなってて、直視するのも恥ずかしくてつい変な態度を取っちゃってた。
照れ隠しだったけど、冷たいと思われていないかなって考えたりもした。
でも春人はわかってくれていて、変わらず愛されてるって思えたから気にしていなかったけど……ここ数週間、春人からの誘いがまるっきりない。
危機感をもった私は、友達に相談した。
そしたら友達からは倦怠期かもって言われて――何か大きなキッカケがあると愛情の深さを確かめあえるって。
そこで今回の計画を思いついた。
幸いにも私は男子にモテるから、それを利用して私に好きな人ができたって嘘を伝える。そして、別れて欲しいって。
もちろん私が好きなのは春人だけ。春人以外誰にも触られたくないし、嘘でも別の人を好きだとか言いたくなかった。
だけど、愛が確かめ合えるって、もっと好きになってもらえると思ったから告げた嘘だったのに……
「だ、大丈夫だよね……うん、大丈夫大丈夫。春人なら、ちゃんと話せばきっとわかってくれる」
大丈夫と言いつつも悲痛に満ちた声が漏れる。
「まだ、やり直せる……恋人のままでいられる」
私が告げた希望は、きっと春人にも届くはずだ。
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