S級ギルドを辞めたら俺をクビに追いやった爆乳美女たちが土下座で謝罪してきた件

ナガワ ヒイロ

第1話 S級ギルドのマスターを辞める




 俺の名前はティオ・カスティン。


 レナート帝国に名を轟かせる最強ギルド【闇夜の星】のギルドマスター男だ。


 だった、というのは一ヶ月前に辞職したから。


 ギルドでしばしば問題行動を繰り返していた俺への不満が爆発し、ギルドメンバーがクビに追いやってきたのだ。


 だから自分で辞めた。その行動に後悔は無い。


 俺は強いから傭兵としても冒険者としても活躍できるだろうし、生活には困らないだろうから。


 しかし、俺はある事態に見舞われていた。



「わ、我々が愚かでした。貴方がいなければ何もできないクズなのに、貴方を追放に追いやり、罵倒したことを謝罪します。ですのでどうか、戻ってきてください。ティオ・カスティン様」



 酒場でエールと料理に舌鼓を打っていると【闇夜の星】で幹部を務める爆乳美女がやってきた。


 ところどころ装備がボロボロで、俺はすぐに事情を理解する。

 俺がギルドを辞めて、冒険者組合の回ってきたクエストに失敗してしまったのだろう。


 ざまあないね、ははは。


 俺は一ヶ月前の出来事を思い出しながら、土下座する爆乳美女を肴に酒を呷るのであった。












「ティオ・カスティン。貴様には今日限りでギルドマスターの座を退いていただく」


「え?」



 俺の名前はティオ・カスティン。


 たった三年で吹けば飛ぶようなカスギルドを帝国最強のS級ギルドにまで登り詰めさせた最強の冒険者である。


 容姿は整っている方だ。


 遥か遠い国の貴族だった父親と帝都一番の美しい娼婦だった母親の間に生まれて十五年。


 俺は白髪紅眼の美少年に成長した。


 ……まあ、身長はあまり伸びなかったが、まだまだ俺は成長期の真っ只中。

 きっと数年後には長身のイケメン冒険者になっているに違いない。


 でもまあ、何故かあまりモテない。いや、理由には分かっているのだ。



「ここにギルドメンバーからの貴様に対するギルド脱退嘆願書がある」



 そう言って俺のテーブルに分厚い紙束をドサッと置いたのは、真っ赤な髪と瞳の美女だった。


 めちゃくちゃおっぱいがデカイ。


 身長も俺より頭一つ分は高く、腰はキュッと細く締まっており、太ももはムチムチでお尻も肉感的でエロい。


 分厚い鎧を身にまとっており、背には俺よりデカイ剣を背負っている。


 彼女の名前はカレン・スカーレット。二十歳。


 俺がギルドマスターを務める【闇夜の星】の幹部をしているお姉さんだ。



「うわ、分厚っ。カレン、これ全部本物?」


「貴様のセクハラ及びパワハラが原因だ。早急にギルドを出て行け」


「セクハラって、ちょっとおっぱい揉んだりお尻触ったりしただけじゃん」


「それがセクハラだと言うのだ!!」



 む、お触りはセクハラだったのか……。



「じゃあパワハラって? ちっとも身に覚えがないんだけど」


「……ギルドに所属する男性冒険者への不当な扱いのことだ。貴様は男に女の倍以上のノルマを課し、クエストを割り振っていただろう」


「そうしなきゃ働かないからね、あいつらは。ノルマを設けているのもギルドでの利益を確実に出すためだ」



 ノルマを課さず、各々の自由にクエストを受けさせたらどうなるか。


 冒険者は元来自由な仕事だ。


 長続きしない奴はしないし、最低限の暮らしができるだけで満足する。


 しかし、それではギルドに利益が無い。


 だから利益が出るよう、ついでに冒険者が生活できるだけの賃金を得られるようクエストを割り振っている。


 それがパワハラなのだろうか。



「っ、ならばそのクエストの割り振りについてはどう説明するつもりだ。貴様は実力に見合わないクエストを受けさせ、死傷者を出した」


「いや、冒険者なんて傭兵と変わんないんだし、命の危険があるのは承知の上でしょ。それに十全に実力を発揮していたら、格上でも倒せるはずだった。死傷者が出たのは事前準備を怠ったからだよ」


「だったらそれを教えてやれば――」


「鳥は餌を与えられるだけで空を飛べる? 無理だよ。自分で飛ぶ方法を知らなきゃ成長しない。それを知ろうとしなかった奴らが死んだだけ」



 そもそも俺は新人が死なないよう手を尽くせという話が理解できない。


 冒険者は命懸けの仕事だ。


 言ってしまえば死傷者が出ることが前提であり、死なない方がおかしい。


 でも人がバンバン死ぬと手続きやら何やら色々と面倒なので、準備を怠らねば達成しうるクエストを割り振っている。


 まあ、男だからという理由で多少ハードなクエストを割り振ってはいるのは事実だがな。


 ギルドは所詮、複数のパーティーから成る組織。


 ノルマが嫌なら、クエストに自信を持って臨めないなら抜けてしまえばいい。

 俺はそれを引き止めようとは思わないし、悪いこととは思わない。


 ただギルドに貢献せず、最強たる【闇夜の星】の名前を使いたいだけの連中に貸してやりたくないだけである。



「で、では逆に十分な実力と才能がある者に新人がやるようなクエストを受けさせていたことはどう言い訳するつもりだ!!」


「ああ、それは簡単。そいつらがギルド内での地位を上げたらギルドマスターの地位が危ういからな。誰もやりたがらない雑用やらせて名声を稼がないようにさせてるだけ」


「っ、ついに権力欲に取り憑かれた本性を現したな!!」



 何を当たり前のことを。


 金、女、地位、名誉、利権……。

 俺はそういう力を求めて冒険者になり、ギルドマスターになった。


 そして、既存の大手ギルドを全て叩き潰し、最弱ギルドを最強ギルドに変えてやった。


 苦労して得た力を失うような真似をわざわざするわけがない。

 ましてや俺は不正をしているわけでも、悪事を働いているわけでもない。


 正々堂々、評価の低いクエストを割り振っているだけだ。


 文句があるならギルドを抜けて自分たちに相応しいと思うクエストを受ければいい。

 援助は一切しないし、誰が死のうと責任は一切負わないがな。



「でもまあ、嘆願書を見る限りじゃ各パーティーのリーダーも賛成してるみたいだしな。じゃあ辞めるわ」


「え?」


「何を驚いてんだ? 皆がやめろって言ってんなら辞めるのが当たり前だろ。あ、でも追い出されるのは癪だから辞職って形で辞めるね」



 俺はギルドマスターの椅子から立ち、軽く背筋を伸ばす。


 んー!! 肩が軽くなった気がするぜ。



「久しぶりにドラゴン退治でもしようかなー。デスクワークばっかじゃ身体が鈍るし」


「お、おい!!」


「じゃあね、カレン。あ、俺に戻ってきて欲しかったら全裸土下座ね。その上で俺の性奴隷になるなら許してあげるよ」


「っ、貴様!! とっとと出ていけ、このクズめ!!」



 こうして俺は最強ギルド【闇夜の星】を脱退するのであった。


 ちなみに退職金としてこっそり貯めておいたヘソクリを持ち出したので、しばらくは金に困らないだろう。


 え? 不正はしてないんじゃないのか、だって?


 しっかり書類は改竄してるから大丈夫。証拠が無いなら不正じゃないのさ、ははは。






―――――――――――――――――――――

あとがき

どうでもいい小話


作者「爆乳美女の土下座でしか得られない栄養と日光で生きていける自信がある」


テ「それな」



「美女がお労しい目に遭うの興奮する」「クズ主人公で草」「作者もはや人間じゃなくて草」と思った方は、感想、ブックマーク、★評価、レビューをよろしくお願いします。

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