第15話 ギャンブル
アリーとバーベキューをしていると協会の人が家に来た。
「いつでもかまわない、協会に来てくれ」
それだけ伝えると街に戻っていった。何だろう、仕事かな? アリーが半年経過したから魔物使いのお話じゃないと言う。そうか、もうそんなに経つんだな、あっという間だった。食後協会へ。
「今日でアレスがこの街に来て半年が経った。今日は今までの行動を見て魔物使いとしてふさわしい人間か決断を下す日でな」
「どうですか、俺は魔物使いとして」
腕を組み目を閉じながら天を仰ぐ協会の人。もしかしてだめだったか!?
「ああ、余裕で合格だ。余裕過ぎて今日の晩ご飯のことを考えていた」
この人は意外とおちゃめなところがある。仲が良くて事前に魔物使いとして合格的な話はすでにしていたからできる冗談ではある。ちょっと驚いたけどね! 後ろに立ち杖で脳内のシステムに干渉する。
「称号に仮魔物使いを追加した。残りの半年間もしっかり精進してくれ。それから半年後に土地は没収され魔物使いになり自由の身となる。片付ける必要はないからな。今後の活動方針を考えておくといい」
話を終え拠点に戻る。今後の予定を立てていくか。
「どうだった?」
「合格だってさ」
アリーは帰らず拠点にいた。何やらモジモジしている。
「良かったら私と組まない?」
魔物使いは基本的に二人で組むことが多い。クラフト面で考えると力作業と繊細な作業をできるから隙がない。一人だと店を使うことになる。これがなかなか高いからお金が貯まらない。こちらとしてもありがたいところ、仲も良いしね。彼女なら問題なく合格するだろう。ただ組むなら問題点が二つあるな。
「俺はここから移住する予定だが大丈夫か?」
「問題ないよ、どこ行く?」
「巨大都市ドンモルだ」
この国では最大、世界でも三本の指には入る大きさの街だ。王都でもある。近くには魔物がかなりの数いる。レベル上げも低レベルから高レベルまでできる。この街で暮らしておけば間違いないといった場所だ。ここからそこそこ近く、孤児院の人達やフラワーフルート達とは今生の別れとはならないからまあ大丈夫か。問題はもう一つ。
「もう気が付いているかもしれないけど、特殊な力を持っている。もしかしたら俺といると問題が起きたり巻き込まれることがあるかも」
「いいよ」
真っ直ぐに俺を見つめるアリー。よし、決まりだな。
「組もう、よろしく」
「やったー!」
手を出すと嬉しそうに握り返してきたアリー。それだけ言うと挨拶して拠点に戻っていった。翌日、フラワーフルートとハープキャットの一団がアリーの拠点に集結、大演奏会が開かれていた。ちょっと早いけど壮行会かな。
「土地を見に行こう」
ドンモルで住む場所を探す。畑は続けたい、近くに川が流れている土地が欲しい。水車があるとクラフトがはかどるようになる。というかこれから必須になる。できれば森があると助かるな。森がないと餌を持ってくるか外に出て食べさせるかしないといけなくなる。近いから直接見に行くか。協会に外出許可を得て準備をする。
「悪いがお留守番をしていてくれ」
魔物達は拠点にいてもらう。畑の水やりを協会の人に頼んておいた、アリーを連れ馬車に乗りドンモルの街へ。馬車に揺られ宿場町を経由し移動、小高い丘から街が見えてきた。
「わ~、大きな街」
聞いてはいたがそのスケールの大きさに目を見開く。奥に霞むほど広がる住宅、海山川森、畑もある。ドンモルの街に到着、馬車から降りまた馬車に乗る。街は舗装されているため専用の馬車がある、移動速度が非常に速い。この街の不動産屋へ。魔物使いは鍛冶から木炭製造まで何でもするため騒音、悪臭、煙を放つ場合がある。そのため専用の区画が設けられている。基本的にはアリーの街のように街外れが適用される。目的地に到着、建物の中へ。受付に話すと奥から中年で恰幅がいい男性が現れた。
「どんな場所をご所望でしょうか」
どうせならと全要望を伝える。
「ありますがすべてを叶えるとなるとお高いですね」
地図を持ってきてこちらに見せる。広い土地に川が通っていて森もある。理想的な土地だ。数字を書いて俺に見せる。とんでもない値段だ、とても買えそうにない。
「ではこちらはどうでしょう。水車用の土地ならあちらよりも安く買えます。畑は専用の場所を買えば安く済みます。拡張もしやすいですね。魔物用の森なら共同で使える森がありますよ。そこなら格安で魔物を放つことができます」
へー、そんな場所があるんだ。そちらのプランだと余裕で土地の購入が可能。森の貸出も安い。物件を見に行く。なかなか広い、いくつか施設を作ることができる。街の出入り口も結構近く良い場所だ。魔物使いはよく外に出るからね。ここで決まりだな。
「はい、ではこちらに記入を」
契約書にサインを、お金を支払い土地を購入。後はアリーが街に来て一年経過したら来るだけ。協会に寄り、採集可能な素材を調べる。地域は限られるが粘土等今まで手に入れてきた物は問題なく手に入りそうだ。他鉄鉱石等こちらにない物も手に入る。
「せっかく来たんだから遊んでいこうよ」
「いいとも」
街に出て観光。美しい街並み、噴水、像があり文明の香りがする。粘土を積み上げただけの俺の家では太刀打ちできないな。ここに来たらもう少し文明的な家を作るとしよう。そろそろ昼時、お腹が空いたので料理屋へ。おお、ビールがある。やはり高いけど街で作っているだけあってちょっと安い。せっかくだし頼んでみるか。2人分を頼む。
「ふむ、むむ」
そういえばお酒は初めてだな。苦いアルコールの麦の汁。ああでも意外とイケるかも。あっさりとしている分料理にも合う。父さん達がやっていたプハー! の領域にはまだ足を踏み入れられないけど。その後も観光を楽しみ一日経過、翌日も観光。
「フォースバードレース! さあ第三レースの勝者は誰だ!」
ゲームにもあったレース。自分のフォースバードを出場させることができ、賭けをすることも可能。レースがスタート、土煙を巻き上げ走るフォースバード達、迫力がある走り。
「いけー!」
「させー!」
観客も熱が上がる、最も走りではなく賭け部分の熱だろうけど。ん、聞き覚えがあると思ったら昨日の不動産屋さんか。レースが好きなんだな。ギャンブルは他にもある、娯楽も多数、遊ぶにもいい街だな。観光をして一泊、一夜明け、街に戻る。
「楽しかったー、また一緒に行こうよ」
「来年の今頃にはいつでも行けるようになるさ」
「ふふ、そうだね」
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