10-11
一方ヘリオスフィアは懺悔するが如く、フレックを労わる様に抱き締める。
「あの頃の私は未熟だった…すまなかった…。私の傍で私が君を…そうすれば君がこんなに傷付くことはなかったというのにっ」
「ええと、それは…さ…」
フレックは想像する。
ヘリオスフィアの傍に居る自分。
フレックの傍のヘリオスフィア。
「うん…多分、甘やかすから…俺の為にならないのでは…?」
何をするにもいいよ、いいんだよ、フレック。
ちょっとしたことでも、偉いね、すごいね、フレック。
フレックの決意振り切れ甘えてなんの成長も出来ずにわがままフレック大暴走。
現在のフレックは生まれなかっただろう。
そう思えば東部魔境戦線効果すごい。
ありがとう東部魔境戦線。
また行きたい。
厳しい環境下におかれたフレックの心情とは裏腹に、ヘリオスフィアは怪訝な表情を浮かべていた。
「甘やかす?」
「うん」
「私は君を甘やかしたことなどないが?」
「え」
衝撃的な言葉にフレックは振り返った。
そこではじめて怪訝な表情を浮かべているヘリオスフィアを目の当たりにする。
「まだない」
怪訝が真面目な顔に変貌し、優しい手が眼帯と左足に触れる。
「これから甘やかすんだ」
艶然、とした笑みだった。
フレックは知らず知らず「…ひぇ…」小さな悲鳴を零していた。
そうやって開いた唇を、ヘリオスフィアがふんわり塞ぐ。
「りおは、おれのことすきだなぁ…」
「君は?」
「好きぃめっちゃ好きぃぃ」
「ふふ…かわいいフレック…大好きだよ…」
そう言ってしっとりキスされたフレックは、ヘリオスフィアの無限とも思える愛にちょっと泣いた。
だってフレックはヘリオスフィアが好きだ。
どう好きと問われても分からない。
でも好きなのだ。
だから、フレックは、ヘリオスフィアの為に、糞屑を演じた。
そうして東部魔境戦線へ派遣された。
そこでフレックは様々な経験をした。
痛い目にも遭った。
辛かったし悲しかったし、多くの死も見た。
けれど自分が出来ること最大限をする意義を知った。
東部魔境戦線へ来た意味も忘れずに居られた。
フレックはヘリオスフィアに幸せになって欲しかった。
ヘリオスフィアの幸せ以外、何も要らない。
骨を埋めもし死んでもヘリオスフィアの為になるような物に成りたいと、そう思っていたし、そう思ってる。
転機が訪れて、フレックはヘリオスフィアの元へ戻ることになった。
ヘリオスフィアは誰もが心を奪われる立派な騎士に成っていた。
なのに変わってなかった。
何も。
それが辛かった。
そして嬉しい。
だからフレックはもう、このひとの傍を離れないと決めた。
結婚して、何処へ行くにも伴をして、添い遂げて。
幸せに、するのだと。
俺がヘリオスフィアを幸せにするんだ、と。
「フレック」
「んぅ?」
「幸せに、成ろうね?」
蕩けてしまう程甘い眼差しと声に、唇が僅かに触れる距離で言われてしまったから。
「うん、しあわせ、なるぅ」
フレックはなんもかんも忘れてヘリオスフィアにキスをした。
小鳥のような口付けを、しかと受け止めたヘリオスフィアは、何処へもやらぬと言わんばかりにフレックを包み込む。
御者に遅刻しますよ!?って扉をばんばん叩かれるまで、ふたりはしばし、世界にふたりっきり。
幸せを、与えあった。
ここまでお読み頂きありがとうございます。
本編はここまでです。
こちらは第1回ルビーファンタジーBL小説大賞への応募用の為ここで完結になります。
以降の蛇足などはこちらで連載中です。
https://kakuyomu.jp/my/works/16817330650633962897/episodes/16817330667186394108
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