第53話
ジョギングの後、休憩時間を挟んだ後、飯盒炊飯の時間になった。野外で班ごとにカレーを作ってそれが昼食になるという訳だ。合宿所の外にある飯盒炊飯が出来る広場に集まっている。
「よし、では各班でカレー作りを行ってもらう。出来た班から昼食にして構わない。やり方に不安がある班は近くの先生に聞いても構わないが出来るだけ自分達の力で進めていくように」
飯盒炊飯のやり方自体は合宿前に学校で習っている為、何となくのやり方は分かるが実際にやっている訳ではないのでかなり不安だ。美味しいカレーを作れるかどうかは自分達の腕に関わってくる為、真面目にやらなければ。先生の説明が終わった後は班の皆で集まってどうするか相談する。
「どうするか」
本庄君がどうやってカレー作りをするか相談してくる。僕も考えるが、折角六人もいるのだから各自分担して行った方がいいだろうと考える。
「取り合えず火周りは男子がやった方がいいんじゃないかな?」
「まあ、薪は元々切ってあるやつ使うとはいえ運んだりするしな」
「包丁とか使うし、慣れている人がいれば女子達に使う野菜とか切ってもらった方がいいかもね」
「……なあ、やっぱり思うんだが」
「うん?」
皆が集まっている中で僕達が相談しているのを残りの四人が見ている。いや、みんなにも考えてもらった方がいいのではと思ったが僕達の話を聞いているのだろうか。
「やっぱり春日部がリーダーやった方がいいだろ……」
「いえ、
変な返事をしたら本庄君に睨まれたが、本当にそのようなタイプじゃないと断った。他の皆も不思議そうな顔で僕を見るが本当に目立つのが嫌なため本庄君の陰に隠れる。
「春日部、何隠れてんの」
元気になった越谷さんが本庄君の陰に隠れた僕の服の裾を持って無理やり班の中心まで引っ張る。ええと呟きながらなすがままに立たされる。
「私たちに指示出してよ、リーダー」
「お前の言う事聞くから、別に多少間違っても何も言わねえし。お前が一番頼りになる」
越谷さんや本庄君が僕にリーダーをやって欲しいと頼んでくる。僕には荷が重たいと思ったが二人の意思を汲んで決意する。
「……、分かった。自信は無いけどみんなで頑張ろう」
班の皆でおーと腕を上げて鼓舞する。僕は取り合えず指示出しと大変そうな作業を手伝うという役回りになった。
「とりあえず、男子三人で薪とか、カレーで使う鍋とか飯盒貰って来よう。その間に女子はまな板とか包丁とかよく洗っておいてもらえる?」
「了解!!」
皆は勢いよく返事をしてから、手分けして準備にかかる。僕達は取り合えず倉庫まで並んで歩く。その間、僕達は話をする。
「ていうか春日部、何でこんな指示とか出せるんだ?」
「ええ、本庄君がリーダーやれって言ったんじゃない……」
「いや、それはそうなんだが、すぐ指示出してるから何でと思って」
「いや、飯盒炊飯やるって決まってたから前もってシミュレーションじゃないけどちょっと考えてはいたから……」
「お前、そこまで考えているのにリーダーやるつもりなかったんかい……」
いや、だって目立つの嫌だし、指示出しとかも恥ずかしいから極力したくなかったしと心の中で思ったがその事が越谷さんに漏れたらしばかれそうなので黙っておこう。陰キャは極力でしゃばらないと言っても皆に言っても何言ってるんだ?と呆れられるんだろうなあと僕はため息をついた。
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