第50話
予想していた通り、ジョギングのコースはアップダウンが激しく普通に走るよりかなり大変なものとなっている。だが、運動しない女子もいるという事でかなりゆっくりなペースなので運動部の生徒達は逆にイライラしているようだ。
「ハアハア、これあと何キロくらいあるの……」
のはずなのだが、越谷さんは息を切らしている。他の女子生徒もここまでキツそうにしている人いないので本当に体力ないのだろう。
「越谷さん、大丈夫?分からないけど多分もうちょっとだと」
本当はまだ半分くらいだがそれを言ったら走るのを止めそうなのでちょっと嘘をつく。だが、本当に苦しそうだ。仕方ない、少しペースを上げて先頭にいる上尾先生の元まで行く。
「先生!!」
「春日部、どうした」
「越谷さんがちょっと苦しそうなのでちょっと休ませてから歩いて行っても良いですか?」
「大丈夫か?何なら先生が付くが」
「いえ、体力が厳しいだけぽいので僕が付くので先生達はそのまま行ってください」
「分かった。ゴールしたら私が戻るからゆっくり来い」
「分かりました」
僕はペースを落として越谷さんがいる最後尾まで戻る。越谷さんはゼエハアと息絶え絶えになっている。
「越谷さん、無理しないで。ちょっと休もう」
「……でも、遅れちゃうし……」
「先生に言って許可とってるから大丈夫」
僕は越谷さんを止めて歩道の端に座らせる。その時、他の生徒が僕達を見て何かガヤガヤと話していたが僕はそれを無視して越谷さんに向き直る。
「ちょっと休んで息整えよう」
「……ごめん。春日部は余裕あるのに……」
「いや、大丈夫」
僕はポケットに入っている小銭を確認する。もしもの時の為に小銭を持つことは許可されていたので持ってきていて良かった。少し先にある自販機まで走ってスポーツドリンクを買う。すぐに越谷さんの元に戻り、彼女に手渡す。
「ありがとう……」
「辛いと思うけど飲み切らないで。飲み過ぎると走り辛くなるから」
越谷さんはゴクゴクと飲み始める。半分程飲んでちょっと落ち着いてきたみたいだ。
「体冷えるし余裕出来たら歩き始めよう。走る必要はないから」
「……分かった」
越谷さんは立ち上がり彼女から飲み物を受け取り並んで歩き始める。その間、彼女は申し訳なさそうな顔をしている。気にする必要ないのに。
「春日部、何から何までごめん」
「全然気にしないで」
二人で並んで歩き始めておそらく後一キロ無いくらいだろう。とはいえ、越谷さん本当にきつそうだな。いくら体力無いと言ってもゆっくりだったし体調悪いのだろうか。
「ごめん、正直、合宿だって思って緊張して眠れなかったんだよね……」
なるほど、それでこんなに辛そうなのか。寝不足気味で走り始めて体がビックリしたのかもしれない。
「ていうか、春日部、色々対応慣れてない?」
「……、元々運動部だったから」
僕も元々運動神経が無かったし体力も無かったので似たような対応をされた事があったのを思い出したから出来たという訳である。
「……そうなんだ」
過去の事を話したがらない僕を察して追及されなかった。
「スポドリも持たせちゃってごめん」
「ああ、いや、これくらい」
手に持っているスポドリは半分くらいだし、本当に何とも思っていない。
「それ、後で払うから」
「別にいいよ」
「そういう訳にいかないでしょ。あ、あと春日部も飲んでよ」
「え」
いや、それはちょっと。越谷さんが飲んだあとのスポドリだと思うと何故か自分が持っていてはいけない感じがしてきてしまう。
「僕はまだ余裕があるので大丈夫です」
「余裕があるのは知ってるけど飲まないの?」
首をかしげる越谷さんを見て、いやいや、女子と間接キスになっちゃうだろと脳内でツッコミを入れる。僕達はそのまましばらく歩いていると前の方から上尾先生が走ってきてそのまま合宿所まで歩いた。
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