第29話
「え?」
川口さんから中間テストのお疲れ様会をしようと誘われてしまった。
「あれ、もしかしてこの後何か用事あった?」
「いや、特にないけど……」
「もしかして、あんまり行きたくないとか?」
そう話す川口さんは何処か悲しそうな顔をしているので僕は慌てて否定する。
「全然全然。よし、行こう!!でも何処か行きたい所でもあるの?」
「ちょっとね……、多分春日部君も気に入るんじゃないかしら」
「へえ、それは気になるかも……」
ついてきてと語る川口さんの後に続いて学校から出る。僕はてっきり商店街などが立ち並ぶ駅に向かうのだと思っていたが、駅の方向とは逆の方向へ歩みを進めていた。一体何処へ向かうのだろうか。
「はあ、もうキャラ取り繕う必要ないかしら」
学校から離れて辺りに生徒がいなくなったからだろうから川口さんがオフモードになったようだ。というかそもそも学校でキャラ装う必要あるのかな?
「川口さん、お疲れ様」
「ハア、本当にね」
「そんなにキツイならそのキャラ止めた方が良いんじゃないの?」
「ここまでこのキャラでやっちゃったから、今更このキャラ崩すのもおかしな話じゃない……」
もう一か月もクールなキャラでやってるからあと戻り出来なくなってしまったのか。というかそもそも何でそんなキャラになってしまったんだろう。
「……、何か気付いていたら陰で学園のマドンナ?みたいな呼び名が付いているのに気付いたのよ。何かそれ聞いちゃったら調子乗っちゃって」
話を聞いていたがやはり自分のせいでは?と思ったが、彼女なりに周りの期待に応えようとしてしまったのだろうと考えたらあまり茶化す事が出来なかった。そうしてしばらく歩いていたら僕の携帯がブブっと通知音がした。
携帯を見ると越谷さんからメッセージが来ている。メッセージの内容を確認する。
『今、本庄と遥香といつものファミレス来てるんだけど春日部も来る?』
う~ん、どうしよう。今川口さんと一緒にいるが流石に川口さんと一緒にいるというのは止めた方がいいだろう。
『ごめん、今委員会の人と一緒にいるからちょっと行けないです』
『……、分かった。また今度ね』
放課後の越谷さんの顔を思い出すと心が痛むが仕方ない。また今度穴埋めする必要があるなあと考える。
「スマホ見ながら歩くの危ないよ」
スマホを凝視していたところを川口さんに注意される。確かに歩きながらのスマホは危ない。僕は慌ててポケットにしまって川口さんと歩く。
一方、その頃、ファミレスで越谷瑠衣、本庄晃、入間遥香と三人集まっていた。そこで春日部も委員会が終わったらこちらに来るように誘ってみたらと遥香が提案したのでメッセージを送ってみたが委員会の人と一緒に居る為来れないとの返事が返って来た。
「はあ……」
「もしかして、春日部君来れないの~?」
私が溜息をついた瞬間、遥香から心配そうに顔を覗いてきた。それに対して私は肯定の意味でコクンと頷く。
「まあ、アイツも委員会のメンバーで色々あるんだろ」
本庄が気を使っていたのか、春日部を庇う。春日部だってずっと暇なわけないじゃない事なんて分かってる。
「瑠衣、春日部君来なくて寂しいかもしれないけど、私がいるぞ~」
遥香は私の隣に来て、べたべたくっ付いてくる。その様子を見て本庄は呆れてジュースを飲み始めた。黙って見てないで助けて欲しい。こうして私は窓の外を見てここにいない誰かを思ってため息をつくのだった。
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