憧れの章 第1話 酔いしれる①
目を覚ませばいつも通りの天井が映る。鍾乳石からは水滴が垂れ、水溜まりはポツポツと波紋を描く。生まれて4年、ここでずっと暮らしてきた。わかることは私がセイレーンであるということだけ。ここでずっと眺めてきた。光達が何なのか、ここは一体どこなのか、それすらも分からず、踏み出す勇気も出ず、ただひっそりとずっとここで過ごしている。
不思議とお腹は空かないし、岩場でも寝れるぐらいに場所は整っていた。まるで私を歓迎するかのように。
かと言ってそろそろずっと同じ場所に籠っているのに限界を感じ始めていた。
私の足を妨げるのは、時々この入り江に流れ着く人の死体たちだ。もはや人ということしか分からないその姿は、ほとんど何も知らない私に恐怖を植え付けるには、十分すぎるほどおぞましかった。
「いつまでこんな生活続けてるんだろ……」
口からはしっかり声が出る。これだけが支えになっていた。私の声は自分の心すら癒すほどいい声なのだ。
そんな私にあるもう1つの心の支え……
あの恐ろしくも美しい、毎日光り輝く白桃色。
あの光だけが無数に光る空中の中で、唯一心に強く焼き付けられた。
ーーーーーーあれがなんなのか知りたい。
今日もただただ眺めるだけ。一日の半分を照らし続けるあの光たちを、ただただ眺めるだけなのだ。そしてまた日が暮れ、眠りにつく。
その繰り返し、、、、。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
彼女はまだ知らない。もうすぐ彼女を迎えに来る、憧れの影を……
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