読みにくい。手紙。

エリー.ファー

読みにくい。手紙。

「ハムは、お好きですか」

「ハムカツなら好きです」


「ハムは、お好きですか」

「ポップコーンの方が好きですね」


「ハムは、お好きですか」

「胡瓜の方が好きです」


「ハムは、お好きですか」

「ハムサンドなら好きです。今からパン屋に行って買おうと思うのですが、どうですか、一緒に行きませんか」


「ハムは、お好きですか」

「そこにあるハムなら嫌いです。あの店にあるハムなら大好きです」


「ハムは、お好きですか」

「いや、好きじゃないな。申し訳ないけどね」


「ハムは、お好きですか」

「ハムなんて、大したもんじゃないよ。ハムが好きなやつがいるなんて、信じられないね」


「ハムは、お好きですか」

「何もかも失いたいんだ。もう、こんなつまらない質問をしないでくれ。分かるだろ。もう、いっぱい、いっぱいなんだ」


「ハムは、お好きですか」

「うるさいっ、あっちに行ってくれ。もうやってられないっ、帰れっ、帰ってくれっ。ああっ、もうっ、嫌だっ、死にたいっ。死にたいっ」


「ハムは、お好きですか」

「あんたはどうなんだよ」


「ハムは、お好きですか」

「そんな下らない質問をして、何の意味があるんだ」


「ハムは、お好きですか」

「お前、自分の置かれてる立場が分かってないだろ」


「ハムは、お好きですか」

「神に聞くな。黙れ」


「ハムは、お好きですか」

「生ハムなら好きかな」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「いいねぇ、ピザは最高だよ。よし、食べよう。お腹もすいてたんだ」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「一人で食べます」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「かつ丼を食べたいな」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「ピザじゃなくて、ピッツァだからな。分かったな」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「それが、お前の最後の言葉か。随分と余裕だな」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「お前、金ないだろ。いや、ちょっと待てよ、俺の金で買うってことか」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「イタリアに行くってことかい」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「たまに、ピッツァなんて言うヤツがいるが、あれはバカだな。ピザでいいんだよ。言いやすい方で言えばいいんだ。伝わればなんだっていいのさ」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「嫌です。だって、ピザってチーズが乗ってるやつでしょ。チーズの匂いは好きなんですけど、あの、伸びる感じが凄く嫌なんですよ。鳥肌が立っちゃうんです」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「ピザじゃないからな。ピッツァでもないからな。ピィズウゥアァッ、だからな。正しい発音は、ピィズウゥアァッ、だぞ。いいな。分ったな」


「ピザを食べようと思うのです。どうですか、一緒に食べませんか」

「一緒に食べるんじゃなくて、一緒に作ろうぜ。そっちの方が絶対に美味しいからさ」


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